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春になったら靴を変えたいと思ってお出かけしたけど、カレー食べて帰ってきただけで終わったんです。

なんだか、つまらない日々が続いているような気がしている。

季節の終わりはいつもそうだ。なんだかつまらないと思ってしまう。長く続く冬に飽き飽きしている自分がいるのかもしれない。

四季がある日本に生まれてよかったなぁと心から思う。あまりの飽きっぽさに自分でも呆れるけど、世間の空気感が変わるだけで、肌を撫ぜる空気が変わるだけで、ウキウキしてしまう自分がいたりする。

新しい季節に胸躍らせる時、たかだか三ヶ月程度しか一緒にいなかった季節に別れを告げることを心から楽しみにしているのだ。名残惜しさもなく、切なさもなく、目の前の季節を楽しみにしている。きっとそれすらも二ヶ月程度過ぎてしまえば飽きるというのに、全くわがままなものだ。

私は一体、何を楽しみにしているのだろうかと、思考を巡らせる。

そこで私はふと気づくのだ。
福田。嫌、よう福田。
誰だよ、福田。

そうじゃない。服だ。私は、衣替えを楽しみにしているのだ。もう、もこもこの服にそろそろ飽きてきているのだ。
ニットに飽きて、薄手のシャツを着たい。
ショートブーツを脱いで、パンプスを履きたい。

コートを脱いで春の装いになり、そして足元に新しい靴を履いてかかとを三つ鳴らせば、別の世界に飛んでいけるかもしれない。

そんな期待を抱いて、私は靴を買いに行くことにした。
三月も中旬を過ぎれば仕事は忙しくなる。落ち着きを取り戻す四月の終わりまでは、容易に休みを取ることは難しくなるだろう。今しかない。チャンスはいまだ。
春に向けての準備を私はするのだ。

ということで、午後からお休みをいただき、私は街へと繰り出した。

まずは腹ごしらえ。腹が減っては戦はできぬ。これは戦である。世はまさに戦国時代。食うか食われるか。私は食うのだ。ずっと食べたかったカレーを。

訪れたお店は106サウスインディアン天神店。

博多華丸・大吉が推しているカレー屋さん。
福岡市中央区天神の中心部にある警固神社近くにあるドンキホーテの一本裏側の通りにあるカレー屋さん。いくつかの飲食店が入っている建物の一番奥にお店はあった。

初来店なので、一番人気のバターチキンカレーを食べることにした。ナンとご飯のセット。飲み物はマンゴーラッシー。

南インドカレーのお店。がっつりクセ強のカレーと思いきや、食べやすくてめちゃくちゃ美味しかった。バターのこくとスパイスのかおり、チキンの旨みがギュッと凝縮されたカレー。ナンでもご飯でも合う。一緒についてきた謎のパリパリしたやつともめちゃくちゃ合う。

店内は落ち着いた内装で、ゆったりとした雰囲気。ゆっくりと食事をいただける。ご飯とナンのハーフ&ハーフなのに、どちらもがっつり量があって、かなり満腹。タンドリーチキンもおすすめらしいので、次回はぜひそちらも食べてみたい。他にも美味しそうなカレーがいっぱいあって、色々食べてみたいなと思った。

私がゆったりとした雰囲気で食事を楽しんでいる中、隣から何やら熱い会話が聞こえてくる。
聞いてはいけないと思いつつ、こちらは一人ランチなので、どうしても耳をそば立てて聞いてしまう。

こっちは暇なのよ。どれどれ? ねえ、なんのお話ししてるの?

と聞き耳と立ててはみたものの、私にはなんの話か分からなかった。同じ日本語を操る者たちの会話とは思えないほどに私には理解不能な会話が繰り広げられている。

一人の男性が、ものすごく大量のカタカナを使って話をしている。彼はカタカナマスターである。カタカナの魔術師。それはもはや、ルー大柴である。もしかするともう一人の男性に何かを売りたいのだろうか。チラリと横に目をやると、もう一人の男性は丁寧に話を聞いている様子だ。私もそれを真剣に聞いているが、なんのこっちゃわからない。かろうじてわかったのは仮想通貨の話か何かだろうということだった。

世間ではこんなに難しい会話が行われているのかと思うほどに、私には理解ができなかった。本当は、食事をしながら本でも読もうと思っていたのだが、あまりに理解不能な会話すぎて、単語をググることを続けた30分だった。

