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  • サムちゃんのショートシート

    サムちゃん作のショートショート小説です

最近の記事

笹原 睦美の【31本目のショートショート】

「ついに30本か」  青木先生は昨日メールで送った30本目の私の作品をパソコン上でしげしげと見ながら言った。 「せっかく最後の話だからさ、主人公の性格をめっちゃクズにしてみたんだよね。どうよ、どうよ?」 「まぁ、それなり」  青木先生は実にそっけなく答えた。  青木先生による「現代文」の講義で単位を取る方法は2つある。1つは15回ある授業の内3分の2を出席し最後にレポートを提出するありふれた方法。  そしてもう1つ。1ヶ月間、毎日ショートショート小説を1本書き、先生にメール

    • サムちゃんのショートショート30【ゆるしてチョンマゲ】

       画期的ないたずらグッズが発売された。  ゆるしてチョンマゲというふざけた名前のカツラだ。その名の通り、安っぽいちょんまげが付いている。こいつを被り、「ゆるしてチョンマゲ」と言い放つだけで、相手は何をされても許してしまうらしいのだ。 チョンマゲの部分から人間の怒りの感情をかき消す「消波パルス」なるものが「ゆるしてチョンマゲ」の言葉をトリガーに放たれるらしい。  開発メーカーは「一種のジョークグッズ」と言い張っているようだが、こんな道具、是非とも悪用してくれと言ってるようなもん

      • サムちゃんのショートショート29【私の知らない、ママと私】

         思いっきり魔が差したので、ママの財布からお金を盗むことにした。理由は本当に些細なことだ。ママが誕生日にプレゼントしてくれた財布の柄が、学校の友達にバカにされたっていう、ただそれだけ。  だから私はママのお金で別の財布を買ってしまうという、なんとも浅ましい作戦を実行することにしたのだった。ママに直接言ったところで 「うちは母子家庭で苦しいから余計なお金はないよ」 と言われるに決まってるし。  お金の在り処はわかってる。ママのタンスの上から2段め、右側の引き出し。ママは大事そう

        • サムちゃんのショートショート28【未完成城殺人事件】

           舞台は山奥に佇む巨大な豪邸。  初代当主の遺言により、一世紀に渡って増築を繰り返してきたその屋敷は、もはやただの住居の粋を超えた質量をもっている。今なお、未完成なその屋敷は歪な城にも例えられ、山の麓の人々からはこう呼ばれている。『未完成城』と。  連絡を受け屋敷に急行した、私こと警部、岩子出島 八郎が直面したのは恐ろしい連続殺人だった。当主の密室殺人を皮切りに、当主の次男、長男の婚約者、その婚約者の連れ子が次々と不可解な死を遂げた。 我々警察からの依頼を受け、この事件に立

        笹原 睦美の【31本目のショートショート】

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        • サムちゃんのショートシート
          31本

        記事

          サムちゃんのショートショート27【真夜中の2人】

           心がどうしても落ち着かず、深夜の町へ散歩に出かけた。適当にその辺を回って帰ってくるつもりだった。  家から少し離れた公園の前を通りかかった時、僕は公園の中のベンチを思わず二度見してしまった。ベンチには若い女性がひとり座っていたのだが、その女性は体に何も身に着けていなかった。つまり、全裸だったのだ。街頭以外明かりのない公園の中で、彼女の白い肌がくっきりと、まるで立体的に浮き出ているような感じで存在感を放っていた。  僕があっけにとられながら凝視していると、僕に気がついた彼女は

          サムちゃんのショートショート27【真夜中の2人】

          サムちゃんのショートショート26【まもなくハタチ】

           あまりの焦燥感に耐えきれなくなり、夜の街に飛び出した。  走り出さなければ息の根が止まりそうなほど、私の心は慌てふためいていた。  明日。もう既に23時20分なので正確にはあと40分後。私は20歳になる。20歳、そうハタチだ。私は20歳になる。時計を見ながら口の中でそんなフレーズを繰り返していたら、私はいつの間にか駆け出していた。じっとしていたら発狂してしまうかと思った。ある意味、自己防衛の本能が働いたとも言える。じっとしていたら嘔吐いて吐き戻しそうだったのだ。  私は今ま

          サムちゃんのショートショート26【まもなくハタチ】

          サムちゃんのショートショート25【はじめてのいしょ】

           階段をドタドタと上がる音が聞こえ、やがて俺の部屋のドアをバタンと空けて弟の雄二が入ってきた。顔は真っ赤に泣き腫らしている。 「にいちゃん!ぼく、生きているのがいやになっちゃった!」  大胆な告白である。まぁ、小学生でも一度くらいは生きるのが嫌になったるするものなんだろう。俺も経験あるし。  話を聞いてみると、雄二は母さんと約束していた映画を見に行く約束を急にすっぽかされたらしい。そういや、ウルトラマンの映画を見に行くって言ってたっけ。 「それで?」 「いしょのかきかたをおし

          サムちゃんのショートショート25【はじめてのいしょ】

          サムちゃんのショートショート24【ハッスル給付金】

           生まれて初めて腕の骨を折った。  仕事中にプレス機に挟まれた右腕はメキメキと音を立てながらあっという間にグチャグチャに砕けた。腕の肉の部分がそこまで滅茶苦茶にならずに済んだのは奇跡だと、後々で医者に言われた。  かくして、医者から全治1年以上の粉砕骨折を言い渡された俺は規定に基づき、会社の労働組合に労働者災害補償保険、いわゆる労災保険の申請をすることになった。  電話でオペレーターの女性に状況を話していたときである。オペレーターが聞き慣れない制度のことを言い出した。 「高杉

