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23時の衝動クッキー

クッキーが食べたい。それも焼きたての。丸くて茶色くて甘ったるくてしっとりとしていて。手作りのクッキーって考えただけで頭がふわふわする。恍惚の二文字はクッキーで出来ているかもしれない。

そういえば前、恋人とシュークリームを食べている時に「カスタードクリームって幸せを味にした感じ。」と呟いたら「わかる。幸せをほわほわ集めた感じ。」と共感の言葉が返ってきて嬉しくなったのを思い出した。そう、こういうところを好きになったんだっけ。わかるものにはわかる、わからないものにはわからないと返してくれる素直なところ。

思えば私の友達にはそういう人が多い。わからないときにわかる、と言わない人。とても好感が持てる。

今私は焼きたてのクッキーが食べたい。友人は、わかると言うだろうか。

私は食べたいと思ったものを食べないで放って置くことが出来ない。寮生活で献立の調節が出来ない時でも「唐揚げが食べたい」と思ったら夕飯そっちのけで徒歩15分のローソンに買いに行ったっけ。

クッキーを食べるだけならスーパーに走ればいい。しかし焼きたてを食べるには作るしかない。冷蔵庫を見ると余ったレーズンとバターとアーモンドがあった。運がいい。

バターを室温で柔らかくしてヘラで潰す。砂糖とすり混ぜて卵を入れて混ぜ、薄力粉を入れて柔らかくしたレーズンを入れて……

ドロップクッキーは型を抜いたり冷凍庫で冷やして包丁で切る作業が要らないのでとっても楽だ。ボウルがベタつくという点以外は。

余熱したオーブンで焼いているとバターと砂糖が合わさったときの甘ったるくて優しい香りが部屋に充満する。ふわふわの布団に包まれて寝ているときのように幸せな気分。

はやく焼けないかな。すぐに食べたい。火傷をしてもいいから頬張りたい。口内を、胃を、クッキーで満たせたらどんなに幸せだろう。はふはふ、ざく、と歯がクッキーに当たり、甘い香りと共に温かく固い舌触りのものが侵入してくる。たまらず何度も噛むとレーズンとバターがじゅんわり、アーモンドが香ばしい。

あーー早く食べたい。すぐに食べたい。今すぐに「幸せ」になりたい。23時の衝動に抗う必要はない。さあ、立て。口に含め。誰だダイエットなんか考えた奴は。人間なんか体積が大きいほど幸せそうに見えるじゃないか!!!!

自分を正当化したところで7枚クッキーを食べました。しあわせ。

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