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「オフィスワーク」に「生産管理」の仕組みを導入する

インテリジェンスベネフィクス(現パーソルチャレンジ)に入社して取り組んだことの一つに「生産性の向上・品質向上」があります。

(参照)「ビジョン」の持つ力。良いビジョンは人と組織を変える

「日本の障害者雇用の成功モデル」になるためには、作業の生産性と品質の向上は外すことが出来ないテーマでした。世の中の障害者雇用の現場で一番難しいテーマの一つがこれだと思います。ここが上がらないので知らない人たちからすると「障害者って何が出来るんですか?」という言葉が出てくる要因の一つになっています
(実際には何でもできますが、ただそれは本人の努力だけでなく、マネジメントの力もとても重要です)

組織を分ける

当時ベネフィクスが行っている仕事はグループ企業から受託した「入力作業」「封入・封緘などの軽作業」が中心でした。作業は「ボリュームの大中小」「納期の長短」「種類の多様さ」など様々で、また作業を行うスタッフも障害による特徴が異なっており、「多品種・少量・短納期」×「障害の特徴」の掛け合わせをマネジメントしなければならず、かなり複雑なものになっていました。

当時の組織は機能がほとんど分かれておらず、リーダーとメンバーくらいにしか職種が分かれていませんでした。そのためリーダーが仕事内容をお客様先に聞きに行き、その内容をメンバーに指示し、そして出来上がった作業内容をリーダーがWチェックを行い、納品するという流れになっていました。
そのため、リーダーのキャパシティが組織全体のキャパシティになっていて、つまりリーダーの能力と人数が組織の生産性を決めていて、とても効率的とは言えませんでした。
ではこのやり方として間違っているかと言えばそんなことはなく、むしろ世の中の特例子会社や障害者雇用を行っている現場では今でもこのやり方が主流です。なぜかと言えば、このやり方はリーダーを配置さえすれば業務を回すことができて、スタッフを管理することができる一番簡単で効率的な方法だからです。

しかし私はこのままだとこの組織の生産性を向上させるのは難しいと感じていました。リーダーの能力に依存したやり方ではなく、仕組みとして生産性を向上させるやり方に変えなければ、組織の拡大に合わせてリーダーを配置し続けなければならず、どこかで組織の成長が止まってしまうと思いました。

生産管理を導入する

ではどうやって生産性を向上させたらいいのか?私たちが受託する仕事は「多品種・少量・短納期」という仕事内容です。この特徴のまま仕事の量を増やし、生産性を向上させる仕組みを考えなければいけませんでした。

そこで目を付けたのが日本のメーカーが取り入れていた「生産管理」「見える化」というという手法でした。これはメーカーで取り入れられ効果を上げてきた手法ですが、これをオフィスワークに導入することができれば誰が見ても「何をいつどういう状態で作業し納品すればいいのか」が分かるようになり、組織の生産性は向上するはずと考えました。そこで組織全体の取り組みを機能ごとに分けるということを始めました。

まず組織を「営業」「生産管理」「生産(作業)」「品質管理」に分けました。営業が取ってきた仕事を、生産管理チームが作業内容やスケジュールを詳しく確認し、それを業務仕様書にまとめて現場(作業チーム)に渡します。作業チームのリーダーは業務仕様書を見て作業内容を把握し、メンバーに業務アサインを行い、作業が完了したら品質管理チームが検品を行い、問題なければ納品という流れにしました。

また作業全体がいまどのように動いているのか?どこに無理が生じているのか?などが一目で分かるように大きなホワイトボードを用意し、作業ごとにラベルを作り、いまどの作業がどのフェースにいるのかが一目で分かるようにしました。

これを毎朝各チームのリーダーと共有することで、組織全体の業務が「見える化」され、誰でも組織の状態を確認することが出来るようになりました。

現場が元気になる

この取組みの効果はすぐに現れました。まず営業が仕事をもらってくることに専念できるようになったため、売上が右肩上がりで上昇しました。品質管理がスケジュールを管理しているので納期管理ができ作業スケジュールに無理がかからず作業メンバーの精神的なストレスも減らすことが出来ました(実際仕事のストレスによる体調不良者も減っていきました)。
メンバーもストレスなく仕事に集中できるためミスも減り、さらに品質管理がチェックを行うためお客様からのクレームも激減しました。

また当初は想定していなかった効果として、チームを分けたことで職種を増やすことが出来ました。これまでは入社した人はメンバーになるかリーダーになるかの2つしか選択肢がありませんでした。しかし、その人の強みに合わせて営業、生産管理、作業担当、品質管理と配置できるポジションを増やすことができ、様々な能力や経験を持った人たちに入社いただくことが出来ました。

これにより組織の生産性と品質は著しく向上し、グループ内でも私たちの存在感は高まっていきました。

※数年後に日経新聞から取材を受け、この取組みを社説に掲載していただきました。期せずして日経新聞・全国版のTOPを飾ることになりました(笑)

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