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見る場所を見る——鳥取映画小史⑤

2022年1月24日(月)〜1月30日(日)にかけて、ギャラリーそらで行う展覧会「イラストで見る、鳥取市内の映画館&レンタルビデオショップ史」の解説文(会場に設置予定)を、5回に分けて掲載します。

第1章「劇場と活動写真(1898〜1936)
第2章「戦争・災害からの復興(1937〜1958)
第3章「テレビの登場と自主上映ブーム(1959〜1982)
第4章「映画とビデオ(1983〜2000)

第5章 映画とインターネット(2001〜2022)

 1990年代後半から2000年代初頭にかけて個人経営のビデオレンタル店の閉業が相次ぎ、代わって全国展開する大手チェーンのTSUTAYA、ローカルチェーンのブイレックス21Vパークジャムなどが台頭しました。いずれも広い敷地面積と豊富な品揃えを持ち、また書籍やテレビゲーム、家電、リユース品なども販売する複合型の店舗運営を行うところに特徴があります。各店は旧作レンタルやまとめ借りの価格を大幅に引き下げ、熾烈な競争を繰り広げました。

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ブイレックス21 鳥取店
(2012年10月/Google ストリートビューのタイムマシン機能を使用)

 大手レンタルチェーンの店舗は一見、外観も品揃えも似たり寄ったりで多様性が乏しいように思えますが、大量のビデオの中から自分の見たい作品を選べるという意味では、多様性があるとも言えます。全国どこに居ても同じ作品を見ることができ、また高度な商品・顧客管理システムを駆使したレコメンド機能によって、品揃えが膨大でも迷わず作品を選べるという映画視聴体験は、やがて来るインターネット時代の先ぶれであったとも見做せるでしょう。

 2006(平成18)年10月にフェイドインが惜しまれつつも閉館し、鳥取市内の映画館は、同じ有限会社世界館が経営する鳥取東映シネマだけになりました。鳥取東映シネマは2006(平成18)年11月に鳥取シネマへと改称し、現在も営業を続けています。『ドラえもん』や『名探偵コナン』シリーズなどのアニメ映画の他、社会現象ともなった『君の名は。』や『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に多くの観客が集まりました。

鳥取シネマweb

鳥取シネマ
(2019年5月頃)

 フェイドイン閉館と同時期には、ネット上でYouTubeニコニコ動画が産声を上げていました。2010年代に入るとNetflixAmazonプライム・ビデオHuluなどが登場し、ついにオンラインで映画を見る時代が到来。映画館以上に打撃を受けたのがレンタルビデオ店で、2015年頃にはTSUTAYAをはじめ市内のほぼすべての店舗が閉店し、残るはゲオ鳥取安長店鳥取立川店のみとなりました。ゲオは積極的な出店戦略と地域のニーズに応えるリユース品販売で事業を拡大し、動画配信を利用しない人々の映画視聴を支えています。

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ゲオ 鳥取雲山店
2018年5月に閉店し、代わって立川店が開店した。
(2017年8月/Google ストリートビューのタイムマシン機能を使用)

 ビデオが普及し、動画配信サービスが主流になっても、自主上映活動が途絶えることはありませんでした。ソフト化も配信もされていない作品を求めて、あるいは大スクリーンでの鑑賞や、誰かと「共に見る」体験を求めて、様々な団体が現在も活動を続けています。鳥取コミュニティシネマクララとクロダのひょっこりシネマすみおれアーカイブスまちなかミニミニ映画館——見るための場所やメディアが目まぐるしく変わっても、「映画を見る」という営み自体は今後も長く続いていくのでしょう。(終)



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