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日記 2024年1月 「他人から学ぶべきこと」は恋愛でバグる人か人生にバグる人か。

1月6日

 3連休初日。
 朝食をとっている時に占いがはじまった。
 彼女が1位で僕が12位だった。ラッキーアイテムは「カキフライ」とあった。

 洗濯と皿洗いをした後、彼女を見送った。
 土曜日も彼女は仕事がある。午前中で終わるが、その後は神戸で用事があり、夕食もとってくるとのことだった。
 夕食を一人で取ることには何も思わないけれど、年末年始に自炊しすぎて少し飽きていたので、今日は大阪のよく行く居酒屋へ顔を出そうと決めていた。

 昼過ぎに部屋を出て、年末に借りた本を返しに図書館へ向かった。
 夕方過ぎまで図書館で過ごし、新しい本も借りて電車に乗った。
 姫路から大阪まで新快速で一時間。
 イアン・レズリー「子どもは40000回質問する~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~」を読み始める。

 ふと、インスタを開いた。
 今から行く居酒屋の店主がストーリーをあげていた。
「体調不良のため臨時休業です。節々痛い発熱マン 立てない」
 とのことだった。
 彼女に店主のストーリーのスクショと共に「12位の力を発揮してしまった」とLINEした。

 駅は丁度、明石を出たところだった。
 大阪に行く理由を失って、次の神戸で降りた。
 姫路に戻ってご飯を食べるか悩んだが、とりあえず神戸の居酒屋を探して歩いた。時間は17時すぎ。お店が開店しはじめる時間ではあった。
 看板に「おばんざい」の文字を見つけて、地下一階の居酒屋に入った。落ち着いた感じの良いお店だった。
 メニューを見ると「カキフライ」があったので、おばんざいとカキフライを頼んだ。

1月7日

 3連休2日目。
 今日も彼女はお仕事で朝に部屋を出た。
 夜は時間があるから、外でご飯を食べようと約束した。

 朝からパソコンに向かった。
 友人の倉木さとしと往復書簡をしようと話を持ち掛けていて、その文章を書いた。
 以前も往復書簡をしていて手紙のようなやり取りをしつつ、お互いに質問をしていく形式だった。

 丁度、昨日から読んでいる「子どもは40000回質問する」に質問に関する項目があった。一部、引用。

私たちにとって質問をするのは当たり前すぎて、それがどれほど奥深い技術であるか(もしくは技術の組み合わせであるか)忘れている。質問するには第一に、自分が知らないことを知る必要がある――つまり己の無知を自覚しなければならない。第二に、相反するさまざまな可能性を想像する能力を発揮しなければならない。幽霊は本当にいるのかと訊くとき、その子はすでにいくつかの答えを想定している。そして第三に、他人から学ぶべきことがあることを知らなければならない。

 この本はタイトルにあるように「子ども」が主軸にある。
 子どもにとって好奇心を育むためのプロセスとして質問が如何に大事か、という内容だった。

 僕はもう十分に大人だけれど「己の無知を自覚」するし、常に「さまざまな可能性を想像」していたいし、「他人から学ぶべきこと」は大事にしていたかった。

 倉木さとしへの質問内容を考える時、僕は多くのことを学んでいるなと実感する。
他人から学ぶべきこと」は本当に多い。

 一人で本を読んだり調べてごとをしていると、実際に存在する他人のことが希薄になっていく時がある。
 それは自分の部屋に新しい家具やインテリアを置いてみたり、散らかっている服や本を片付ける行為に近い。理想の自分の部屋を作るのにわざわざ他人に何か質問したりしない。
 けれど、この部屋で良いんだっけ? と立ち止まることは重要で、その確認をする時、他人の存在によって冷静になれたり新しい発見があったりする。

 ●

 夜、彼女と近所のイタリアンへ行った。
 歩いていける距離のお店の良い点は車ではないので彼女がお酒を飲めることだった。

 歩いてお店に行く間に、学校の水泳の授業の話をした。
 どうして、そんな話になったのか覚えていない。
 ただ、風が強く寒い日の中でする水泳の話は不思議だった。夏休みの間だけやっていた水泳教室に行っていた話をしながら、当時の泳げるようになっていく楽しさが浮かんだ。夏の暑さとプールの後の心地いい疲労感。
 彼女に喋りながら伝えきれないことは本当に多いなと思う。

