完璧主義者の人に捧ぐ歴史|まずは行動あるのみ
世の中には時々、やたらと慎重派な人がいて、彼らは一般的に「完璧主義者」と呼ばれています。
妥協することなく仕事を完遂する姿勢を表現する言葉としては素晴らしいものですが、どちらかと言うと慎重になり過ぎて行動ができていない人に対して、ネガティブな意味合いで使われている傾向があるように思います。
僕の周りでも、若手の社員にこういった傾向がよく見られている気がします。
世の中にリリースされている商品やサービスは全て完璧なものであり、だからこそ自分が提供することになる商品やサービスも完璧なものでなければならないと強く思い、ひとつひとつの行動にプレッシャーがかかってしまい動きは鈍り、成果が上がらないまま時間だけが経過していってしまう。
そんな状況を何度も見てきました。気持ちは非常に良くわかります。
しかし、実際に世の中で多大な成果を挙げているのは、何とか間に合わせる精神で仕事を推し進めている人たちだったりします。
その象徴的な例がマイクロソフト創業者であるビル・ゲイツの仕事振りです。
1975年、電子機器企業であるMITSがインテル8080をベースにしたAltair 8800を発表しました。これは、一般消費者が購入できる初めてのパーソナルコンピュータとして知られており、その存在を高校時代の友人であるポール・アレンから聞きつけたゲイツは、この新しいコンピュータ向けのソフトウェア開発のアイデアを考案します。
MITSの社長であるエド・ロバーツに電話をかけ、「Altair用のBASICインタープリタを開発した」と書き、「御社を通じて、このソフトウェアのコピーをホビイストに販売したいと考えています」と伝えます。
しかしこの「開発した」というのは嘘で、実はまだ書き始めてもいませんでした。MITSが興味を示してくれたら書き始めればいいだろう、と考えていたのです。
MITSからの前向きな反応を受け、ゲイツとアレンは急いでBASICインタープリタの開発を始め、不眠不休で仕事を続け、この開発を何とか間に合わせます。わずか数週間でソフトウェアを完成させたのです。
そして、MITS本社をアレンが訪れてデモンストレーションを行い、公式のソフトウエアとして採択されることになりました。
この成功を受けて、ビル・ゲイツとポール・アレンはマイクロソフトを創立し、正式にソフトウェア開発のビジネスを始めることとなります。
完璧な品質の商品で世の中が成り立っているように見えても、その実情はこの様な「何とか間に合わせる」精神で物事が動いていることが多くあります。
マイクロソフトだけでなく、アップルのスティーブ・ジョブズも、製品の開発においてタイトなスケジュールを設けて、ギリギリのタイムラインで製品を完成させたことで有名です。初期のApple IIや後のMacintoshの開発は、その典型例で、あのiPhoneもこの精神のもとで開発されています。
また、任天堂のゲーム開発チームも、限られたリソースと時間の中で世界的な大ヒット作品を作り上げました。それがファミコンです。
完璧主義的な精神で慎重に物事を考えることは素晴らしいことですが、あまり慎重になり過ぎていても、こういった大胆な製品は生まれていなかったはずです。
完璧主義な傾向があり慎重になり過ぎてしまう人は、こういった何とか間に合わせる精神で何かを成し遂げた先人に学び、まずは行動あるのみ、という思想も身に付けると良いかもしれません。