          サムちゃんのショートショート24【ハッスル給付金】

          サムちゃんのショートショート23【超切迫型昔話「桃太郎」】

           昔々のそのまた昔。  ある老夫妻が見つけた桃の中から生まれた男児は「桃太郎」と名付けられ、すくすくと育っていった。  成長した桃太郎は地域一帯の民家から略奪を繰り返す鬼を退治するという謎の使命感に目覚め、鬼の根城である鬼ヶ島へ向かうことになる。  道中、一匹の野良犬が桃太郎の前に飛び出してきた。口からよだれをポタポタと落とし、今にも桃太郎に襲いかかってきそうである。桃太郎は祖母から与えられていた手製のきびだんごを腰の袋からさっと取り出すと狂犬に向かって投げつけた。犬はそれを

          サムちゃんのショートショート23【超切迫型昔話「桃太郎」】

          サムちゃんのショートショート22【大人のための「粋」セミナー】

           社会人になってから早4年。最近はキャリアアップも考え始めたが今の俺には何もスキルがない。そこで様々なセミナーの詳細をネットで見ていた際、変わったセミナーの案内があった。 「粋」セミナーというらしい。江戸時代に生まれた日本独自の「粋」という独特の文化を身につけるために勉強をするセミナーだという。初回は参加料が半額とのことだったので、思い切って参加して見ることにした。  講師として皆の前に現れたスーツの男は 「ではまずこれを自由に食べてみてください」  とざるそばを一枚、参加者

          サムちゃんのショートショート22【大人のための「粋」セミナー】

          サムちゃんのショートショート21【私のエリー】

           仕事でくたくたになりながら自宅にたどり着く。  でも扉を開けた瞬間、疲れは嘘のように吹っ飛んでいった。  愛犬のエリーが私の胸元に飛び込んできたのだ。 「エリーただいま」  声をかけてやると嬉しそうに私の手の甲をペロペロと舐める。お利口だ。ちゃんと私の言葉を理解している。私はこの子を愛しているし、この子は私に愛されていることを自覚している。気を使う必要はなく、ありのままの私を受け入れてくれる。最高に可愛い私の同居人だ。  エリーを足に乗せてメイクを落としながらネットのニュー

          サムちゃんのショートショート21【私のエリー】

          サムちゃんのショートショート20【おふたり様、のち、おひとり様】

          「お連れ様は先にお帰りになられましたが」  店員はバツが悪そうな顔で告げた。  は?どういうことだ?  俺がトイレに行く直前まであの娘、この席でカシスウーロン飲んでたよな?そりゃあ、まぁ、スマホばっか見てんなコイツとは思ってたよ? 何話しても上の空だな、あれかな、クールな娘なんだなって思ってたよ?  でもなんだよ。飲み屋で飲んでて勝手に帰るとかありかよ? 「どこでも良いからご飯連れてってよ神様~><」  ってすがってきたのそっちだろ?  それで飲み屋連れてきたら「あー、そうい

          サムちゃんのショートショート20【おふたり様、のち、おひとり様】

          サムちゃんのショートショート19【美しい星の皆さんへ】

           ある日。  宇宙観測用のレーダーが1通のメッセージを受信した。  それは地球から数光年遠く離れたハテカ星系202195番惑星から送られてきたものだった。 『太陽系第3惑星の皆さんへ。  送っていただいた写真を拝見しました。  我々はあなた方の住む星の美しさに、とても感動しました。  ぜひとも交流を深めたいと思っています。  我々は地球の写真をもっと見たい。  追加で写真を送っていただけますか?我々の星の座標を添付します』  過去の歴史を調べた所、1940~50年代、アメ

          サムちゃんのショートショート19【美しい星の皆さんへ】

          サムちゃんのショートショート18【ユメオチンC】

           ユメオチンCという薬が販売された。  この薬を飲むと、どんな出来事でも夢オチ、つまり夢であった出来事にできるというのだ。  薬の効果を試すために俺は早起きしてワクワクしながら就業前の会社に向かった。  まだ誰も出勤していない会社で俺はまず、ファイルされている重要な書類を給湯室のコンロをつかい片っ端から燃やしてやった。  さらに全員分のノートパソコンをベキベキにへし折った。  可愛い女子社員のデスクにマジックで「パンツちょうだい」と書いた。  そこいらで催してきたので、トドメ

          サムちゃんのショートショート18【ユメオチンC】

          サムちゃんのショートショート17【人類の祖】

           その日、僕はスクールから自宅へ向かっている最中だった。道の脇から、そいつは突然飛び出してきたのだ。 『☆※○△●◇~~~!!』  僕は仰天した。飛び出してきたのはそれまで見たことがないような奇怪な生き物だった。  そいつは手足が2本ずつあって、両手をユサユサと振りながら二足歩行で動き回っている。顔には目が2つ。鼻が1つ。口が1つ。へその穴に肛門と性器が1つずつ。  あっ、そうだ!思い出した、この特徴。確かスクールのライブラリで見たことがある。旧時代に栄えたと言われている新人

          サムちゃんのショートショート17【人類の祖】

          サムちゃんのショートショート16【私立エロエロボイステレフォンセンター】

           見慣れない番号からの着信がきた。 「もしもし?」 「はぁい、こちら、私立エロエロボイステレフォンセンター、オペレーターのアッコでーす」 「えっ、誰?なんです?」 「『年下痴女にオナニー命令されてたっぷり射精どどぴゅんこ30分コース』でご契約のササキ アツヒロ様でよろしいですかー?」 「えっ、いや、違います。人違いです!」 「もー、恥ずかしがらなくてもいいんですよぉ?たっぷり気持ちよくしてあげますからね。うふふ」 「えーっ!話聞いてます!?」 「聞いてますよぉ。おじさん童貞で

          サムちゃんのショートショート16【私立エロエロボイステレフォンセンター】