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起業して失敗したから見えた、仕事をする上で一番大切なこと

私は2009年5月に務めていたインテリジェス(現パーソルキャリア)を退職して起業しました。しかし起業してすぐに、会社の資金難、株主同士のトラブルに巻き込まれ、これまでに経験したことがない強さのストレスに私のメンタルはだんだんと壊れていきました。

(参照)人生最大の後悔。起業さえしなければ…

そんなときに出会ったS社長に自分のこれまでのこと、いま起きていることを話すと、

「そうか、佐藤さんは仕事の仕組みのことがまったくわかってないんだね」

と言われました。

私はその言葉を聞いたとき正直落ち込みました。会社を興してから6か月の間、私は営業、資金調達、システム開発、採用、マーケティング、事業計画、株主対応のどれ一つとっても上手くいかず、自分が本当は会社経営に向いていないのではないかと思い始めていました。
そこに、さらに本質的な仕事のことも分かってないと言われ、これまでの全てを否定されたような気持になりました。
ただそこで一言だけ「僕の何がダメなんでしょうか?」と聞くことができました。

(参照)「何のために仕事をするのか?」を考えた日

S社長は私にやさしくこう言いました。

今佐藤さんの話しを全部聞いたけど、結局佐藤さんが何のために仕事をしているのかというと『自分と家族を養うための、お金を稼ぐ能力を身に着けるため』に働いているということだね。つまりは自分のためだよね。
でも残念だけど、仕事の本質はそうはなってなんだよ。仕事とはむしろ逆で「自分と家族以外の誰かに『貢献』して、それに価値があるから『対価』としてお金をいただく行為」のことを仕事というんだよ。
だけと佐藤さんは本質的には自分と家族のために仕事をしていて、一番大事な「誰かに貢献する」というところにモチベーションを持ってないんだ。
佐藤さんが本当に何をしたいのか、誰に貢献したいのかをもっと突き詰めて考えて会社を作っていたら、今の状況とは違ったものになっていたんじゃないかな。

この話しを聞いたときに私は本当に体の中に「ビシッ‼」と電流が流れたように感じました。

これまでも起業するためにビジネススクールに通ったり、ビジネス書を読んで経営の勉強をしていました。そこには「商売とはお客様のために行うもの」とか、インテリジェンスにも「顧客志向」という言葉があり、自分も頭の中では「仕事はお客様のために行うもの」であることは分かっているつもりでした。

しかし私は、父親の自己破産をきっかけに家族の関係が壊れていくのを目の当たりにし、自分自身も学生時代に金銭的に苦労した経験から、「お金」に対して強い不安と恐怖を持つようになっていました。その不安と恐怖をこれ以上感じたくないという思いから「どんな経済環境であったとしても自分と家族を養えるお金を稼ぐ能力を身につけたい」と考えるようになったのです。

そして「仕事とは自分と家族以外の誰かに貢献する行為」という考えを聞いたこの瞬間から、自分の頭の中で

「いった自分は誰に何をしたいんだろう?」

と自問するようになりました。
またその視点で見たときに今の会社は本当に自分がやりたいことなのかと問われると「お金を稼ぐ」ということを目的に作った会社で、自分が本当にやりたいこととはきっと違うという結論に達し、私はこの会社をたたむ決心をしました。

会社を立ち上げてわずか1年しか持ちませんでしたがこの起業は、自分の人生を左右する大事なことに気づきを得た経験でした。

(実際にこの後、会社を清算するには様々な課題がありました。株主間のトラブルや、わずかではありますが金融機関から資金調達も行っていたため、すべてが片付くまでにはそれからさらに数年かかりました)

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