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N.ニシマキ
2020年5月18日 21:57
2016年の芥川賞受賞作である。芥川賞作品にしてはポップなタイトルで文章もとっつきやすく、売上は100万部を超えた。何を描いているのか表面的なとっつきやすさとは裏腹に、個人的にどうもすっきり読み下せず、読了した後も結局何の話だったのかよくわからない。リアリティは感じるものの、解題ができないまま自分の中で数年間整理がつかない状態だったのだが。最近noteを書くモチベーションが高まっているのでこの
2020年5月16日 21:58
樋口一葉というのは、現代においてはどちらかというと偉人、歴史上の人物として扱われており、同時代の作家、例えば夏目漱石や正岡子規のような文豪と比べて、あまり読む対象として選ばれていないような感覚がある。私も恥ずかしながら通しで読んだことがなかったが、旅行中の暇つぶしで買ったロバート・キャンベル編『東京百年物語』の中に「十三夜」が収録されていたのを読んで、衝撃を受けた。文章のリズム、一晩の出来事を
2018年3月8日 23:43
本作を初めて読んだのは小学生の時だったが、今でもたまに読み返す。知的なユーモアと父譲りの詩的センス、少年的な海と外国への憧れという様々な要素が混ざり合った名作であると心から思う作品だ。この名作エッセイから読み取れるのは、北杜夫の過度なまでにシャイな性格だ。高い教養と高い文章能力を持つ北氏はしかし、それをストレートに読者にぶつけることに対して非常に臆病であり、なるべく自分の文章が貴族的、衒学的に
2018年3月7日 22:00
小学生の頃、原稿用紙にむかって漢字の書き取りをやっていると、文字が急に読めなくなるような、妙な気分になったことがあった。正式にはゲシュタルト崩壊というらしいが、文字に意味を与えるもの、つまり文字の霊というものはハッキリ見ようとすれば、たちまち姿を消して見えなくなってしまうらしい。この文字が持つ不思議な性質についての小説が、この「文字禍」である。中島敦はいうまでもなく知識人である、父の影響で幼少