新著『理念経営2.0〜会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ』発刊にあたって Part1:どんな本か?
2023年5月16日、『理念経営2.0〜会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ』という本がダイヤモンド社から発売されます。
この新刊について何回かに分けてnoteで紹介していきたいのですが、第一回目はこの本がどんな本かについて紹介したいと思います。
この本は、「現代、私たちが“群れ”で働く意味は、どこにあるんだろう?どうやれば、うまく群れられるのだろうか?」という問いから始まった本です。
2018年頃から、BIOTOPEでは、ビジョンドリブン・ミッションドリブンな会社の支援をすることが増えました。そういう会社の経営者やメンバーと議論をするときに特有の問いがあります。
普通の会社とは違って
「なぜ、自分たちがXXの事業をやるべきなのか?」
「その取り組みは、自分たちらしいか?」
「自分たちは、どんな世界を実現したいからXXの事業をやるのか?」
そんな答えのない問いを考え続けることに時間を惜しまない。ビジネスの現場での議論というと結論とネクストステップが常に求められる、というのが定番ですが、ビジョン/ミッションドリブンな会社では、終わりのないように思える問いを問い続け、考え続ける。これは、いわば、企業が自分たちの哲学を常に考えていく時代になったのだ、と感じました。
2019年3月にダイヤモンドハーバードビジネスレビューのPURPOSE号にて『組織の「存在意義」をデザインする』という論文を寄稿しました。この論文の中で、21世紀の企業は、ビジョン、ミッション/パーパス、そしてバリューが経営資源のコアになることを提示しました。
その後コロナ禍を経て、パーパス経営というキーワードがバズワードになり、企業理念、いわゆるミッション、ビジョン、バリュー(MVVと呼びます)を策定している会社が劇的に増えました。
BIOTOPEでも、ミッションのデザイン、ビジョンのデザイン、組織文化のデザインなどのテーマで企業と伴走することが増えていく中で、同時に違和感も出てきました。
違和感1: MVVを作るプロジェクトの依頼が増えたが、そもそもMVVを1セットで作る必要があるのか?
→ビジョン、バリュー、ミッション、パーパスというのは、それぞれ企業の成長や進化の過程で自然と必要になってくるものではないか?むしろ、セットで作り直すというのは、それぞれの経営実務における役割が明確になっていないのではないか?
違和感2: 作られたMVVを組織の中で生きたものになっていないのではないか?
→経営陣から動画やツールキットを作って伝えるだけの理念浸透プロジェクトや、TVCMに落としていくようなコーポレートブランディングプロジェクトは、社員の自分ごとを生まない。必要なのは、社員が自分ごとにしていくための、理念の物語を作る仕掛けではないか?
違和感3: そもそも経営のパラダイムが変わりつつあるのではないか?
→集中と選択、オペレーション改善など、誰かが答えを知っている前提のトップダウンの組織には、限界が来つつある気がします。複雑でスピードが速い世の中の中でトップに求められるものが厳しすぎ、結果的に、社員が持っている能力ややりたいことを十分に活かしきれないことが多い。人が資本と言いながら、従来の経営のパラダイムだと働く人が価値を生み出すことを本当に中心にした経営になっていないのでは?
そこで、この本では以下のような点に工夫を凝らしました。
特徴1:企業理念の作り方・使い方を一気通貫で扱っていること
この本の構成は以下のような形になっています。まず、MVVやパーパスとふわっとした定義になっている企業理念の意味合いを再整理し、その上で、企業理念の作り方と、組織内への落とし込み方=使い方を紹介しています。最後に、理念経営2.0が、理念経営1.0と何が違うかについて紹介しています。
・企業理念の再整理パート
序章 21世紀の企業理念──ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスと
は何か?
