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アートを知りたい

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人生に必要な「要素」としてのアート
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#現代アート

おうち美術館の効用

おうち美術館 しばらく箱の中に眠らせてしまっていたアート作品を、おうち改革のタイミングで引っ張り出してきました。 この作品,実はアートオークションで入札したものでした。 大切にしすぎて,なかなか飾る勇気もなく,箱の中におりましたが,ようやくおうち改革で飾ることを決意しました。 腰窓のしたの,木箱のうえ。 本当は作品には直射日光はよくないのですが,展示してみて思わずその美しさにしばらく見とれてしまいました。 そしてもう一枚のペインティング。 これは大学生のときにベ

アートのない世界で人は生きられるのか

在宅では新たに見えてくるものもあるし,見えなくなってくるものもある。 そんな生活のさなかで,こんな記事が目に止まりました。 アートのない世界で人は生きられるのかタイトルだけ見てからの,私なりの答えは,「生きられない」です。 ここは私なりの解釈なんですが、アートはなにも絵画や彫刻といった芸術作品のみに限りません。たとえば、まちなかのゴミばこのデザインにもアートは宿っていると思うし、ある友人の人生観とかにもアートは宿っていると思います。 ここで私が解釈した「アートの世界」とは、

現代アーティスト3人とわたしの関係

前回記事では,ぼくの人生に大きくかかわったクリスチャン・ボルタンスキーをとりあげた。 今回のnoteではボルタンスキーを語る上で欠かせない2人の作家を紹介することで現代アートの人生における意義みたいなところを深掘りしていきたいなと思う。 このnoteの意図は先のnoteと変わってない。 もちろん私のnoteだけでは読者のみなさんのこころに突き刺さるとは思っていない。なぜなら実際の作品があるから,このひとつのnoteで突き刺さってたまるかという作家への畏怖にも近い尊敬があ

現代アーティストChristian Boltanskiがわたしの人生において果たす役割。

2019年5月1日の日記を呼び戻してきた。 そこに刻まれたChristian Boltanskiという男。ぼくの人生に対する価値観を変えたひとだ。 (Christian Boltanski photographed in his studio, 1990) もちろんこの私のnoteだけでは読者のみなさんのこころに突き刺さるとは思っていない。なぜなら実際の作品があるから,このひとつのnoteで突き刺さってたまるかという作家への畏怖にも近い尊敬がある。でもその世界に飛び出し

アートと社会のなめらかな関係

1. アートってそもそもなんだ? まずはこの絵画をごらんください。 どなたの作品かわかるでしょうか。 あるいはいつの時代の作品でしょうか。 ルネサンス?はたまた近代? 日本人が書いたのか,あるいは,アメリカの作家? ピカソはこんな絵書くかなあ.. 岡本太郎ぽい.. そもそも著名な作家が描いた作品なのか,子供の殴り書きなのか!? 答えはこの方です!! ------------------------ (京都大学霊長類研究所HPより) そう。 チンパンジーのアイちゃ

0.000002%の確率の感動。BEPPU Projectでの中山晃子さんの作品に思う

地球が大好きだ。 スケールの大きさがあまりにも手に追えず,生かされる者としてそこで活動する。46億年の歴史の中で100年という人生はあまりに短く,だからこそ100年をかけて地球のことを知りたいなと思う。 いま石油を採る仕事をしているのも,エネルギー安定供給に貢献したいとかじゃなくて,地球の深いところからでてくるどろっとしたまっくろな液体の美しさにやみつきになっているからか,なんて気もしてくる。 そんなことはこんな記事やこんな記事にも書いていた。 石油掘削という点で地球

存在の確かさと見ることの危うさ 光の館で現代アートに泊まる

天井に穴の空いた館。 それが今回訪れた新潟県十日町にあります。 光の館。 昼間は一般にアート作品として公開されていますが,夜は一棟貸しの宿泊施設になります。 自然光と人工光を調和させ、「陰翳の美」を創り出す。そこに、空の青、壁の金、床の間の赤、浴槽の緑、そして全体を覆う黒い色調が微妙なコントラストを与えている。それは「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える」日本の文化への、西洋の文化を背景としてきた私なりのアプローチであった。これま

