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世界を4つのカテゴリーに分けて理解できる『ファクトフルネス』(ハンス・ロスリング著)

スウェーデンの医師であり、世界的に知られた公衆衛生学者であるハンス・ロスリングの、いわば遺作ともいえる最後の著作がこの『ファクトフルネス』です。

ビル・ゲイツのお墨付き

読書家として知られるビル・ゲイツが自身のウェブサイトで激賞したことで一気に世界に知られ、日本でもベストセラーとなっています。


おびただしい統計情報で埋め尽くされ、約400ページにおよぶ長い本なのですが、ビル・ゲイツはわずか2分で要約してくれています。このトークをさらにまとめてみます。

『ファクトフルネス』のすごいところ:その1

● 世界を4つのカテゴリーに分けている

たとえば乗り物(移動手段)について。
レベル1の人たちは乗り物を持たない。レベル2は自転車、レベル3はバイクや車1台だけ。レベル4の人たちは多くの車を持っている。

移動手段以外にも、トイレやキッチン、住居、料理(食べもの)といった基本的な暮らしについて、4つの「豊かさの尺度」を用いて説明してます。

ちなみに、ハンス・ロスリング氏いわく、この本を読む人たちはおそらくみなレベル4だろうということです。

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『ファクトフルネス』のすごいところ:その2

世界はこれまでで最も豊かで暮らしやすくなっている、ということを統計による数字を示しながら明確に教えてくれる。毎日のニュースで報道される悲惨な状況は、ネガティブなものに焦点を当てているため、真実を伝えるものではない。

とても楽しくてわかりやすい

ハンス・ロスリングはTEDで多くの講演を行っており、日本語の字幕がついているものも多いです。下はその一例ですが、身振りや話し方がとてもプレゼンテーション上手で、惹きつけられます。

人類の脳をいまだに支配する10の「本能」

進化の歴史のなかで、生き延びるために人類が身に着けなければならなかった本能のために、私たちは世界に対してあまりにも「ドラマチック」すぎる見方をしてると著者は語ります。下はこの本の目次の一部を抜粋したもので、世界の見方にバイアスを掛けている10の本能を説明しています。

第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

ハンス・ロスリングは、このような本能によって歪んだレンズで世界を見ることなく、事実に基づき、もっとフラットな観点から認識すべきだということを、言葉と豊富なデータによって語ります。世界は少しずつ幸福に近づいていっているのだということを納得させられる説得力によって浮かび上がってくるのは、より明るい未来です。

感情や本能に支配されることなく、理性によって世界を認識しよう

この本が語っていることはとてもシンプルな事実です。私たちは、理性によって生きていくべきであり、感情や本能に支配されてはならないのだということを、何度も、さまざまな例を用いて説明しています。ではなぜビル・ゲイツが大学卒業生たちにこの本を無料でプレゼントしているのでしょう。そして、この本は、読書家の彼がこれまで読んできた本のなかでもっとも重要な1冊のうちのひとつだと語っているのでしょうか。

それは、感情に流されて反射的に行動するのではなく、理性によって行動することこそが、問題を解決する上で不可欠な条件であり、世界をより良くするために必要なことなのだと確信しているからではないでしょうか。

たくさんの情報が詰まった手応えのある本ではありますが、同時に、思わず読む手を止められなくなるほど、魅力的なエピソードにあふれる1冊でした。最後の「謝辞」では、この世を去っていこうとする著者の真摯な思いが痛いほど伝わってきて、胸が熱くなりました。





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