・企業理念の作り方パート
第1章【ビジョン】未来への「動力」をつくる
第2章【バリュー】こだわりを可視化し、自分たちの輪郭を描く
第3章【ミッション/パーパス】組織の中心軸となる社会的意思を定める
・企業理念の使い方パート
第4章【ナラティブ】理念を「自分ごと」へと語り直す
第5章【ヒストリー】会社に埋蔵された「原点」を掘り起こす
第6章【カルチャー】理念を体現する文化づくり
第7章【エコシステム】理念を育てる「生態系」をつくる
・理念経営2.0の全体像を紹介するまとめパート
終章 意義をつくる会社へ
以下のように、企業の理想を、戦略に落とし込むために必要な企業理念群、と、その実装に役立つナラティブ、ヒストリー、カルチャー、エコシステムについて一気通貫で紹介している、いわば企業版「直感と論理をつなぐ思考法」になります。
すでに、企業理念を作った会社のは、企業理念の使い方パートから読んでもらってもいいですし、企業理念を作ったけど十分に社員と対話ができていない方は、企業理念の作り方パートの問いを元に社員と対話することが良いと思います。
特徴2.パーパスナラティブキャンバスを付録として付けました
パーパスナラティブキャンバスというのは、この本で紹介しているミッション/パーパス、ビジョン、バリュー、ナラティブ、ヒストリー、カルチャーという6つの理念経営のための経営資源を活用して、それぞれが自分なりに組織のナラティブを考えやすくしたものです。
4章のナラティブにて紹介しているツールキットですが、紙の本の付録として蛇腹型のツールキットがついてきます。これをお互いに埋めながら、同僚と話し合うことで、お互いが考える組織の意義のナラティブを共有できるようになっています。
特徴3:巻末付録として企業理念一覧表付き
この本の巻末には、企業理念を策定する際に、よく参考にする主要企業の理念(パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー)を42社分収録してあります。企業理念を考える際、他の企業の例を参考にしたい!ケースは多いのですが、それがまとまっている場所があまり存在しないため、今回手をかけて作りました。企業群も外資系から日本の大企業、老舗企業、スタートアップ、NPO、官公庁と幅を広げて用意しましたが、必ずしも、このリストに載っている企業が経営現場で良い実践をしているかどうかはわかりません。あくまで、公開情報のまとめ、として参考にしていただけたら嬉しいです。(2023年4月時点ですので、その後の変化については追えていません。また、公開されていないが、実際には存在する場合もありえますので、その旨ご了承いただけたらと思います)
実はもう一つ、一番大きな仕掛けがあるのですが、それは実際に買った人のお楽しみ、とさせてください。
この本はこんな人に読んでほしいです
・組織マネジメントやエンゲージメントに悩む経営者や経営メンバー
・ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなど、企業理念が策定されたものの、自社の意義にピンと来ていない社員
・自律型組織を目指しているものの苦労している組織のメンバー
経営者目線で言えば、自分の会社でやっていることを振り返り、できるかもしれないことを見つけることになるでしょうし、
社員目線で言えば、自分目線での理念を振り返り、会社のそれと付き合わせて考えるそんなきっかけになると思います。
最後に、理念経営2.0としたのは、理念経営1.0が、カリスマ創業者の考えを言語化した、社長の誓い、だったとしたら、理念経営2.0は、みんなの物語になるもの、だと思ったからです。
今の時代に経営者が全ての答えを知り、導いていくことは極めて困難です。その中で、経営者は常に孤独と戦っています。経営者が孤独である限り、どうしても周囲のメンバーは経営者の思いを忖度し、自分のやりたいことや自身の持つクリエイティビティを活かすことは難しいんです。経営者が、企業理念という答えがない問いに立ち向かっている、という、いわば、弱さを見せ、心を開き、仲間と一緒に問いを一緒に考えていく思考の総量が、その会社の理念の土壌を耕すことになるし、結果としてその土からは社員それぞれの理念を肥料にした芽が出るようになってくるのではないでしょうか。
この本は、企業理念という規律のようなものだと思われているものを、問いという形に捉え直し、仲間と一緒に問うことで、楽しく自分たちの意義を考えられるようにデザインしてあります。自分たちの存在意義を仲間と考えるのは、とても楽しいことだし、絆が薄くなりがちな今の時代に必要な体験なのではないかと思っています。
もしも、会社が意義を作る場になったら?
そんな理念経営の新たな形のビジョンをこの本に込めて届けたいと思います。
この本が必要な人に届きますように。
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