映画「桐島部活やめるってよ」鑑賞

なんの気なしに、ふらっと立ち寄る感覚で観た。
序盤は、我々世代にはたまらない俳優陣の登場ばかりで楽しく観ていた。
が、段々とこの「高校」の雰囲気がリアルで息が詰まりそうになる。

大きな事件が起きるかと言われれば、そうでもない。
ただ、それぞれの視点で傷ついたり、悲しんだり、色々な思いがある。
大切にしている物が、それほど大切かと問われれば、そこまででもない。
何とも言えない空気が重い。

人生で小学校時代も中学校時代も
大体みんなと楽しめていればそれでいい、何も問題ない、所から
いきなり「進路」とか自分で決めなければいけない。

スクールカーストとか、あるにはあるけど
1人1人がそこまでそれ自体にこだわっていなくて
そういうものだからしょうがない、というか
触れずに、見て見ぬふりをして、我関せずで過ごしている。

とってもリアルな学生生活。
文句が言いたくても黙ってみたり
適当に扱われる人間が何も思っていない訳がない。
立場上の強さがある人が何を言っても許されるわけでもない。

クライマックスのゾンビのシーンは
妄想入り混じるスクリーンの景色だったけれど
皆がそれぞれ言いたい事をはっきり言えずに
だけど、どうしたらいいかわからないモヤモヤを
大爆発させていて良いシーンだった。

高校生らしく、どの人も自分の事をあまり客観視できていない感じも
痛々しくて見ていられない程にリアルだった。

それが、東出さん演じる「桐島の親友」だけが
出来ている感じもした。
客観的に見て、自分はいったい何者なのか
何をしていけばいいのか、わからないから苦しい
何をしたいのか
それほど夢中になれるものが何もない。
苦しい中でもがいている。
感動が薄れている。
友だちとも恋人とも勉強や部活とも距離がある。
そつなくこなして、場に溶け込めるからこそ
誰にも気づかれていない。
感情を振り乱せない。

最後にかけた桐島への電話は、唯一のアクション。
やっぱり腹を割って話せるのは桐島だけだったのかと思うと切ない。
しかも、桐島は部活を辞めて前に進んでいる。
少なくとも辞める事を自分で決断できている。

野球部の彼は、辞める決断も続ける決断も出来ていない。
中途半端に野球部の鞄を持ち続けながら
このまま、どうするのだろう。

言葉にしている事が全てじゃないし、
それぞれの気持ちが複雑にじわじわと動いている。
憧れ、嫉妬、八つ当たり。
無気力、劣等感、情熱。

でも、それらを含めて青春なんだなと思った。
真剣に思い悩みながら、向き合いながら生きている。
自分と自分をとりまく環境に
面倒くさいなと思いながらも体が動く。

大人になると それほど素直に感情が動かない。
動かさない様に自分自身で仕向けているのかもしれない。
こんな頃あったな、と思わされる作品だった。
そして、大人になったからといって
それぞれの生き方を選んでいかないといけない場面はずっとあるし
見て見ぬふりする 他人事として捉えて 自分は関わらない
そんな場面もずっとある。

青春ねぇ、いいわねぇ。で終わらせず
これからだってずっと続く人生
青臭く大真面目に 時々現実を見つつ
自分の夢中になれるもの
自分で満足できるもの
見つけられたらしあわせだな 十分だなと思う。
ずっと周りの事を気にしてたら…
自分の小さな殻に閉じこもっていたら…


隣の芝は青いんだ
開き直ることも必要だ
そのまま人生が終わる前に。

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