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伝える前に、伝える内容を顧みよ:『論破力より伝達力 人を動かす、最強の話法』(2/2)【間違いだらけの読書備忘録(13)】
こんにちは、さらばです。
現在、以下の本について備忘録を書いています。
上念 司『論破力より伝達力 人を動かす、最強の話法』
1はこちら。
言葉が通じない相手への対処法
本書でわたしが一番面白く読ませていただいたのは、最終第五章"言葉が通じない相手は「距離感」を見極めろ!"です。
世の中にはどんなにテクニックを駆使しても話の通じない人間がいる、というところから、そういうひとへの対処法を書いておられます。
そしてそういうひとの傾向として、このような記載があります。
仕事とプライベートを混同しがちで、社員を疑似家族のように思っている人が少なくありません。会社という疑似家族のなかで、自分が家父長になってちやほやされることで承認欲求を満たそうとしているのです。
そういうひとは、社員たちの世話を焼きたがり、よく飲みに誘い、プライベートに口を出し……といった"家族的な"行動に走ります。ですが問題はそこではないと上念さんは書きます。
ひとたび彼らの頭のなかで、「経営不振」という警戒サイレンが鳴り響くと、突然、別の人格が覚醒する。「お前ら、何やってるんだ! もっと働け!」「てめえ、結果も出さない給料ドロボーか!」と部下や社員を叱り飛ばすパワハラ野郎に変貌するのです。
これはなにもそういうひとたちが特殊な二重人格者だというわけじゃなく、単純に環境によって最優先するインセンティブが「金」と「情」の間で移り変わっていると説明されます。
業績が安定しているときは「金」を優先する必要が薄いので、「情」を求めて家族的な振る舞いをします。しかし儲からなくなってくると自分の立場を守るため「金」を求めて部下にきつく当たります。
だから別に不思議な話じゃないのですが、外から見るとこういうひとは「言葉が通じない」と思われてしまうというわけです。
そしてこういうひとを相手にするときは、相手がその時々で「金」モードにあるのか「情」モードにあるのかを見定め、距離感を測りながら付き合うのがよいとのことです。
わたしが面白いと思ったのはこの対処法のことではなく、その前の"インセンティブが「金」と「情」の間で移り変わるひとがいる"というくだりです。
心当たりしかない
前回から備忘録として書いてきた点は、わたしにとって「心当たりしかない」内容です。
会社として儲かる仕組み(大義名分)がない。
経営者が管理職に伝える努力をしない。
管理職が担当者に伝えることもできない。
業績が安定しているときは家族的な振る舞いをする管理職がいる。
そういうひとに限って、上手くいかなくなると部下のせいにする。
驚いたのは、これらが「よくある話」だというスタンスで書かれていた点です。わたしとしてはあまりに酷い話だと思っていたところがあるので、これが普通だとしたら率直に「ヤバいな日本」と思いました。
だとするともう、"論破力より伝達力"じゃなくて"伝達力より経営力"ってなもんです。
わたしが本書のそういうところにばかり惹き付けられたので、正直タイトルと中身が違う感が強いのですが、そのわりに満足度は高いというよく解らない感想になっています。
一応誤解のないよう補足すると、本書の第三章には伝えるためのテクニックの話があり、第四章には思考力の磨き方が書いてありますので、本自体が看板に偽りあり、ということじゃありません。
ただ、これらは断片的なコラムのようなもので、内容もごく基本的なものが多いと感じたため、あまり印象に残りませんでした。あくまでわたしの感想ですが、それらよりもずっと、ここまでに書いてきたことのほうが刺激的で、著者の熱の入り方が強い気がしたのです。
とりあえず、自分は言葉の通じない人間だと思われないよう、チームで仕事をするにあたって諸々気を付けようという思いを新たにしました。
なお、創作者的視点では書きたいことを見つけられませんでしたが、仕事人としては非常にピリッとさせられた一冊です。
と、いうわけで以上です。
お読みいただきありがとうございます。
さらばでした!
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