サムちゃんのショートショート19【美しい星の皆さんへ】
ある日。
宇宙観測用のレーダーが1通のメッセージを受信した。
それは地球から数光年遠く離れたハテカ星系202195番惑星から送られてきたものだった。
『太陽系第3惑星の皆さんへ。
送っていただいた写真を拝見しました。
我々はあなた方の住む星の美しさに、とても感動しました。
ぜひとも交流を深めたいと思っています。
我々は地球の写真をもっと見たい。
追加で写真を送っていただけますか?我々の星の座標を添付します』
過去の歴史を調べた所、1940~50年代、アメリカが諸外国と熾烈な宇宙開発戦争を繰り広げていた時代。
ロケット研究の一環で「宇宙の他の惑星に向けて地球の写真を送る」という実験がされていたという。
地球の自然や街並み、動植物などを写した写真をいくつかカプセルに詰め込みロケットに乗せて宇宙空間でばら撒く。そうすればどこかの知的生命体が手にしてくれるかもしれない・・・という、実に途方も無い実験だった。
しかし、現代の世になってついに、遥か彼方の惑星から返答が来たのだ。
人類は色めきだった。多くの人間たちが夢見てきた、宇宙人との対話の扉が開かれたのだ。
有識者により、今の地球の写真の様々な写真が用意された。そしてそれらは現代の科学力で作られた最新鋭のロケットによりハテカ星系202195番惑星にむかって飛ばされた。前回に比べて、人類の技術水準は格段に上がっており、今回は送るべき場所もはっきりしている。写真を載せたロケットは数年後、目的地に到着したはずだった。
数年後のある日、ついにハテカ星系202195番惑星から返答が来た。
メッセージには嘆きと、失望と、悲しみが綴られていた。
『写真を受け取った。
なんだこれは。この色は。
この薄汚い巨大な水の貯まりは。
この目もくらむような汚らしい植物は。
この吐き気がするような体色の生き物たちは。
創造性のかけらもない色彩の建物は。
我々が過去に受け取った写真には美しく、シンプルで、淡く均等に統一された世界があった。
自然も動物も人工物も美しい白と黒で描かれていた。
こんな、こんな侮辱があるのか。我々を騙していたな、第三惑星人。
醜い色が蔓延する星で、精々末永く繁栄するがいい』
それから2度とハテカ星系202195番惑星からのメッセージは届かなかった。
この投げ銭で家を買う予定です。 よろしくお願いします。