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「何のために仕事をするのか?」を考えた日

父の自己破産をきっかけに私たち家族の人生は一変しました。
第11話.人生が一瞬にして真っ暗になった日

これまで私は父をとても尊敬していたし、また自分が浪人時代の一番苦しいときに救ってもらったことを本当に感謝していました。
第1話.自慢の父親
第7話.初めて死のうと思った日(その2)

しかしその父が自己破産をして私の人生は大きく変わりました。
毎日大学で授業と実験をし、空いている時間は全てアルバイトに使い、およそ一般的な大学生が味わうキャンパスライフとは程遠い生活を送っていました。

「なんで俺だけ・・・」

そう思う気持ちがなかったわけではありません。楽しそうにしている大学の仲間を見て羨ましいと思ったことは何回もありました。
しかし、だからと言って父を恨んだことは一回もありませんでした。むしろ今まで何も気づかず、負担をかけさせていたこと、金銭的に苦しいなか自分を予備校に通わせてくれ、しかも大学1年分の学費を用意してくれたことを思うととても責める気持ちにはなれませんでした。
それどころかこれまで気付けなかった自分を悔いていました。

一方実家では私が子供のころに住んでいた家や土地は手放さなければならず、またその町に住み続けることはできなかったので、浜松でも中心街からかなり離れた場所に小さな一軒家を借りて私以外の家族5人はそこで暮らし始めていました。

父は自己破産により金融機関への借金はなくなったものの、個人から借りたお金については(一部)今後も返済するとしたため、その後もお金には苦労し続けました。またそのお金の話しで父と母や、兄がよく口論になっていると、妹から電話で聞かされ辛い気持ちになりました。

ある時、夜中の1時頃に兄から「親父がいなくなった」と電話がありました。兄からは

「22時頃に散歩に行くと出ていったきりこの時間になっても帰ってこないし、連絡も付かない。6時までは待ってみるけど、もしそれまでに連絡が着かなければ警察に連絡するから、その時はお前も覚悟しておいてくれ

と言われました。つまり死んでいるかもしれないということでした。

私は電話を受けた後、不安で眠れませんでした。
幸い5時頃に兄から連絡があり「いま親父帰ってきたから、とりあえず安心して大丈夫だから」と言われほっとしました。後で兄から聞いたところ父は

「本当は死のうと思って出ていったけど、死にきれなかった」

と涙ながらに話したそうです。

私は東京で自分の生活だけで精一杯でとても実家のことまで手を回す余裕がなく、ただ家族の状況が悪化していくのを見ているしかありませんでした。

「お金が無くなっただけでなく、家族まで失ってしまう」

という恐怖感だけがずっとありました。そしてこの時に私は初めてお金や仕事というものについて考えました。

「お金はたんに生活するためだけのものではなく、家族の愛情もつなぎとめておく力がある。だったらこれから自分はどんな時代や経済環境になったとしても、自分と自分の家族を守っていけるだけのお金を稼ぐ能力を身に着けたい」

これが私が仕事をする最初の目的になりました。

ただ、そのためにはサラリーマンでは誰かに給料を決められてしまうので、サラリーマンのままではダメだと思いました。本当にお金を稼ぐ能力、お金を作り出す能力を身に着けるには経営者にならなければいけないと考え、自分は大学を卒業したら早い段階で起業をするということを決意しました。
そしてそのためには自分が扱っている商品をまず売らなければいけないので、営業力が身に付く会社に行こうと決意し、当時ベンチャー企業で急成長していた「株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)」に入社を決めました。

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