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笑顔で旅立つフェアリーに涙

先日、ライブ配信で宝塚歌劇(以下、宝塚)を観た。5組ある中で最も若くスタイリッシュな宙組の、宝塚大劇場公演の千秋楽だ。

組の顔と言うべきトップコンビ(公演で主演を務める男役と娘役のコンビ)が、本拠地・宝塚大劇場に別れを告げた。


長年宙組を牽引してきたトップコンビが、2人揃って退団を発表したあの日。私の心の中では、様々な感情が入り交じっていた。

なんとなく予想していたが故に、それが当たってしまった悲しさ。別れの日が決まってしまった寂しさ。終わりがあるからこそ際立つ、タカラジェンヌ本人の美しさ。

これらの感情は、公演が始まってからも変わることなく、むしろ大きく膨らむばかりだった。しかし私の気持ちとは裏腹に、いつにも増して幸せそうなトップコンビの2人。それが惜別の気持ちを加速させ、2人の最後の勇姿を見ながら私は悲しくなった。


そしてやってきた、宝塚大劇場公演の千秋楽。ライブ配信を観る私は、パソコンを起動させライブ配信のページにアクセスする。

開演5分前に映し出された劇場内は、白い服の人達が目立っていた。宝塚では、退団するタカラジェンヌのファンが真っ白の服を着る慣習がある。きっと、そういう人たちなのだろう。

演目自体は、ジェームズ・ボンドを主人公としたもの。とにかく明るくてスタイリッシュでハッピーエンドの舞台だった。宙組の男役は背の高い人が多いので、スーツ姿が様になる。娘役も男役の魅力を引き立てるべく、洗練された美をまとう人が多い。浮世離れしたかっこよさが、宝塚の舞台には確かに存在していた。

宝塚に存在する5つの組にはそれぞれ個性があるけれど、宙組は洗練された舞台姿と圧巻のコーラスだろう。画面越しだとなかなか伝わりづらいけれど、本当に歌の上手い人が多い。今回の公演も随所に挟み込まれるコーラスに、宙組の底力を見たような気がした。


気づけばあっという間にフィナーレ。今回はトップスター(主演男役)が退団するので、サヨナラショー(30分程度のメドレー。トップスターの過去の出演作から楽曲が厳選される。)も付いている。

物語が終わったあたりから、私はずっと泣きっぱなしだった。なんとなく、この歌を歌っていたな、こんなシーンがあったな、というのは断片的に覚えているのだけれど。退団のショックには抗えなかった。

思い出深い曲が流れて涙、晴れ晴れとした表情に涙、トップコンビ2人の幸せそうな雰囲気に涙。楽しい演目のはずなのに、涙止まらぬ4時間半。でも、こういう状況下で千秋楽まで走りきれたのは本当にすごいと感じた。舞台の幕を上げようと尽力した全ての方のおかげだ。


残すところ、東京宝塚劇場での公演のみとなった。奇跡的にチケットが取れたご縁に感謝し、トップコンビ最後の勇姿を余すところなく見てこようと思う。

退団するその瞬間まで、向上心溢れるエネルギッシュな舞台を魅せてくれる宝塚。私が観る頃には、舞台どこまで進化しているのだろうか。

トップコンビをはじめ、退団者が幸せな気持ちで東京宝塚劇場公演の千秋楽を迎えられますように。

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