山田浩司@FabLab CST

JICAの技術協力専門家として、ブータン王国に派遣され、2023年12月に帰国しました…

山田浩司@FabLab CST

JICAの技術協力専門家として、ブータン王国に派遣され、2023年12月に帰国しました。派遣先は「デジタルものづくり工房(ファブラボ)による技術教育・普及促進プロジェクト」、首都から車で4時間かかるインドとの国境の町、プンツォリンで活動していました。

最近の記事

帰国後1カ月半、取り組んできたこと

昨年12月17日に帰国して、その時点ですでに書きかけだった記事を1本仕上げてアップしたあとは、とんとご無沙汰しておりました。日曜日の帰国でしたが、翌日から次の職場に出頭し、そのまま次の仕事に突入しました。 とはいっても年度末の退職を控えての仮の居場所なので、雇う方もあまり長期的なタスクを僕に振るわけにいかないし、雇われる私はそれに不満があるわけではありません。今月からは未消化の有給休暇を使いはじめています。すでに作業には着手したものの、まだ終わっていない活動もいくつかあるの

    • 【雑感】ブータンにおける学生起業の難点

      王立ブータン大学(RUB)傘下の単科大学は9校あります。そのうち、科学技術大学(CST)、ゲドゥ商科大学(GCBS)、自然資源大学(CNR)、シェラブツェ大学の4校には、学生起業を促進するためのビジネスインキュベーション施設があります。 どこの国際協力機関が開設支援をしたのかは申しません。ハコ(箱)は大学側の提供で、①ワークステーション整備(PC、デスク、ネット環境)、②インキュベーションマネージャー傭上は国際協力機関の資金供与で行われたと聞きます。ハコの提供は大学側による

      • ブータンを離れる日の朝

        任地であったプンツォリンの住居を引き払って、今首都ティンプーに来ています。この記事を書きはじめた時点ではブータン出発2日前の朝ですが、公開自体は首都を出てパロ空港に向かう直前に行うことになるでしょう。 今、首都は12月17日(日)に迫った建国記念日を前に、大変な浮かれムードです。外国から大勢の億万長者が招待されているそうで、インフラ整備が急ピッチで進められています。私が首都入りした11日(月)はティンプーに入って来るバベサ地区の国道が舗装作業のために車線規制されていて、渋滞

        • プロジェクトへの自己評価(2)

          前回、「プロジェクトへの自己評価(1)」という記事を書いた時、私はまだ、JICAに提出するよう求められている「プロジェクト業務完了報告書」のうち、第Ⅲ章までしか書いていませんでした。 第Ⅳ章が未執筆のまま残っていたのですが、ここはプロジェクトの達成した目標が、ログフレーム上の「上位目標」に到達するための条件を論じた箇所です。さすがに、雇われ専門家の身としては、「プロジェクト目標」の達成には責任は終えるけれど、「上位目標」となるといろいろ条件がつき、私自身では責任が負えないと

        帰国後1カ月半、取り組んできたこと

          グサッと刺さった知人のひと言~「地域開発協力コーディネーター」の私的実践

          離任の日を前にして、プンツォリンで知人と最後の昼食をご一緒していて、「あなたがファブラボCSTにいたから相談を持って行けたけれど、離任したら、私はCSTには相談を持って行かない」と言われました。続けて、この方は、「日本は気楽に相談に応じてくれる開発パートナーじゃない。必要なら自分は他の援助機関に相談に行く」とまでおっしゃっていました。 私にとっては聞き捨てならない発言だったのですが、CSTのお役所ぶりを見ていたら彼の言いたいことはわかるし、彼が指摘していた「日本の仕事のやり

          有料
          100

          グサッと刺さった知人のひと言~「地域開発協力コーディネ…

          ブータン首都留置き11カ月間の活動を自分なりに擁護してみる

          プロジェクトも残り1カ月を切り、最後の悪あがきのような行事や派遣元から出されている「宿題」に対応しながら、プロジェクト業務完了報告書(英語)や私個人の専門家業務完了報告書(日本語)の執筆も続けてきました。うち、後者についてはすでに書き上げてJICAに提出してしまいました。 プロジェクトに対する私の評価は、上述の記事ですでにご紹介しています。確かに、2022年8月25日にファブラボCSTができてからの15カ月間でプロジェクトが達成した成果については胸が張れます。任地プンツォリ

          ブータン首都留置き11カ月間の活動を自分なりに擁護してみる

          【雑感】ブータンの首都ティンプーにこそいて欲しい、コミュニティデザイナー

          FAB23が終了した翌日(2023年7月29日)、ブータンのビジネス誌Business Bhutanに、「ファブラボが障害者の自助具を開発(FAB Lab developing assistive devices for PWDs)」という記事が掲載されました。取材を受けたブータン脳卒中財団(以下、BSF)のダワ・ツェリン事務局長は、この記事が出たことに大喜びで、多くのお知り合いに記事のリンクを送っておられました。 内容を読んでみると、事実誤認が何カ所かありました。それにつ

          【雑感】ブータンの首都ティンプーにこそいて欲しい、コミュニティデザイナー

          ブータン南西部チュカ県との楽しい協働の時間

          1.チュカ県との連携~これまでの経緯 この秋、プロジェクトの最後の追い込みをかけるにあたり、頼りがいのある協働パートナーとなって下さったのはチュカ県庁です。ティンプーやパロとインド国境をつなぐ国道が県内を南北に貫くブータン南西部の県です。 CSTは住所としてはチュカ県に属しています。2022年8月のファブラボCSTの開所式の際には、チュカ県知事が来賓としてお越しになりました。その後、2022年10月に開催した初めてのメイカソンにはチュカ県経済開発担当官(EDO)のサンゲ

