言葉を知りたいと思った夜だった
一歩先へ。
そう目標を定めてから動くまでがまたずいぶん時間がかかった。
意識しないでただやってみることがこれほどにも人間にとって難しいことなのかと実感しながら月日が経ち、今日江國香織さんの本を8冊購入してきたのだった。
彼女を知ったのは確か小学生のころだった。
他にはない魅力的な言葉が印象的で生涯の中で最も好きな作家だ。
だが、私はこの28年の中で数えるほどの彼女の本しか読んでいないことに気づく。覚えてるのは3冊くらい。冷静と情熱のあいだ、東京タワー、がらくた。
それでも鮮明に強烈に「江國香織」という作家の名前が自分に残っているのだ。
その理由を言語化したかった。
そして、彼女のエッセイ「泣く大人」を4ページ開いた頃に気づいたのだった。
言語というものは私のこの内側を表現するには、
あまりに足りないもののはずなのに
その言葉のかけら達を彼女は持っているんだ。
「ヴィンセントが教えてくれたこと」という映画がある
ビル・マーレイが演じる嫌われ者のおじいちゃん主人公と少年の友情物語だ。
5年ほど前に見た時、話の内容は深く覚えていないが、
主人公の発した一言が私の中で一生忘れられない言葉となった。
家によく呼ぶ娼婦のことを誰かと少年が尋ねた時に
“The lady of the night 「夜の女だよ」“ と答えるヴィンセント。
それはどういう意味かと尋ねる少年に、
「一番正直な稼ぎ方をする女だ」
と答える言葉に胸を突かれた。紛れもなく、私が探していた言葉だった。
わたしはそんな言葉達が好きなんだ。
いつかわたしが紡ぐ言葉が
誰かの心にストンと落ちてくれたら
そんな幸せなことはないだろう。
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