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昏し、暮らし

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#随筆

駅のホームの水栓って美しいんですよ。

近頃、駅のホームにある水栓に魅せられている。どの駅でも見つかるわけではないが、探すと目立…

愉快な夜、不愉快な朝

ちょっと珍しいジンを手に入れたので、自宅に友人を呼んで家飲み。 酒を一緒に覚えた相手で、…

暮らしは虚しい

先日、街中で通りがかった普段なら決して入らないような店で、意識の高いランチを食べてみた。…

昔日のひと

テレビで加護亜依が歌ってた。綺麗な人だな、と思った。いや、言うまでもなく綺麗には決まって…

映画が見ていられない

新幹線が名古屋駅に停車する。 俺の乗る列車が停止するその隣を、別の列車がすれ違っていく。 …

場末の牛丼屋、死んだ時代を憶う

昼夜逆転を矯正しようとして、夕方過ぎに寝て深夜に起きる生活になぜかなってしまった。 朝方…

学生街の喫茶店

酒を控えるようになってから、喫茶店に行く機会が増えた。コンビニに行っても珈琲を必ず買うし、珈琲を飲むならと煙草も頻繁に吸うようになってしまって、酒を控え始めた当初に抱いた「これで金が浮くのでは」という思いは裏切られつつある。 でも、日常から酔っている時間がなくなるというのは、なんとなく気持ちいい。 酔うと必ず、自分でない自分になる。そのおかげで踏み出せる一歩もあるが、翌朝自分に戻った時の後悔も大きい。 酩酊時とシラフ時というのは空と地上みたいなもので、要は重力が違うのであり、

茶室を拵えたい

ずっと探していた引越し先が、ようやく決まりつつある。築50年の団地。 虫が出そうで嫌だと言…

選挙のたびわたしの思い出すこと

選挙のたび思い出すこと。 とある選挙があった日の夕方。出先から帰宅すると、一人きりで酒を…

花器雑感

骨董の類に、ハマりかけて、ハマらないでいる。 見るのは楽しくて仕方ないが知識が一向に蓄積…

札幌にて

札幌に来た。大阪での部屋探しが行き詰まり、昔から憧れつつ一度も訪れたことのない札幌に逃げ…

旅景、桜の木陰で泣き笑うふたり、写真雑感

和歌山と大阪の県境に山中渓という場所がある。あまり知られていないところだが、桜の名所だ。…

村上春樹とロバートアダムス、旅に出ないための

15、6のある時期、旅に憑かれていた。 半端な労働で得たなけなしの金で気の向く土地へ彷徨った…

光と

憶えている光がある。 私は高校生だった。残暑がはげしかった。 その日は昼前に登校した。田畑と、ガソリンスタンドと、国道と、ショッピングモールと、古いパチンコ屋と、一軒家のあるまちの、ゆるやかな坂の上に学校はある。 坂を自転車でのぼる。蝉が鳴き、その音がふっと止む瞬間、なにもかもから色彩を奪うようなはっきりとした暑気が立ち上るように思う。蝉が再び鳴き始めると、世界や時間は仮死状態から息を吹き返す。 坂の手前にクリーニング屋がある。その前で一人の女性が、コンクリートの地面に打ち水