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理想の父は存在しない(続き)

こちらは 『殴らなくなった父との散歩』 の続き。


「もう理想のお父さんは存在しないことを認めましょう。」

どういうことか、聞いた瞬間では理解できなかった。

「ずっと認めて欲しかったでしょう。
殴るのをやめて欲しかったでしょう。
でも、してもらえなかったでしょう。
あなたの頭の中で描く理想のお父さんは、存在しないの。」
「もうここまで変わらなかった人間は変わらない。
だから諦めるしかないの。」
「あなたの理想のお父さんは、あなたの頭の中にしかいない。
現実には存在しないのよ。」

まさに雷が落ちたようだった。

何が起こっているんだろう。先生は私の初めての理解者でしょう。
それなのに、急に今度は諦めなさいって、どういうこと?

先生の言葉が頭の中でグルグルした。
何周も何周も回って、しばらく何処かに行ってしまったような時間が過ぎて思った。

本当だ。先生いのいう通りだ。
父は変わらなかったし、これからもきっと変わらないだろう。
いつかは父さんに理解してもらいたい、私の望む方法で。と思い続けて
抵抗し続けてきたけど、そうか。私の理想の父さんは存在しないんだ。
私の頭の中だけで描いていたんだ。


ぼーっとした。

たくさんたくさん悔しい思いをして、痛いのを我慢して、嫌いだと怒りを膨らませて、許せないを溜め込んで生きてきた。

いつかは父さんに分かってもらいたかったから。
でもそんな父さんは存在しないんだ。

諦めるっていう発想がなかった。
その日を境に理想の父を頭の中で描き続けて、嫌うことがなくなった。


革命的な気づき

自分が追い求めていたものが存在しないこと。
そして「許せない」に隠れていたのは「分かって欲しい」という気持ち。
「分かって欲しい」は「認めてほしい」
「認めて欲しい」は「愛してほしい」
大嫌いな父さんに愛して欲しいと願っていたことにも気づいてしまったのだ。

その時になってようやく、友人が言った
「めちゃくちゃ父さん大好きコンプレックスじゃん」に納得がいったのだった。

人の感情は段階的な層になっていて、本音の本音は何重にも他の感情を着てカバーしている。だから、少しめくっただけでは本音は見えない。
本人も気づいていないのだから。
ただ、怒りはすごく表面的な位置にある感情で、層でいうと浅い部分。
最も表面にいるのは理由があって、奥に隠したい感情を守っているからだと。奥にある感情を表に出したら崩壊してしまいそうな精神を守っているので最初に「怒り」の盾として出現してくれるのだと知った。


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