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インターネットの分断、お金、未来

2022年11月のJPNIC News & Views にコラムを書かせてもらった。

https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/2022/vol1959.html#column

なんとなくこっちにも転載しつつ、追記説明も書いておく。

コラムに書いた内容

4年ほど前、無職でわりと暇だった。
航空チケットアプリを眺めていたら、香港行きの片道チケットが1万円で売っていた。
衝動買いして、ホテルも成田空港に着いてから宿泊アプリで予約。
現地での翻訳等も、スマホがあればたいていのことはなんとかなった。
ちょうど香港から中国本土に高速鉄道が開通したばかり。
その予約も決済もスマホからできた。
香港側の駅で入国手続きを済ませて、15分で中国本土の深センに到着。ところが、予約していたホテルにチェックインしようと思ったら、日本のクレジットカードは使えなかった。
仕方がないので別のホテルを予約しようと思ったら、グレートファイアウォールのおかげで、中国本土ではいつも使っていたサービスが全然使えない。
もちろん地図も翻訳も使えない。自前VPNをさくらインターネットのVPSで作ってファイアウォールを越えることで、なんとか宿を確保できたけど、インターネットサービスが使えなくなると本当に困るんだなあ、ということ
を肌感覚で実感する羽目になった。
背筋がひやりとしたよ。

その後、ミャンマーでのお仕事に関わることになったんだけど、2021年の2月に、またまたひやりとする事件に遭遇。
現地でクーデターが発生、初日はインターネットが全面停止。スマホのデータ通信がまったく使えなくなったり、毎晩インターネットが使えなくなったり、通信速度がとても遅くなったり。
スマホが使えない状態で歯医者に行く羽目になったときは、本当にしびれた。

インターネットを止める側にも、それなりに言い分はあるんだとは思うよ。
情報統制をすることが善いことだと本気で思っている人もいる。
嘘の情報やデマ情報もインターネットに溢れてきていて、本当に必要な情報がインターネットから手に入りにくくなってきてしまっている感覚もある。
変なことは、気軽にインターネット上に書けなくなってきてしまったしね。

インターネットは善意で成り立っていると信じたいけど、地獄への道は善意で舗装されている、という話もある。
だんだん地獄みたいな世の中になってきたのか、そもそも地獄だってことに気付くようになっただけなのか。
でも地獄の沙汰も金次第?
ほとんどすべての戦争は経済的原因で発生しているわけで、お金はとても大事だ。

最初にインターネットがお金を産み出すようになったのは、DNSによるドメインビジネスだと思う。
そのお金のおかげで、インターネットの自治がうまく回るようになった。
その次の錬金術はウェブ広告。
欲しいものが必要にな人に届きやすくなり、生活は便利になり、プラットフォーム提供者が力を持つようになった。
最新の錬金術は暗号通貨。
ブロックチェーンという新しい技術により、世の中はどう変わっていくんだろう。
Web3というバズワードが流行ってるけど、それはうまくいくんだろうか?

2022年11月21日から30日にかけて、Internet Week 2022というイベントが開催される。
その中で、Web3やインターネット広告のセッションも予定されている。
8月末にミャンマーのお仕事を辞めて暇になったので、今年は久しぶりにその辺のプログラム作りに関わらせてもらった。
今回はオンラインだけでなく、現地でのオフライン開催も行われる。気が向いたら、時代の空気を感じにふらりと聞きに行くと良いと思うよ。
インターネットで世の中はとても便利になったけど、リアルに人と会ったり体験したり、ということの価値は全然下がってないと思うんだ。
個人的には、今年いっぱいは、リアルで楽しい人と会うという活動を、最優先にしたいと思っている。
私も多分InternetWeekの会場にいると思うので、気軽に呼びだしてくださいませ。
一緒にお茶でもしながら、未来を肴に雑談しましょう。

■筆者略歴

佐々木 健 (ささき けん)

2022年9月にミャンマーから帰国。今年いっぱいは麻雀や温泉めぐりを楽しみつつのんびりする予定。趣味はバイオリン演奏と将棋。おっさんとしてレンタルされるようになってから7年目に突入。Internet Week 2022プログラム委員。

そもそもなんで書くことになったのか?

