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父の短歌 〜佐渡の夕焼〜

荷物整理をしていたら父の昔の歌が出てきた、と母からチャットが入りました。
ペンネームが随分前のものだったので、おそらく40年位前のものではないかと。
偶然ですが、今の私と同じ位の年齢だったと思われます。

佐渡の夕焼 

と書かれたものの横に、縦書きで七首ほど書かれていました。

鼓の音冴えにぞ冴ゆる夏空にやをら呟くワキの旅僧

くぐもれる声の湧きくる能面の底ひに潜む千古なる夢魔

海女二人行平を恋ひ解脱なき闇の塩屋に乾かざる袖

戻り梅雨滲む舞台を夫恋ひの狂ひ女舞ふや髪濡るるまま

夕焼に今し浮上す能舞台シテ松風の頬を染めつつ

暮れなづむ木の間隠れの能舞台小鼓打てば千年の寂

農の手を休め謡をうたひしか世阿弥配流の佐渡の夕焼


これは佐渡で能を観た時の歌だろうな、と直ぐに思いました。

※ワキ、とは能の用語で能の主役であるシテに対し、脇役(わきやく)を勤める専門職です。

子供の頃、私は毎年母と夏休みを1ヶ月ほど過ごしていて、父も何日か休みをとって一緒にいるのが恒例でした。
演目は覚えていませんが、一緒に薪能を観に行った事もあった気がします。

佐渡は民間でも能が盛んです。 
戦前は謡曲が出来ることが男子の嗜みだともされていたようです。

5月から10月まで椎崎諏訪神社で月に一度二千円で薪能が鑑賞出来ます。

今月も行ってきました。
演目は巻絹です。

残念ながら私は短歌を詠む素養がないのですが。
もし、父が観ていたらどんな歌を詠んだのかな、と思いました。

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