520年の老舗旅館で思う宿泊体験とは。 伊豆あさば

伊豆,修善寺。 520年の歴史を紡ぐ旅館があります。 あさば。 日本を代表する名旅館と名高いあさばの宿泊体験はどんなものか。 門構え。 立派な出立ち。 ここはいつきても足跡がありません。人が通るたびに竹箒で砂利を整えているのです。どんなタイミングでも隙のない表正面。 宿の中に入ると,女将さんが笑顔で迎え入れてくださいます。長旅から帰ってきたような安心感。 内観はとにかく清潔。あしの裏で感じる畳と,鼻で感じるいぐさの香りにほっとします。お部屋からは立派な能舞台。 お風呂

由布院・隈研吾建築の小さな美術館 COMICO ART MUSEMU YUFUIN

洗練された建築。 気鋭の現代アート。 眼前に臨む由布岳。 のんびりとした温泉街に誕生した,COMICO ART MUSEMU YUFUIN。 COMICOは韓国のNHNエンタテインメントの子会社が運営する漫画アプリの名前が冠されています。 早速こちら,エントランス。広ーく抜けています。 外装の建材は黒く見えています。エントランスのロゴをみてみると良くわかるかも。こちら使われているのは焼きスギです。西日本で良くみられる建材。 設計者の隈研吾さんの意図は, 湯布院は日本

僕らの秘密基地,NANZUKAギャラリー。 ジョナサン・チャップリン展

渋谷のヒカリエの足元。 そこにNANZUKAギャラリーがあります。 看板も控えめだし,そこは地下二階。 秘密基地のようなワクワク感があります。 現在開催中のジョナサン・チャップリン展。 こんな作品です。 1987年生まれ,NYで活躍する若手アーティストですが,昨今注目が集まっています。 今回の展示でも昨日段階で全て売り切れ。 価格は$30,000前後です。 注目度の高さが伺えます。 コンピュータ上でモデルを組み立て, それを絵画,彫刻に落とし込んで行きます。 この手

アートオークションに参加して,作品を買った

少し前に日本の作品売買市場が小さいとのnote記事を書きました。 その現在地はどうなっているのかと, SBIのアートオークションに参加しました。 オークション..ハードル..高い..ですよね.. 僕も超びびりながら参加しました。 もう終始手震えてました。 オークションへの参加の流れはこんな感じです。 1. 作品を探す 2. 下見会 3. 入札 4. 落札 5. 支払い 6. 作品引き渡し 1. 作品を探す まずは作品を探しましょう。 前提としてオークションはSeco

写真家ソール・ライター いとあはれ

わび・さび in New York. 渋谷で開催中のソール・ライター展行ってきました。 私なりの絵画と写真の違いの解釈は, 絵画や彫刻は, ピュアな創造物である 思考する隙がある 一方で写真は, 量産が可能である 現実であり隙がない と思っておりました。 が,今回ソール・ライターの作品で写真を見る目が変わりました。 感じたのはわび・さび。 ぎりぎり顔が見えないとか,ぼやけているとか, 写真に映る対象者は,具体的な人ではない。 もしかしたら鑑賞者自身かも

目で見てから,ああこれは女性だとわかるまで

次の作品を見ると,皆さんの脳は何を認知するでしょうか。 風景? 女性? 馬? こちらピカソの絵画。当時215億円の時価がつきました。 私の認知を言語化するとこう。 「まぶしいっ! 鮮烈な色っ! ん?左側にいるのは女性だな。衣装を身に纏っている。表情は..希望? え! 女性の右側のなにっ!? なんなのっ!馬がいる?...」 と続いていきます。 さてこの過程で我々は何をどういったプロセスで知覚したのでしょうか。だって,コンピューターでも人の顔を顔として認識するのは難しいんで

アート作品1つお買い上げ。からわかったアートの効用

アート作品市場が拡大してますね。 バブルと呼ぶ方もいますが。 日本のアート市場は, 鑑賞市場が大きい一方で, 購買市場は小さい。 美術館には観に行くけれども, 作品は買わんな, という方が多いんです。 ちょっと前には元ZOZO社長の前澤さんがバスキアの作品を 123億円で購入したことが大きなニュースにもなりました。 (ちなみに前澤さんが購入したのはNY市場なので日本のアート市場には計上されない。) 私も鑑賞市場の一員でしたが, ふとギャラリーのオープニングに行ったこと