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食事を制する者は、レースを制する

160km(100マイル)を約40時間かけて走る

「ウルトラ・トレイルランニング」

一般の人には信じられないこのレースの魅力と、
人間の体の限界についてお話しします。

今回のテーマは「食事」についてです。

1回のレースで20,000kcalを失う

人によって差はありますが、ウルトラトレイルレース
ではレース中に20,000~30,000kcal消費します。

成人男性の平均的な1日の摂取カロリーが
2,500~3,000kclと言われていますので、およそ10倍の
カロリーを40時間で消費するわけです。

当然、この消費カロリー分を摂取しないと、レース途中で
エネルギー切れを起こして動けなくなります。

このエネルギー切れの状態を

「ハンガーノック(hunger knock)」

と言います。

ハンガーノック

ハンガーノックとは、自動車に例えるならば走行中の燃料切れであり、肉体がエネルギーを失った状態を意味する。この時、自らの意志とは関係なく、体は動きを停止する。脳へのエネルギー供給量も減少するため、意識の低下や思考の鈍化を生じる。(wikipediaより)

実は、ハンガーノックはレース中に突然訪れます。

「もうすぐ切れるよー」

という前触れがあるわけではありません。

調子よく走っている途中に急に体が重くなり
脚が動かなくなります。
そして、メンタルの状態も急激に下がり
頑張ろうという気が弱まります。

これがレース中盤だと、残り50~80kmあると
思うと、絶望感に変わり「リタイヤ」
頭をよぎります。

こうなる前に「食事」を取り「エネルギー」を
補給しなければいけないのです。

ウルトラトレイルレースは大食い大会

想像して欲しいのですが、20,000kcalの食事
ってどのくらいでしょうか?

こってりラーメンで有名な「天下一品」の
ラーメン一杯が800kcalと言われていますので、
その25杯分です。

天一

これだけ食べながら走り続けるって
想像しただけで吐きそうになりませんか?ww

つまりウルトラトレイルレースは160km走ると
同時に、大食い大会の要素もあるわけです。

と言っても、もちろんこれだけの食事を食べながら
走ることはできないので、通常はエナジージェルや
エナジーバーという効率的にエネルギー摂取する
ことができる補給食を利用します。

エネルギージェルはバリエーション豊富

エネルギージェル・バーは現在各メーカーから
様々な種類のものが発売されています。

人がエネルギーにできるのは大きく分けると

「糖質」と「脂質」

になるため、補給食も大きくはこの2種類に
分けられます。

ただ、「糖質」と「脂質」ではエネルギーへの
分解スピードが異なるため、通常はエネルギーに
なるスピードが速い「糖質」
を摂取することになります。

エナジージェル

ただ、ここで注意が必要なのが、ジェルは
なんでもいいわけではなく、自分の体に合う
モノを選ばなくてはなりません。

エネルギージェルは味が濃いものや甘いものが
多いため、人によって合う合わないがあります。

誰かが「これ良いよ」と言っても自分には
まったく合わないということはよくあります。

たまにいるのですが、レース会場で販売している
ジェルが良さそうと思ってそこで大量に購入し
ぶっつけ本番で使う人がいますが、これは絶対に
やめた方がいいです。

必ずレース前に何度も試して、自分が食べ続けられる
味と効果が期待できるものかを確かめなければ
いけません。

レース中にこれ以上このジェルを食べられないと
分かった時の絶望感は半端ではありません。
(全部投げ捨てたくなります)

体脂肪をエネルギーに変える

実は、レースで消費する全てのエネルギーを
レース中に全部補給することはできません。

それほど人間の消化器官は強くないのです。

レースで補給できるカロリーは感覚的ですが、
せいぜい10,000~12,000kcalが限界でしょう。

エネルギージェルが1個100~150kcalなので、
80~100個分になりますが、これだけジェルを
取ったらおそらくレース中に吐き気が強くなり
途中から摂取できなくなります。

そこで、ジェルをレース中に50個、残りは
エイドステーションでバナナやおにぎりなどの
固形物や温かいスープなどをもらって補給します。

しかし、固形物はエネルギーになるまで時間が
かかるうえに、胃にたまるのでそれほど多くは
摂取できません。

そのため、食べられる量に限界があります。

では不足している残りの8,000~10,000kcalは
どう補うのでしょうか?

それは人間が元々蓄えている

「体脂肪」

です。

体脂肪は1kgでおよそ7,000~8,000kcal
言われています。

この体脂肪を燃焼させながら走り続けるのです。

そのため、ウルトラランナーたちは普段から
この体脂肪を燃焼しやすい体にするために
様々な工夫をしています。

つまりウルトラトレイルレースを走るうえで
もっとも重要なのは「普段の食事」なのです。

この普段の食事についてはまた次回に書きたいと思います。

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