 イタリアンは初めて行くところだったけれど、非常に良かった。
 店員さんがまず親切で、メニューのどれもが美味しそうだった。
 僕らが頼んだのは前菜の盛り合わせと真鯛のアクアパッツァ牛肉のトマト煮込みだった。

 二人とも大満足でお店を出た。
 また来よう、次はパスタを頼もうと言い合いながら歩いた。
 行きより少し寒さはマシに思えた。

1月8日

 3連休最終日。
 本日も彼女は朝から出かけて行った。

 朝、散歩がてら行ってみたかったパン屋へ行った。
 その際にシラスで「米代恭×魚豊×金城小百合×千代田修平 司会=さやわか「いまマンガはなにを描けるのか――生きづらさと不合理に対峙するマンガの力」」という番組を聞いた。

 漫画家二人とその担当編集者二人と司会者のさやわか。
 めちゃくちゃ面白かったのだけれど、公開は8日までだった。

 いろいろ面白ポイントがあって、それを紹介していくのも難しいが、創作する人と最初の読者となり商品にする人の違いが明確に分かって良かった。
 米代恭と魚豊はどちらも「週刊ビッグコミックスピリッツ」で描いているので、今回登壇した編集者のスピリッツの――言い換えれば、小学館の人となる。
 編集者はサラリーマンだとよく言われるが、なるほどそういうことかと頷ける部分がいくつもあった。サラリーマン故に会社を背負っていて思考回路にその部分が混ざっている。そのうえで、個人の判断もおこなう。
 改めて編集者のお仕事は大変なんだなと実感した。

 個人的に編集者のお二人どちらも面白くて好きだったのだが、魚豊の担当編集者、千代田修平が「数年に一度、恋愛でバグる人」という話が面白すぎた。
 朝五時に好きな人に対する想いをつづった手紙を書いて、住んでいるマンションに行きLINEするのはヤバすぎる。

 僕の友人には最近、キャバ嬢にハマっている。
 彼は恋愛にバグる人というより「数年に一度、人生にバグる人」だなと思う。
 数年前に「ネットワークビジネスで俺、生きていくんだ」と言い出して、会社を無断欠勤を平然とし始めた時期があった。
 その頃の彼とは全然仲良くなれる気がしなかった。
 ネットワークビジネスは上手くいかず借金を抱え、当時付き合っていた恋人にも別れを告げられ、実家に戻った。

 一年半くらいで借金を返し一人暮らしを考えている、と言い出した頃からまた仲良くできるようになった。
 そして、今回。
 キャバクラへ行くきっかけになったのは職場関係の人だった。その人は会社の社長とかで金を持っていて、友人に「バーをやらないか?」と話を持ち掛けた。
「場所は君の地元でお店をするためのお金は全部、持つから」

 どう考えても怪しい誘いだが、彼は大真面目にその可能性を考えて、部屋を探してもらっていた不動産屋の知り合いに「部屋探しはもう大丈夫です」と連絡をしていた。
 結局バーをやる話は流れたようだが、その会社の社長らしい人にキャバクラに連れ回されるようになって、目当ての女の子を見つけて通っている。

 最近は、キャバクラのイベントがあると僕らに声をかけてくる。
 ちょっと嫌な気持ちになる。
 と同時に「中年の危機」という単語が浮かぶ。
 友人は今年で38歳。立派な中年だ。
 調べると「人生の中頃に、自分の人生について問い直さずにはいられなくなる、アイデンティティの不安な状態」だと言う。

 社長らしい人に連れ回されるのも、キャバクラに行って女の子に貢ぐのも「アイデンティティの不安な状態」を瞬間的に脱せるんだと考えれば納得できた。
 人は自分で考えなくていい場所に身を置くと安心できるのだろう。


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