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香港色のフィルムカメラ「Escura snaps 35」を使ってみた 【レビュー】

フィルムカメラを買った。

フィルム写真には以前から少し興味があったけど、フィルム代も現像代も結構するし、昨今ではインスタの影響でプチブームにもなっていて中古フィルムカメラの値段も高騰してるし、そもそも状態のいい中古品を探すのは大変そうだし、なによりデジタルカメラでそこそこ満足しているしで、これまで手が出せていなかった。

けど今年の2月にこんなフィルムカメラが発売されたのだ。

赤白青のトリコロールがどうして香港をイメージしたデザインなのかは、それなりの香港通でないとわからないかもしれない。これは香港で引っ越し用のバッグなんかによく使われていたビニールシートの柄なのだ。古き良き香港社会を感じさせるノスタルジックなアイテムだからか、この柄は香港らしさを表す意匠として、近年でも色々なローカルな商品のデザインに用いられている。

香港のインディーズバンド、My Little Airportのアルバムジャケットのデザインにも効果的に織り込まれていた(→こんな香港に誰がした: MLAと郷愁)。

そんな香港らしいカラーをあしらったカメラであることに加えて、値段もそこそこお手頃(5400円+税)だったので、発売されてすぐに、はじめてのフィルムカメラとして購入してみたのだ。

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詳細なスペックは上の記事を参照していただくとして、露出もピントも固定なので細かい調整はできないけど、逆に言えば「写ルンです」みたいに細かいことを考えずにシャッターを切ればいいだけのカメラなので、写真に詳しくない人にはむしろ気楽でいいんじゃないだろうか。もちろん1回切りで使い捨ての「写ルンです」とは違って、フィルムを入れ替えて繰り返し使える。

ボディは、レンズまで含めてプラスチック製で、電気を使わないのでバッテリーなどもなく(フラッシュ機能を使う場合のみ単4電池1本が必要)、非常に軽い。少し厚みがあるのでポケットに入れるのは厳しいけど、出かける時にカバンにちょっと入れておく分には全然気にならないサイズ感&重量感だと思う。

上面や背面のデザインはコダックの似たようなカメラ「M35」とほぼ同じだから、OEMかなんかなんだろうか(その割になぜか絞りだけ微妙に違う)。

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「M35」についてはレビューや使い方の解説記事も複数出ているので、使い勝手や、フィルムを装填してから撮るまでの手順は、そういった記事をみるとわかりやすいんじゃないかと思う。私も使い始める時には↓の記事を参考にした(Escura snaps 35自体にも簡単な使い方ガイドはついてくる)。

購入してからフィルム2本分、近所を中心にパシャパシャと撮ってみた。使ったフィルムは、富士フイルムのSuperia Premium 400とコダックのUltraMAX 400(露出固定なので、ISO400の感度のフィルムの使用が推奨されている)。

以下、それぞれの写真をいくつか載せておくので、もし購入を検討されている方がいたら、「フィルム初心者でもこんな感じに撮れるよ」というイメージとして見ていただけるとうれしいです。

作例1:FUJIFILM Superia Premium 400

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作例2:Kodak UltraMAX 400

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撮影に電気をまったく使わないプラスチック製の軽いカメラで、撮っている最中は「本当にこれで写真が撮れているのだろうか」と不安だったけど、現像から帰ってくるとちゃんと撮れていて、当たり前なんだけど新鮮な気持ちだった。

「ちゃんと撮れているだろうか」とドキドキする時間も含めて、撮った結果がすぐ見られるスマホやデジカメとは違って、しっかりと写った画像を見た時の感動は段違いで、フィルムにはまる若い人が増えているという話も納得だった。

よくみると画像周辺部はぼんやりしているけど、これも今時の写真とは違う味があって悪くないと思う。

* * *

アナログのフィルムは、いくら一部でブームになっているとはいえ、かなりの斜陽産業であることは間違いない。最近ではどんどん廃盤になって種類も減っているし、フィルム自体の値段も現像代も値上げが相次いでいる。

でもフィルム産業がどんどん縮小している現象は、裏を返せば、まだフィルムが家電量販店などで普通に販売されていて、そこそこの値段(現像代も含めて1本2000円程度)で楽しめている今は、実はフィルム写真に挑戦してみるには最適な時代だということでもあるんじゃないだろうか。

わたしも「やっぱり高いし」と尻込みしていたけど、これからフィルムの値段が下がることはきっとないだろうし、もうあと何年かしたら値段ももっとプレミアムになり、もっと手を出しづらくなっているかもしれない。それどころか、そもそもフィルムを買う場所も、あるいは撮ったフィルムを現像してくれる場所も、簡単には見つからなくなっているかもしれない。

だからもしフィルム写真にちょっとでも興味のある人がいたら、むしろ今が一番のチャンス、そして最後のチャンスだと思うから、ぜひ挑戦してみてほしいんだ。

今回わたしが購入した「Escura snaps 35」は、手軽にフィルム写真をはじめてみたいけど写ルンですやM35ではデザインがちょっと……という人にはぜひおすすめしたいカメラだと思う。そしてもちろんこの柄に思い入れのある香港好きにも。

いつかまた香港に行けるようになったら、このカメラも持っていこうかな。

いつになるかわからないけど、そんな日が早く来てほしい。

フィルムも、「香港」も、まだなくならないうちに。




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