そんなこんなで、美味しい食事を終えて、マンゴーラッシーまでいただいて満足して店をでた。

せっかくなので綺麗になった警固神社でお参りをして行こうと思い、警固神社を参拝。いつも思うけど、みんなお参りする時、何かお願い事をするんだろうか。私はお願い事が思いつかないので、「こんにちは」とだけ一言心の中で挨拶をして終わってしまう。夫と神社に行くと、彼は長い間頭を下げているので、きっと神様と対話をしているのだろう。何をお願いしたのかは聞いちゃいけないことなのだろうと勝手に思っているので質問したことがない。なので、みんながどんなことをお願いしたのかを確認するすべがないが、実のところいつも気になっている。

せっかくなのでおみくじも引く。

末吉。年始も末吉だったし、きっと今年は何回引いても末吉なんだろうなと思った。末吉シーズン到来。

おみくじって不思議なもんで、大吉ばっかり引く時は大吉ばっかり引いていた。その時はメンタルが落ちてた時だったから、大吉を引くたびに、大吉は神様からのプレゼントだと思っていた。神様が大丈夫だよって言ってくれているような気がして、大吉を引きたくて神社に行っていた気がする。

今は特にメンタルも落ちていないし、おみくじで何を引こうが正直あんまり気にしてない。なので、言い方が悪いが、末吉だろうがなんだろうがどうでもいい。むしろ何が書いてあるかが大事だと思っていて、案外、このメッセージが心に刺さったりする。私は戒めとしておみくじを引いているような節さえある気がした。

おみくじを引いた後は、とりあえず天神を練り歩いた。
天神は現在、天神ビックバンというプロジェクトが進行中であり、私が遊びに行っていた若い頃の天神とは少し様相が違う。建物が建て替わり続けているのだ。

福岡市は空港が市街地に隣接しており、航空法の高さ規制で高い建物が建てられないだとかなんちゃらで、福岡市中心部の天神や博多の建物が老朽化していた。そこで天神ビックバンだとか博多コネクティッドだとかで建物の容積を緩和して、ビルを建て替えしちゃって、企業を誘致して行こうみたいなことが行われているっぽい。

ということで、久々に買い物しようにも、どこに店があるのかがよくわからない。それに若い頃行っていたお店の服や靴を今でも着たいわけでも履きたいわけ
でもないし、久々に天神で買い物をするというのは、なかなか難儀だった。どこに行けばいいのか正直なところ、わからない。

子どもが生まれてからというもの、息子たちを遊ばせて、ご飯も食べれて、買い物もできる場所ということで、いつも郊外のイオンに出かけて行き全てを終わらせていた身としては、天神というのは、飲食店を除き全く未知の世界になってしまっていた。

仕方なしにぐるぐる歩き回って、可愛い靴がある!と思って試着しようと思ったが、その日履いていたのが五本指ソックスと靴下の二枚履きという、かなり厚手の仕様になっていたため、私は試着を諦めて、靴をそっと棚に置いた。

靴下脱いで履けばいいやんと思わなくもなかったが、手に取った靴の値段を見て、そっと棚に返したということは秘密にしておく。基本的にプチプラが大好きなので、高級なものは買いたくないのだ。

じゃあ、最初からプチプラで買えばいいやん、って突っ込みたくなるところだが、靴はやっぱり足にあったものでなければいかん。疲れる。ということで、靴を買いに街に出たのに、靴を買わずに帰ってきた。

安いのがいいのか高いのがいいのか、正直なところ自分でもよくわかっていない。できれば安くて履きやすいやつが欲しい。というのが、本音だ。

私はドロシーにはなれないのね、なんて思いながら、ショートブーツのかかとを三回鳴らして、駐輪場に自転車を取りに行き、駐輪場代を百円払って家に帰ってきた。

そして私はいそいそと鍋の用意をする。
ODENだ!

見てみて、おでん!ローマ字にすると母音が二つも入っているODEN!
いや、それ普通だろ福田。なんてことを考えながら、鍋を温めた。ぐつぐつと煮えたぎる鍋にはんぺんを投入する。

はんぺんって白いくせに、低脂質。
なんだろう、勝手に白い食べ物って高脂質って思ってる節がある。

しかし、大根も卵も低脂質だぜ。と、お腹いっぱいいただいた。

多分、この冬最後のおでんになるだろう。

おでんを食べながら、私は思う。冬も悪くなかったなあ、と。今年は暖冬だったし、福岡においては冬があったのかなかったのかも正直よくわからない。

冬があろうと、春が来ようと、つまらない日々が続こうと、日々は続くのだ。贅沢言ってないで、今日という日を元気に過ごせたということにまず感謝せねばならなんのだと、そんなことを思った日だった。




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