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【幻の島】

沖縄の海に取り憑かれてから、幾度となく訪れては、本島だけでなく、石垣島や慶良間諸島など、いろんな場所でダイビングをしている。

その日も、石垣島の海に潜りに行った。
美しい珊瑚礁と、色とりどりの魚たち。
日常を忘れるファンタジーのような世界。
心地よい疲れを感じながら、水中散歩は終了した。

その日のプランはそのまま港に戻るはずだったが、インストラクターの方がチラチラと時計を確認している。
なんだろうと思っていると、「まだお時間に余裕はありますか?」と聞かれた。
僕はダイビング以外に予定を入れていなかったので、大丈夫ですと答えた。

「見せたい場所」があるんです。
そう言って、船は方向転換をして速度を上げた。
どこへ向かうのだろう?
僕の冒険心が騒ぎ出した。

20分ほどボートを走らせた後、ここからは下を向いていて下さいと言われた。
言われるがまま、僕は揺れるボートの床を眺めていた。

「顔を上げて下さい」
インストラクターさんの合図で顔を上げると、そこには、眩しい太陽とコバルトブルーの海、そして三日月形の白い砂浜。
遮るものが一切ない、美しく幻想的な景色が広がっていた。
こんな美しい島を、僕は今まで見たことがなかった。

この島は、幻の島と言われている。
石垣島と西表島の間にあり、地図にも載っていない無人島。
なぜ幻の島と呼ばれているのか?
それは、引き潮の時にしか現れない、砂浜だけの島だから。
潮が満ちれば、海の中へと消えてしまう。

この島が現れるのは引き潮の時だけ。
ダイビングが終わったのが、丁度この島が現れる引き潮のタイミングだったので、インストラクターさんが連れてきてくれたのだ。

幻の島の周りは遠浅の海になっていて、三日月の中には潮溜まりができている。
潮溜まりの中で、プカプカと浮いていると、まるで天国にでもいるような気持ちになる。
沖縄は、気候だけでなく、人も暖かい。
こんな奇跡の場所に連れて来てくれたことに、心から感謝した。

遠くでは、タキシードとウエディングドレスを着たカップルが、ウエディングフォトを撮っていた。
最高のフォトスポット。
永遠の愛を誓い合っている。
どうか二人の愛が、幻でないことを祈るだかりだ。

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