山田浩司@FabLab CST

JICAの技術協力専門家として、ブータン王国に派遣され、2023年12月に帰国しました…

山田浩司@FabLab CST

JICAの技術協力専門家として、ブータン王国に派遣され、2023年12月に帰国しました。派遣先は「デジタルものづくり工房(ファブラボ)による技術教育・普及促進プロジェクト」、首都から車で4時間かかるインドとの国境の町、プンツォリンで活動していました。

最近の記事

晴れて行くメキシコ

7月12日、ファブアカデミーの卒業に当確ランプが点灯し、19日には私の名前も載っている卒業確定者リストがコーディネーターから配信されました。すでにMITニール・ガーシェンフェルド教授の署名の入った修了証書(ディプロマ)の電子コピーも添付されており、ようやく実感が湧いてきました。 6月初旬の卒業製作のプレゼンには184人が臨んだと以前noteで書きましたが、プレゼンはしたものの未だ卒業確定していない受講生も相当数います。期限までに文章化(ドキュメンテーション)が終わっていない

    • 公的支援による人材育成プログラム受講生を、確実に卒業させるには?

      ファブアカデミーネタが続いて恐縮です。 ファブアカデミーは、受講料が5,000ドルかかる、結構値の張るグローバルディプロマコースです。欧米諸国の受講者が目立つのは、その受講料の個人負担ができるか、受講料を助成するプログラムが豊富にあるからでしょう。今年の私の受講は、退職金を取り崩して捻出しました。 開発途上国では、この受講料を個人負担というわけにはいかないので、ファブファンデーションも奨学金制度は設けているし(但し、募集人数は少ない…)、途上国政府が公的助成を設けているケ

      • 全世界のファブラボの数―――そこからして疑問なのか?

        今年3月、退職する前に古巣に提出していたレポートに対し、1カ月後、2人のレビュアーからフィードバックをいただきました。古巣組織に対し批判的ととられかねない表現は削除すべきとのコメントもあり、そこもレポートの採用基準なのかと苦笑してしまいました。 ファブアカデミーの課題と格闘中だったので、いただいたコメントに基づく原稿書き直しには、2カ月以上着手できませんでした。その間、古巣からは催促もありました。7月に入ってから正式回答すると言って、待ってもらいました。 自分の主張をトー

        • 大学併設ファブスペース2カ所で働いてみて

          【近況】 ファブアカデミー卒業に向けた成績評価は、評価対象となる自分の理解度を示す課題取組み状況をすべて文章化し、ウェブサイト上で閲覧できる状態にすることです。しかも、そこで作ったデータも、ダウンロード可能な状態でアップする必要があります。これらを「ドキュメンテーション」と呼んでいます。 日本国内の評価者によるローカル評価の締切が6月末だったので、すべてのドキュメンテーションはそれまでに終える必要があります。それまでに評価者からは多くのコメントがあり、その対応も適宜行いな

        晴れて行くメキシコ

          年甲斐もなく新しいことに挑んでみて

          1月に受講開始したファブアカデミーも、ただいま最も大詰めにさしかかっています。受講登録者数約230名中、卒業制作のプレゼンに進んだのが184名でした。そろそろ、「卒業当確」がアナウンスされる生徒も出てきました。 所属ラボのインストラクターによる「ローカル評価」は全課題のクリアランスの期限が今月末となっていて、残り3日で全てのフィードバックに答えねばならないところに来ています。 ファブアカデミーでは、1月下旬から6月上旬まで、毎週水曜夜に3時間の「グローバルセッション」が英

          年甲斐もなく新しいことに挑んでみて

          学会発表でしゃべりきれなかったこと

          先週末、宇都宮大学を会場にして開かれた国際開発学会春季大会に、ラウンドテーブル「ここから始める「デジタル技術の国際開発への活用」」の登壇者の1人として出席してきました。 この学会には会員登録してからもう10年以上経ちますが、発表は積極的にはしてませんし、いつだかnoteかSSブログで述べた通り、私は研究者になる途は2020年11月に完全に諦め、退路を断って今の途に邁進してきました。 以後、「退会」も考えながらぐだぐだしていたところ、知人が「ICTと開発(ICT4D)」とい

          学会発表でしゃべりきれなかったこと

          『SFを実現する~3Dプリンタの想像力』

          本書を自分のブログで紹介するのは、これが三度目です。 最初は発刊直後の2014年6月、二度目は2019年12月、そして今回と、だいたい5年間隔で読み直しています。いずれの時期も、自分自身のデジタルファブリケーションとの向き合い方が節目を迎え、立ち位置を今一度確認しようと考えて読みました。(1回目に関しては、多分に刊行記念のご祝儀的意味もあったかもしれません。) 今回読み直すことにした理由は、著者も15年近く前に受講されたと他の著書で語っておられる「ファブアカデミー」を私も