          ブータン南西部チュカ県との楽しい協働の時間

          プロジェクトへの自己評価(1)

          0.はじめに 前回、「現地で入手可能な材料を使ったローコストの自助具」に関するワークショップについてレポートした際、実際には自分自身がほとんどワークショップに出ていないというのもあわせて告白しました(笑)。 それで、ファブラボCSTをあげて開催していたワークショップを全休して何をやっていたかというと、11月16日に行われるプロジェクトの最高意思決定会議「合同調整員会(JCC)」の議論のたたき台となる、「プロジェクト業務完了報告書」の執筆でした。上記の記事の中でも議論のベ

          プロジェクトへの自己評価(1)

          ローコスト自助具製作のために、在庫として用意しておくもの

          11月2日から4日まで、ファブラボCSTでは、「現地で入手可能な材料を使ったローコストの自助具」に関するワークショップを開催しました。すでにプロジェクトの日本語HPで記事を掲載してもらっていますので、内容はそちらをご覧いただけたらと思います。 このHPでは明言していませんが、実は私、このワークショップにはほとんど参加していません。10月に開催したさまざまな行事の経費の精算がこの週に集中したことと、去年もこの時期に行った日本留学中の外国人学生向けのオンライン講義がたまたま11

          ローコスト自助具製作のために、在庫として用意しておくもの

          3Dプリントミル「CR30」の操作探求

          今から1年ちょっと前、3Dプリンタユーザーの間で話題になっていたのが、Creality社のリリースした新型3Dプリンタ「CR30」です。Z軸がベルトコンベアになっていて、高さ無限大の3D出力が可能だと言われています。 1.なにゆえブータンに? 日本に帰ったら、どこかで使わせてもらおうと楽しみにしていたところ、以前何かの記事でnoteで紹介した元ファブラボブータンのスタッフのケザン君から、「2台購入して1台は自分が使おうと思っているんだけど、もう1台について誰か買いたい人を

          3Dプリントミル「CR30」の操作探求

          はじめて議論らしい議論ができた?~ファブラボブータンネットワーク会合

          10月26、27日の両日、ファブラボCSTにて、「ファブラボブータンネットワーク会合」が開催されました。ブータン全国にある6つのファブラボのうち、TTTRCファブラボ(デキリン)を除く5つのファブラボと、ファブラボを所管している王立STEM教育協会(以下、RSSTEM)がプンツォリンに集まり、初めての対面式での会合に臨みました。 1.過去行われていた会合との違い ファブラボブータンネットワークの窓口は、ティンプーにあるスーパーファブラボ(以下、JNWSFL)です。実際、J

          はじめて議論らしい議論ができた?~ファブラボブータンネットワーク会合

          【雑感】ブータン開発協力オンライン月例懇話会、第20回を迎える

          2022年3月、首都ロックダウンの最中に私が勝手にはじめた「ブータン開発協力オンライン月例懇話会」も、今月で第20回を迎えました。私が道楽ではじめた企画ですし、続けてほしいとか継承したいとかいった声は今のところないので、私が12月に離任すると、たぶん自然消滅することになります。 そんな懇話会に、一度でもお越し下さった方はおよそ100人にのぼります。それぞれのテーマにご関心があったりなかったり、また話題提供をお願いした方の関係者やお友達だったりで、特定回しか出られなかったとい

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          プロジェクトは最後の追い込みに入った

          1.国政選挙の影響 ブータンでは、今年下院議員の改選期を迎え、5年ぶりの国政選挙が控えています。すでに上院議員選挙は4月に終了していますが、下院議員選挙はこれから。10月末にロテ・ツェリン首相の内閣が総辞職し、司法長官を首班とする暫定内閣が発足します。暫定内閣の任期は3カ月と決まっているため、この3カ月の間に、支持政党を選ぶ予備選挙がまず行われます。現在候補者擁立を図っている政党は5つあります。 そして、予備選挙で支持された上位2政党が決選投票に臨みます。決選投票は、全

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          インドで障害者自助具技術を論じるカンファレンスが開かれていた

          本業であるブータンでの仕事を差し置いて、インドネシア、ネパールの訪問レポートをお送りしてきました。その最後を飾るのは、カトマンズ(ネパール)のあとに向かったチェンナイ(インド)で、10月5日(木)から7日(金)まで開催された、「エンパワー(ENPOWER)」というカンファレンスのレポートです。 1.エンパワー・カンファレンスとは? エンパワー・カンファレンスは、インドで障害者自助具の技術開発や利用に携わる企業家、研究者、学生、障害当事者、リハビリ関係者、医療関係者、政策立

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          5年ぶりのカトマンズ訪問で

          10月2日(月)から4日(水)まで、駆け足でしたがネパール・カトマンズを訪問しました。目的はうちのプロジェクトのカウンターパートをファブラボネパールに連れて行き、人間関係を構築することでした。 私にとっては5年ぶりのカトマンズになります。最初に訪れた1995年からの比較でいえば、昔はお世話になったホテルや日本食レストランは閉業になっているところが増える一方、カフェやレストラン、バー、ホテルの数は格段に増えました。老舗はなくなった日本食レストランも、新しいお店が増えました。今

          5年ぶりのカトマンズ訪問で