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「下午のまち銭湯」 第九湯~入船 【入船湯】
銭湯は昼下がりに行くに限る
東京駅周辺の銭湯
東京駅。古くは江戸文化の中心だったこの街もターミナル駅としての役割や丸の内・大手町エリアの発展で今や日本最大規模のオフィス街。すぐ近くには皇居があってマラソンランナーたちで賑わっている。
しかしそんな皇居ランナーが汗を洗い流したくても東京駅には街銭湯がない。そういう時はどうするのか。ちょっと周辺駅まで足を延ばす。意外と銭湯が点在していることに気づく。
神田の稲荷湯。日本橋の十思湯。銀座には銀座湯と金春湯という老舗が暖簾を連ねている。ぼくも新幹線で出先から帰ってきたときや高速バスに乗車する前なんかは、こういった銭湯を良く利用している。
銀座湯
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62962203/picture_pc_bdfa4f1d516a97bd8716562697c9ddac.jpg?width=1200)
金春湯
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62962334/picture_pc_5406b2a2c837b06ec491c963bbea51e3.jpg?width=1200)
稲荷湯
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62962263/picture_pc_eddcbeefaa42798dadd7def8feb80503.jpg?width=1200)
十思湯
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62962281/picture_pc_904fed2d53f6e1620946d7afd99f5c06.jpg?width=1200)
新富町駅の街銭湯
東京駅から銀座方面をもっと進み築地との中間あたりに有楽町線「新富町駅」がある。ここにも街銭湯がある。
新富町の改札を出て地上に出てみる。交差点。銭湯に向かい少し歩いてみる。小道に入る。あれ?ここからの風景なんだか妙に見覚えがあるような気がする。ええっといつ来たっけと思い返してみると・・・ああ・・・そうだ。随分前の記憶がよみがえる。就活生の時。ここの駅に面接に来たっけ。
結局その企業さんとはご縁がなかったのだけど、もしかしたらこの街が僕の職場になっていた世界線もあったのかもなぁ・・・などと考えてみると、なんだかこの街に急に親近感がわいてきた。
「あの時ああしていたら」年齢が上がるたびにその思いはますます強くなってくる。老いというのはそういうところから始まるのかもしれない。
あの会社はまだあるかな?近くまで来たし見に行って確かめてみようかな?とおもったけど、その答えを知ってしまったらいけないというか・・・少し怖い気がしてきた。やめておこう。今現在こうして銭湯のためにここに来た。それで良いじゃないか。
東京駅から少し離れているけどそれでもまだここは十分なオフィス街。この時間はサラリーマンたちが闊歩している。見渡せばビル群に囲まれた路地。本当にこんなところに銭湯があるんだろうか?だんだん不安になってきた。
目的の場所には着いたがそこには大きなビル。う~ん?十思湯みたいにビルの内部にあるのかな?
周りをちょっと歩いてみると・・・あ!!
あった。こんなところに本当に銭湯が。
入船湯
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/63549366/picture_pc_28fa2db151758283593db151e096c64c.jpeg)
本当にこのオフィスビルの一部に組み込まれているという面構え。ビルの入り口って感じ。
入り口を入るとそこは地下に降りていく階段になっている。オフィスビルの地下だし案外と洒落たつくりなのかな?などと思いながら階段を下りていくと、入店扉が現れる。
中に入ってみると、これが結構レトロな雰囲気がある落ち着いたつくり。目の前にはソファーなどが置いてあるロビーがある。金属松竹鍵の下駄箱に靴を入れフロント番台で料金を払う。入店。
脱衣場は街銭湯の雰囲気がちゃんとある。ロッカーもわりと年季物で、松竹鍵と書いてあるのになぜか普通の回すカギがついている。鍵だけ付け替えたのかな? もっと無機質な感じを想像していたが、銭湯特有の人情感がしっかりある。
かららら~
扉を開けて浴場へ。凄くコンパクトなつくりだ。ほぼ正方形の空間で天井は低めでチョット傾斜のついた屋根のような作りになっている。全体が白いタイルでおおわれている。
最近の新しい銭湯という感じではなく伝統のようなものをしっかり感じる。どことなく銀座の2つの銭湯に似ているなとも感じた。狭い空間に伝統の銭湯文化を感じる。
桶は緑と黄色の無印タイプが二種類。黄色のほうをチョイスしてカランへ。カランは全部で18個。体をしっかり洗い浴槽へ。
浴槽は大小二つある。まずは大きい方。周りを大理石調のタイルで飾られている。
しゃぽん・・・
足を入れる・・・おお・・・熱いな。うんこれは江戸っ子が喜びそうな熱湯だ。いいね~。
湯につかりながら浴場内を見渡すと早い時間だけどお客さんが結構いる。てっきりビジネスマンが仕事の合間に入るのかなと思っていたけれど、そんなことはなく普通の銭湯の客層。
近所のおじさんやおじいさんと思われる人ばかり。
横の方にはジェットバスがある。並列タイプのが2か所。
ゴボボボ~と背中を刺激させながら後ろの壁を見てみると、ペンキ絵代わりに浮世絵が飾られている。江戸時代の永代橋の風景。正面に回り縁に腰掛けながらじっくり見る。良い感じだ。
一度カランに戻り冷水を浴びて体をクールダウン。
そのあと小さな方の浴槽に行く。隣の浴槽とは壁で仕切られているけど水中の部分に穴が開いていて湯を共有している。こっちも同じ温度の熱い湯とゆうことだ。
こっちは深風呂になっていて中腰になって肩までゆっくる浸かる。やっぱり熱い。湯につかっていると年配の男性が入湯してきた。そして15秒ぐらいで出て行った。
短時間でちゃっと入ってさっと出る。これが東京の粋な銭湯の入湯作法だ。
ここは「粋」な雰囲気が充満してる。下町のそれともまた違う都会の銭湯の風情。狭い空間に生き続ける伝統の銭湯文化。
たとえこの街がオフィス街に変わろうとも。ビルの地下に追いやられようとも。靡かない。粋な街銭湯魂はなくしちゃいない。このあたりの銭湯たちからはそんな声が聞こえるんだ。
ここもそうだし銀座の2つの銭湯もコンパクトでシンプルである。理由は土地の問題であったり、ビルに取り込まれたりなどなど有るんだろうけど、ぼくはそこにも都会らしさを感じるんだ。
最新の技術というのは小型化とともにあるという考えがある。機能を失わずに無駄を排除し、いかに小型化するか・・・それこそまさに人類の未来への歩み。そして日本人の得意としてきたことではないだろうか。そうここは日本の中心。都会の銭湯。あえてコンパクトであることが粋なんだ。
気づくと浴槽には僕一人。そうだよね。長湯は粋じゃないよな。
脱衣場に戻ると、先に出たおじさんたちがランニングシャツ姿で扇風機に打たれている。今にも腰に手を当てて便牛乳をかっくらう勢いだ。
外に出るとオフィス街。あわただしく歩く仕事人たち。でもちょっと小道に入った地下に粋な東京があるんだ。変わっていくけど変わっちゃいない。入船湯の熱い湯からは東京銭湯の熱き心を感じずにはいられない。
銭湯の詳細
『入船湯』[所在地] 東京都中央区入船[最寄り駅]有楽町線「新富町」徒歩5分
[営業時間] 15:00~23:00[定休日] 木曜[入浴料]480円
[ドライヤー]20円
※備え付けシャンプー、ボディソープあります
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