サザンカ

50歳を過ぎて、人生の折り返し地点に立ったのだと気づきました

サザンカ

50歳を過ぎて、人生の折り返し地点に立ったのだと気づきました

最近の記事

おでん居酒屋に誘われる

「居酒屋におでんを食べに行こう」 その日の夜はおでんだった。それを食べながらのひと言。 「すすきのにある本当においしいおでん居酒屋、おれ知ってるんだ」 若いころによく通っていたらしい。そういえば彼はすすきのに住んでいたんだった。 いや、心の裏側見えすぎなんだけど。 たしかに煮込みは浅かったと思うよ。でもメインはおでんじゃないし。 付け合わせみたいな気持ちだったし。 仕事している途中で思いついたから煮込んでるの昼からだったけど、さっきも言ったけどメインじゃないし。 「作

    • 完璧な日曜日

      日曜日の正午。昼ごはんは各々好きな物を食べて、テレビの前でまったりしながら、録画をした『世にも奇妙な物語』を見た。 あんまり怖くなかったね、なんて言いながら茶碗を片付ける。窓の外には青空が広がりどこかに出かけたくなるような気分になるけれど、生憎午後の予報は雨。 室内干しで湿度のあがった部屋は、ほんの少しだけ不快指数が高まっている。 お腹が膨れて横になりたいと思ったが、ソファーには夫と息子が座っていたので、クッションをひとつだけもらい、無垢材のフローリングに横たわると猫が来た

      • 「失望しました」と言われた男

        年に1回あるか無いかの東京出張に駆り出された夫は、クライアントとの打ち合わせで「正直、失望しました」と言われたらしい。 相手がどんな気持ちでその言葉を使ったのかはわからないが――多分本当に心からがっかりしたからなのだろうけど、普通あんまり人にぶつけるような言葉ではない――、夫の気持ちにはがっつりと刺さったみたいだ。 そもそも夫はマネージャーという職にあり、クライアント業務を事業所内で円滑に回していく必要がある。業務が円滑に進まなければマネージャーに厳しい指摘がされ、改善を

        • この春、中学生になった息子は

          この春、息子が中学にあがった。 上の娘とは七つ齢が離れている。娘と夫に血のつながりはない。 だからこそ私と娘との関係は常に密だった。息子との関係が希薄だったわけではない。 でも、息子の右手に母親がいて左手に父親がいるとしても、娘にしてみれば左手に母親はいるけれど右手は宙ぶらりんの状態。 足りないものがあると思わせないように、時々両手を握ってやる必要があった。息子には肩車をしてくれる夫がいる。 そんな関係で長い年月が経ち、去年、娘が家を巣立った。大学生になり、親元を離れた

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          一文字も書かずに二ヵ月が過ぎたその後

          夫婦のことを書いてみよう。 14年目の結婚記念日に、そんな決意をしてから、一文字も書かずに二ヵ月が経過した。 記録しておこうといいながら、日々があまりに忙しくて――家事と育児とネトフリと食べ歩きと、卒業と入学とドライブとフォートナイトと、授業参観とPTAと読書と猫まみれで――、気づけばもうゴールデンウィークも直前。時間の使い方を本気で考えた方がいいかもしれない。 だからほとんど駆け足でこれまでを書くことになるのだけど、結婚記念日はなにかを買ってきてくれた。なにか……もうすっ

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          離婚しようと思っていたのに、結婚14年目

          いつだったか忘れてしまったけれど、コロナ禍のいつか、たしかに離婚の話し合いをした。 五十歳を見据えて、もうこの人とやっていくのは無理だと思った。辛くて苦しくて、この先の人生をそんな風に過ごすのは耐えられない。関係を再構築するために仕事を辞めて家に入る選択をしたのは、結局のところ誤りだった。この人は変わらない。四十代も半ばに差し掛かり、もう変わりようがないのだ。 結婚してから二度、大きな話し合いをした。 彼はそのたびに言った。 「俺、変わるから」 そして結局変わらなかった。

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