JPNICというのは日本のインターネットアドレスを管理したりしてる組織で、インターネットに関わるお仕事をしてると、いろいろお世話になることも多い。
そこに勤務するお姉さんに、メールマガジンのコラムを書いてもらえないかしら、難しそうなら断わっても良いですよ、と言われたのよね。
断わっても良い、というのは、断わったらわかってるよね、と同義な気がしたんだよね。
そしてバックナンバーを見ると、いろいろな人がいろいろな事を書いてるので、まあなんか適当に書けば許してもらえるかな、と思ったんだよ。

https://www.nic.ad.jp/ja/mailmagazine/backnumber/column/

なぜ無職だったのか

DMMをだいぶ前に退職しました、という記事にもちょっとだけ書いたけど、会社都合で退職させてもらったこともあり失業給付金がもらいつつのんびり生活してた時期があったんだよ。

コロナ前だったこともあり、貧乏旅行とかを楽しんでたんだよね。
どんなことをしてたかは2019年の振り返りに書いた

グレートファイアウォールは必要なのか

中国側の立場だと、国外からずっと攻撃され続けているし、情報戦に負け続けているから、それを防御をする仕組みは絶対必要だと思わざる得ないのかもしれないのよね。
中国セキュリティ機器メーカーもそういうデータを出している。
さらに情報統制をしないと政治的混乱が生じてしまう、と本気で思っている人々もいる。
なので為政者がグレートファイアウォールを使って通信コントロールをしたい気持ちもわからんでもないんだよ。
ただ利用者としては本当に不便。
GoogleやFacebookやWikipediaが見れないのは予想以上につらい。
VPNサービスを使えばある程度は利用できるんだけど、グレートファイアウォール側で対策が行われて、今まで使えていたVPNサービスが使えなくなったりすることもあるらしい。
学生が頑張って作っていたVPNソフトウェアが突然非公開になったり、いろいろ面白いこともあったけど、中国の若いエンジニアは国外のサービスやコンテンツを見たくてとても頑張っているらしいんだよね。
どういうコンテンツが人気かというと、まあそういうものらしい。
そういう話をする勉強会を数年前に何回かやったけど本当に楽しかったなあ。

ちなみに日本の携帯キャリアのローミングサービスを使えば中国国内でも問題なく日本と同じようにインターネットサービスが利用できるので、一般の旅行客は過度に心配する必要はないよ。

ミャンマーでのお仕事等

ミャンマーで何をしてたの、と良く聞かれる。
神戸でやったJANOG44のときに、第一旭でラーメンを食べてたら、きびしいおじさんに拉致られて、ODA(政府開発援助)事業の、通信キャリア向けシステム更新のお手伝いをしてたんだ。
OpenStackやNTPサーバをいじったりしてた。

ミャンマーは気候が良くてご飯も美味しいし、ミャンマー人は勤勉で良い人だし、最初はとても楽しかった。
ただコロナで渡航ができなくなったり、クーデターになったりと、とても厳しい展開になってしまったのよ。

ミャンマーでのお仕事関連で書いた記事はこのへんかな。

ドメインビジネスとインターネットガバナンス

インターネットサービスに利用するための独自ドメインを取得したり維持したりするにはお金がかかる。
独自ドメインは大量に発行されていて、そのお金が集まると莫大な金額になるんだけど、その元締め的なポジションにいるのが、ICANNという組織だ。
そのお金はインターネットの運営に有効に使われている(と思う)。
沢山お金があればそれはそれで面倒臭いことも沢山あるわけで、今の形になるまではいろいろ紆余曲折はあったし、これからもいろいろあるんだろうなあ。

