たけちゃんとよねちゃん
夕方4時。
いつも一緒に歩いてくる。
たけちゃんは80歳。近所のおばあちゃん。歳をとっている割には髪の毛は黒いんだけど、腰がすっごく曲がっている。たけちゃんにはひとつ特徴がある。たけちゃんがそばを通ると太田胃散の匂いがする。太田胃散ていうのは胃の薬って家のママが言ってたんだけどなんだか不思議な匂いなんだ。
よねちゃんも80歳。近所のおばあちゃん。髪の色はロマンスグレーっていうんだって。背筋はしゃんとしている。よねちゃんはメガネをかけていてメガネには紐みたいなのがついてる。よねちゃんがメガネを外すとネックレスみたいになるんだ。なんだかカッコいい。
2人ともいつも手には風呂敷包み。
たけちゃんはオレンジと白の風呂敷。
よねちゃんはよもぎ色と白の風呂敷。
風呂敷の中身?
なんだか気になるでしょ♪
2人の風呂敷には洗面器とシャンプーとリンスとタオルが入ってる。風呂敷包みの間からシャンプーとリンスのあたまが仲良く飛び出してるんだ。
それをたけちゃんは左手によねちゃんは右手に持って仲良く並んで歩いてくる。
歩いてる時にそんなに話はしはしていない。
2人が向かっているのは近所にある銭湯。
これは2人の毎日の日課なんだ。
ぼくの家の前を通り過ぎる。
ぼく?ぼくはこの家の犬。
ぼくはこの庭からいつも通りを見ている。
家の前はいろんな人たちが通り過ぎる。
だけどねぼくはこのおばあちゃんたちがとっても好き!
足音が聴こえてくると嬉しくなってしっぽをたくさんふっちゃうんだ♪
ぼくに気がつくとおばあちゃんたちは必ず立ち止まってぼくを見る。それでね必ずこう言うの。
たけちゃん『いってくるよ!』
よねちゃん『 いってくるよ!』
なんだかいつも微妙にズレてる。笑
そう言って手を振ってくれるから♪
ぼくも『ワンワン!』て答えるよ。
銭湯はその角を曲がってすぐのところ。
今日も気持ちよくお風呂に入れますように♪
いってらっしゃい。
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