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「下午のまち銭湯」 第八湯~豪徳寺【鶴の湯】

銭湯は昼下がりに行くに限る

豪徳寺の薬膳カレー

某日、豪徳寺にうまそうな薬膳カレーが食べられる店を見つけた。早速行ってみる。ランチの時間をちょっと過ぎたころあい。その店は駅からすぐの小道の先にあって、とてもおしゃれなカフェのような出立ち。一回がネパール料理を出すレストラン。2回ではスパイスショップをしている期待大なお店だ。

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ランチのプレートを頼む。野菜がたくさん盛られたとてもうまそうな一皿。上品で感じのよさそうな店員さんが丁寧に食べ方を伝授してくれる。

かつてぼくも血気盛んだったころがあって、その時は体に優しい薬膳料理なんて食べるやつの気が知れなかった。いくら体に良いからってあんなまずそうなもの食いたくない。ヘルシー=おいしくない。そんなことを信じていた年代があった。

でも今ならわかる。体に良い物は美味しい。不足している栄養素を摂取すると美味に感じるように体はできていることを悟った。疲れているときにはスタミナ補給のガッツリしたものが美味しく感じるし、体のバランスが崩れている時はこういう薬膳がとても美味く感じる。

パクパク。とてもうまい。体に熱が戻ってきているのを感じる。もうすぐランチ営業が終わると言う時間なのに店内はお客さんで賑わっている。これは名店を引き当てた。ぺろりと平げ、気持ちよく会計を済ませて外に出る。

さてと…この近くにあるかな…自然と銭湯を探してしまう。無意識に。欲している。体が銭湯の湯を欲しているんだ。

駅を挟んで向こう側、商店街の中にその湯はある。少し奥まったところ。ひっそりと。

鶴の湯


無題19

路地の向こう側にカーポート風の屋根があってその奥にはコインランドリーがある。そのとなり瓦屋根の立派な面構えの銭湯。正直もっとビル然としたものを想像していたからこれは意外。

鶴の湯と書かれた黒い暖簾をくぐるとフロント番台になっている。料金を支払い入店する。

脱衣場に入ると高い天井。きれいだけど目新しいつくりではなく昔ながらの銭湯の脱衣場だ。ロッカーは最近の主流のシリンダー式のカギのやつ。このタイプということは過去に改装が入っているんだと思う。

服を脱いで、浴場に入場。

「おお・・これは」

思わずつぶやく。街銭湯だ。まぎれもない街銭湯のそれだ。脱衣場に入った時からうすうす感じていた。

正面壁側に浴槽が2つ横並び。そして富士のペンキ絵。上を見上げると青く塗りたくられたドーム状の高い天井。これぞTHE街銭湯

当然桶はケロリン

桶と椅子をとってカランに行く。カランは両壁と中央の中壁に合計16個。白いタイルの上をペタペタと歩き壁側のカランに陣取る。添え付けのソープ類で軽く体を洗って浴槽に向かう。

浴槽は大小2つが横に並んでいて、大きい方は半分が深湯になっている。小さい方は水風呂だ。まずは主浴槽の浅い部分から。白湯バイブラ仕様になっていて壁には銀枕がある。温度はちょうど。熱すぎることはないがぬるくもない。隣に座湯式のジェットバスが設置されている。ジェットは横並びでなかなか強力な水圧だ。

深湯のほうもジェットバスになっていてこっちは縦式。この縦のジェットもなかなかの水圧でこの水流が壁を伝って向きを変え最終的には隣のジェットバスと呼応して大きな渦のような水流を形成している。まるで鳴門だ。

バイブラにごぼぼとやられながら銀枕にヒタっと後頭部を引っ付ける。ああ気持ちいいなぁ。ドーム型天井の上には天窓がついていてそこから昼下がりに太陽光が浴場に差し込んでいる。

やめられない昼下がりの銭湯。

ペンキ絵を見てみると「ナカジマ」とサインが描かれている。お馴染み銭湯絵師の中島盛夫さんの作品だ。素晴らしい。

湯につかりながら浴槽を見渡すと本当に普通の銭湯だ。在り来たり・・・いや違うな。銭湯は多種多様だ。同じような銭湯を見つけるのは意外とない。特に最近はリノーベーションで新しく変わっていっている。そういった銭湯が目指しているのは「脱普通の街銭湯」。そしてのこるのはそういった銭湯だ。だからこういった普通の銭湯は希少になっていくんだろう。そしてそう遠くない未来なくなっていくんだろう。在り来たりはもう過去のことなんだ。

「鶴の湯」は本当に街銭湯の雛型のような存在だ。水風呂に浸かる。冷たいけど20度程度で冷たすぎない。サウナの水風呂だとこれじゃ満足できないのに銭湯の湯につかった後だととても気持ちよく感じる。不思議だ。

サウナはない。つまりこの水風呂は純粋に風呂として存在しているんだ。

ふと見ると露天風呂の文字を発見。行ってみる。側面の扉を開けると隣の建物とのわずかな隙間を利用して縦長の小さな浴槽がある。これこれ。これが街銭湯の露天風呂なんだよ。温度はぬるめ。バイブラが入っている。湯は白湯。せまい間ながらもしっかり空が見える。なんてことない貧相な露天風呂なんだけど、街銭湯という中にあるととても贅沢な気分になるんだ。

立ちシャワーで体を流し、もう一度じっくり浴場を見渡す。スタンダード街銭湯をじっくりと眺めながら脱衣場に戻る。

服を着て外に出る。まだ明るい。

薬膳で内から体を調整し、銭湯で外からカナダを整える。体は活力を取り戻している。ポカポカにみなぎっている。なんだかとってもいい感じだ。

普通の街銭湯ってどんなやつ?それは豪徳寺にある鶴の湯のような銭湯だ。

銭湯の詳細

『鶴の湯』[所在地]世田谷区豪徳寺[最寄り駅]小田急線「豪徳寺」駅下車、徒歩1分

[営業時間] 15:00−23:00[定休日]火曜、水曜[入浴料]480円

[ドライヤー]20

※備え付けシャンプー、ボディソープあります

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