          『SFを実現する~3Dプリンタの想像力』

          noteでこれから書いていくこと

          ファブアカデミーの苦行も間もなく終わる 年明け1月中旬から受講開始したデジタルものづくりのグローバルディプロマコース「ファブアカデミー(Fab Academy)」も、約5カ月にわたる「特訓」を受け、ようやく卒業制作の発表を迎えるところまでたどり着くことができました。全世界で230人ぐらいが受講し、卒業制作の発表に臨む生徒は183人だそうです。 この間、課題取組みに毎週30~40時間を投入し、それでもクリアできない難題。文系の、しかも還暦過ぎたオジサンには理解が難しい電子回

          noteでこれから書いていくこと

          クリアな容器の造形

          はじめに~新しい職場での私の仕事 新しい職場は工芸関係の大学のプロトタイピングルームです。私はそこで運営スタッフとして今月から働いています。勤務開始からちょうど2週間が経過しましたが、この間に把握できた仕事をざっと列挙すると… ①工作機械の日々のメンテナンス、清掃 ②利用者が必要とする原材料や備品の在庫管理 ③利用者から寄せられる3Dプリント出力依頼への対応 ④機械やCADソフトの操作法に関する利用者への助言 ⑤造形方法に関する利用者への助言 ⑥来訪者への施設概要説明

          クリアな容器の造形

          これは面白い!成型鋳造の世界

          私が今年のファブアカデミーを受講開始してから3カ月が経とうとしています。できれば毎週取り組んでいて英語でのドキュメンテーションにまとめている内容を、日本語にして逐次レポートしたかったのですが、あまりにも毎週のアサインメントがきついので、とても紹介できません。過去にnoteでそれをやろうとした先輩方の手記をたまに見かけたりもしますが、たいていの場合1回アップしてあとが続かない形で終わっています。 なんとか卒業までこぎつけることができたら、その時にはnoteで回顧録を書いてみる

          これは面白い!成型鋳造の世界

          早期退職、次のステージへ

          1993年2月からお世話になっていた会社を、今月末で退職します。1年前まではこれに「定年」という枕詞も付けていましたが、去年7月の私の誕生日に、会社から突然「定年延長」のアナウンスがありました。今後どうしたいのか意向調査も実施されましたが、「退職」の意向は変えませんでした。 社会人採用で採ってもらって、それでも勤続31年2カ月もいさせていただいたことになります。うち15年7カ月は海外駐在、8年6カ月を東京・市ヶ谷の調査研究部門で過ごしてきたため、本社ビルでの勤務は通算でも6

          早期退職、次のステージへ

          帰国後1カ月半、取り組んできたこと

          昨年12月17日に帰国して、その時点ですでに書きかけだった記事を1本仕上げてアップしたあとは、とんとご無沙汰しておりました。日曜日の帰国でしたが、翌日から次の職場に出頭し、そのまま次の仕事に突入しました。 とはいっても年度末の退職を控えての仮の居場所なので、雇う方もあまり長期的なタスクを僕に振るわけにいかないし、雇われる私はそれに不満があるわけではありません。今月からは未消化の有給休暇を使いはじめています。すでに作業には着手したものの、まだ終わっていない活動もいくつかあるの

          帰国後1カ月半、取り組んできたこと

          【雑感】ブータンにおける学生起業の難点

          王立ブータン大学(RUB)傘下の単科大学は9校あります。そのうち、科学技術大学(CST)、ゲドゥ商科大学(GCBS)、自然資源大学(CNR)、シェラブツェ大学の4校には、学生起業を促進するためのビジネスインキュベーション施設があります。 どこの国際協力機関が開設支援をしたのかは申しません。ハコ(箱)は大学側の提供で、①ワークステーション整備(PC、デスク、ネット環境)、②インキュベーションマネージャー傭上は国際協力機関の資金供与で行われたと聞きます。ハコの提供は大学側による

          【雑感】ブータンにおける学生起業の難点

          ブータンを離れる日の朝

          任地であったプンツォリンの住居を引き払って、今首都ティンプーに来ています。この記事を書きはじめた時点ではブータン出発2日前の朝ですが、公開自体は首都を出てパロ空港に向かう直前に行うことになるでしょう。 今、首都は12月17日(日)に迫った建国記念日を前に、大変な浮かれムードです。外国から大勢の億万長者が招待されているそうで、インフラ整備が急ピッチで進められています。私が首都入りした11日(月)はティンプーに入って来るバベサ地区の国道が舗装作業のために車線規制されていて、渋滞

          ブータンを離れる日の朝

          プロジェクトへの自己評価(2)

          前回、「プロジェクトへの自己評価(1)」という記事を書いた時、私はまだ、JICAに提出するよう求められている「プロジェクト業務完了報告書」のうち、第Ⅲ章までしか書いていませんでした。 第Ⅳ章が未執筆のまま残っていたのですが、ここはプロジェクトの達成した目標が、ログフレーム上の「上位目標」に到達するための条件を論じた箇所です。さすがに、雇われ専門家の身としては、「プロジェクト目標」の達成には責任は終えるけれど、「上位目標」となるといろいろ条件がつき、私自身では責任が負えないと

          プロジェクトへの自己評価(2)

          グサッと刺さった知人のひと言~「地域開発協力コーディネーター」の私的実践

          離任の日を前にして、プンツォリンで知人と最後の昼食をご一緒していて、「あなたがファブラボCSTにいたから相談を持って行けたけれど、離任したら、私はCSTには相談を持って行かない」と言われました。続けて、この方は、「日本は気楽に相談に応じてくれる開発パートナーじゃない。必要なら自分は他の援助機関に相談に行く」とまでおっしゃっていました。 私にとっては聞き捨てならない発言だったのですが、CSTのお役所ぶりを見ていたら彼の言いたいことはわかるし、彼が指摘していた「日本の仕事のやり

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          グサッと刺さった知人のひと言~「地域開発協力コーディネーター」の私的実践

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