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古本をめぐる冒険「春と修羅 宮沢賢治」

わたくしが「古本の装丁」に興味を持つきっかけになったのが「春と修羅」でした。しかし当然のことながら、初版本はとても手がとどく金額ではありませんでしたので、復刻版を探すことにしました。何軒か古書店を巡ったり、ネットで検索したりして、ようやくこの一冊に出会えた時は「お宝を発見!」したような気分になったことを覚えています。

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布の表紙にアザミが描かれています。賢治は「青黒いザラザラの布」を探していたらしいのですが、実際に見つけてもらったのは「まったく違った色の布」だったそう。すると「注文の多い料理店」の装丁の色がイメージに近かったのでしょうか? 今となってはわかりません。

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背文字に「詩集」と書かれていますが、賢治本人は「心象スケッチ」と書いて欲しかったため、かなり気にしていたらしい。その気持ち、なんとなくわかるような気がします。なんとなくですけれど。

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そして、本文のタイトルが「心象 スツケチ」に。こうやって粗探しをするのは作者も嫌がるでしょうから趣味が悪いような気もしますが、それでも実際に本を手にとってこそ気がつくことができる、ちょっとした楽しみのひとつです。

「春と修羅」は、作者の自費出版で刊行されました。初版は1000部(800部という説も)。ほとんど売れることがなかったため、実際に人の手に渡ったのは数少なかったそうです。取次を依頼された書店もゾッキ本(新品本を安い価格で古本として売ること)として流してしまったそう。

それでも「中原中也が『春と修羅』を絶賛した」などというエピソードを目にすると、届くべき人のところには、届いていたのかもしれない、としみじみとした気分になりますね。

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いつの日か、山里の古民家に気に入った装丁の本を並べてカフェなどをするのが、今のおぼろげな目標のひとつなのですが、その時はこの「春と修羅」も並べようと考えています。

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