ICANNがどんな組織か、というのはJPNICの説明がいちばんわかりやすいかな。

ICANNが出しているアナウンスも日本語で読める。翻訳している方々に感謝。

ウェブ広告の良いところと現状の課題

一般的な広告は不特定多数に向けて商品情報を発信してるだけど、その商品が必要がじゃない人にとっては無駄な情報だった。
それに対して、ウェブ広告では、クッキー等を用いてユーザーの行動を把握することによって、そのユーザーが必要な勝因の情報を的確に流すことができる。
必要な人に必要な情報が届けられるようになり、時間の無駄が減って、商品提供者もユーザーも幸せになった。
ただユーザーからすると、行動を把握されるのはなんか気持ち悪いよね。
そして、その広告の仕組みを提供する事業者が力を持ちすぎてるんじゃないか、という話も出てきた。
そこで、ウェブ広告の仕組みについていろいろ規制をすべきだ、みたいな話が盛り上がってるんだけど、規制により失なわれてしまうものもあるんだよ。
その辺の話は裏側の技術をちゃんと理解していないとズレた結論になってしまう。
Internet Week 2022で、そのへんをみんなで考えようよ、ということで企画したので、みんな聴きに来て欲しいなあ。

C61 インターネット広告の羅針盤〜 Post Cookie、嵐の時代
https://www.nic.ad.jp/iw2022/program/c61/

Web3?なにそれおいしいの?

4年ほど前に、ブロックチェーン界隈はとても盛り上がってて楽しそうだったんだよね。
いいなあ、と横目に見てたんだけど、ミャンマーのお仕事とかで忙しくて、全然ウォッチできてなかったんだ。
Web3というバズワードもちゃんと追いかけきれてなかった。
9月頭に帰国してちょっと暇になったので、ちゃんと勉強するか、とりあえず詳しい人とご飯を食べよう、と思っていろいろな人にコンタクトを取ってみたんだよ。

最初に会ったのは昔タイムインターメディアというところで働いていた頃、背中合わせの席にいた小宮山さん。
その頃は、休み時間にずっと数学の本を読んでたり、どんな言語でも3日あれば書けるよと言いながら実際に書いてみせてくれたりしてた。
やばい人だなあ、と思いつつ、いつも楽しく雑談させてもらってた。
そういえばビットフライヤーでブロックチェーンいじってたはずだよなあ、と思って会っていろいろ話をしてみたんだけど、久しぶりに会ってもやっぱりとても面白かったのよ。

DMM時代にブロックチェーンについていろいろ話をさせてもらった加嵜さんに篠原さんにも久しぶりに会った。
篠原さんは、相変らずクールな外見だったけど、話をすると全然クールじゃないんだよね。
熱い技術者魂を感じて話をすると本当に楽しい。
加嵜さんはちょっと前に入院をしたりしててかなり心配してたんだけど会ってみたら元気そうで本当に安心した。
そして未来を変えてやるぞ、みたいな狂気は変わってなかった。
この2人が書いた本もなんとなく貼っておく。

いろいろ話を聞いてると、ブロックチェーンはやっぱり面白いんだけど、現状の課題のようなものも見えてきた。
Web3についてのモヤモヤ感もちょっとだけ晴れてきた感じはあった。

そういう情報を共有したいなあ、と思って、Internet Weekのセッションを企画したので、興味があれば聴きに来て欲しい。

Web3の羅針盤
https://www.nic.ad.jp/iw2022/program/c71/

5年ぐらい前に加嵜さんと篠原さんに、ブロックチェーンを理解するにはまずウェブに公開されているSFCの斉藤賢爾先生の講義を見ると良い、と言われたのよね。
残念なことにその講義は今は非公開になってしまってるけど、その斉藤先生と一緒にやっていた阿部さんにも登壇をお願いすることもできた。
登壇者が技術畑ばかりになってしまうと、一般人が聴くにはツライ感じになってしまう気がしたので、バズワードをそれっぽく語ることに長けた横田さん(通称よこたん)にも登壇をお願いした。
いつも巻きこんで本当にすまん。
前に巻きこんだマストドンネタのときの記事をなんとなく貼っておく。
今回はスベらないといいねえ。

発表者コラム: 2017年日本のマストドン
https://www.janog.gr.jp/meeting/janog40/newsletter/newsletter-13

おっさんレンタルの話

8月ぐらいにおっさんレンタルについて取材された記事がバズってた。
この記事を書いてくれた千絵ノムラは良く行く渋谷のバーで水曜日に店長をやっている。
面白いので飲みに行くと良いよ。

そういえば過去にこんな記事も書いてたな。いちおう載せておく。

ということで、なにかあれば気軽にレンタルでもしてくださいな〜

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