見出し画像

極私的ジャズ銘盤選2021夏・リターンズ

苦し紛れにすませんあと10曲、あと10曲という言葉を残して逃げ出した主宰。6月末に投稿のつもりが多忙が極まり以下自粛。さっさと積み残しを消化しましょう。年末のベスト選定に向け、これで候補は80曲近くに跳ね上がってしまった。どうすんのおじさん、無茶苦茶豊作じゃないのよ今年のジャズ界隈。絞り込んで埋もれちゃうくらいならとことんやっちゃえの精神で。

延長戦スタート。

さすがに取り上げざるを得ない。京都音楽博覧会繋がりとはいえ、ブラジル音楽の新世代をこのような形でフィーチャーしなおかつ平場で堂々リリースしてみせたものですから。とはいえ長年のファンからすれば、こういった思い切りの良さというか傍若無人さがくるりの魅力であり真骨頂であって。岸田繁の確信犯としてまた新たな歴史が書き加えられた、そんな印象です。

振れ幅の鬼。00年代初頭、岩井俊二的風貌でジャズフェスに出演していた泣かず飛ばずの時代と全く異なる世界線へ辿り着いた、静かで確かな実力派。八代亜紀のトレーナーとして名高いのは好事家にはお馴染み。ヒップホップの文脈で彼の歌声を耳にしても一切違和感なく体を揺らせてしまえるのは、本来ひどく恐ろしいこと。ジャンル不問のヴォーカリストへと登り詰めた。

これもスルー不可能な珠玉のコラボレーション。MNDSGN『Rare Pleasure』でも圧倒的サイドマンっぷりを発揮してみせた名手が、Amber Navranと優雅に軽やかに溶け合った逸品。決して最大公約数的にならない絶妙な温度感、湿度感に着地した音像。ループ主体の楽曲の中にも両者のパーソナリティがしっかりと反映されていて、驚くほど退屈しないチルアウト感。

一聴してわかる洗練されたサウンド。かれこれ3年動向を追い続けていますが彼がなぜ脚光を浴びないのか。正直理解に苦しんでます。シルキーでありながらスモーキー、絶妙に陰が長くそれでいて絶妙に光が差し込んでくる感触。ネガポジという二元論を超えた、これこそが新時代の音楽なのです。読者の皆様どうか一緒にスターダムを駆け上がる様を見届けてみませんか。

ブルックリン発のSSW、彼のような隠れた実力派にはブレイクする前にしっかり唾付けときましょう。一度DJプレイすれば、流行にビビットな方々からは確実に手厚いリアクションをもらえるはず。主宰がこんなご時世でもイベントを継続しようと模索する一番の理由、これからの時代を担うサウンドをもれなく先取ること。前回Tom Mischをプレイしておいて本当に良かった。

弱冠21歳、ロンドンを拠点に活躍する彼女が鳴らすのは徹底したブラジリアンサウンド。サウスロンドンの音楽を所構わずほじくり返してきた自負がありますが。正直これまでにない全く新しい流れ、近年勢力を伸ばすアジアンルーツのアーティストに似た勢いを感じた。それでいて至って当たりはソフト、しかし着実に脳裏に焼き付く音像。

ロイハー亡き後こうしたサウンドに飢えていた古残ジャズファンにとっても待望の、思わず頷いてしまうサウンドでは。主宰はドラム出身ですので元来彼をドラマー目線で追いかけてきましたが、近年ピアニストとして着実に頭角を現しつつあり。その甲斐あってか、より氏の音楽性が年々奥行きを増していることは間違いない。マルチプレイヤーだからこそ成せる音楽。

銘盤選・夏でも取り上げましたが、敢えてのダメ押し。どう考えても次世代を担うヴォーカリストだという確信を得たもので。彼女を彩るサイドマンの豪華さを差し引いてもなおゴージャスな印象、重厚感が揺らぐことがなかった。知る人ぞ知るスタンダードを披露してもなお。その意味で堂々、銘盤選に返り咲きです。オールドな輝きを残しつつ新しい風を吹き込む逸作。

ポルトガルはリスボン発の音楽。ちょっと待て、本稿は6月リリース盤の積み残しを消化する目的だったのでは。しかし機を逃しここまで来てしまいしかし聴き直す程に紹介しない訳にゃいかぬ名盤との再会が続きまして。結局、取り上げることにしました。予定調和なジャズに辟易としている古残ファンこそお手に取って下さいな1枚。

所謂「いまジャズ」を定義することは困難、しかし新たなフェーズを予感させる音像であれば漏れなく該当ということで良いんじゃないか。柳樂氏含め識者の感覚が今一つ掴めない主宰がピックしたジャズの現在地。宗教的あるいは観念的に響くサウンドが市民権を得つつある感触は確か、しかしその理由はわからない。音楽というものは常に宗教的観念的であったはずなのに。

悲報、ここからさらに延長戦。

すません、ホンマすません。あと5曲だけ。

USインディ界隈では、上半期最大のダークホースとの呼び声高いアルバム『Changephobia』。そのラストを飾る1曲に強烈なジャズを感じたもので。近年Frank OceanやSolange作品でも類まれなプロデュース力を見せつけたRostam、その実力やはり本物。20年代の混沌を漏れなく作品に注ぎ込む、それでいてオーセンティックなサウンドで締め括ってみせた。

近年のPaolo Fresuワークス、面白過ぎる。現代オペラ・ジャズの到達点を見せたOJDMとの逸作から一点、David Bowieのトリビュート盤に挑む貪欲さ。しかもこれがなかなかに一筋縄で行かず、モダンで少々難解でどこか突き放されるような感覚を味わえる仕上がりとなっており、ファン感涙の内容。このシュールさこそがDavid Bowieだったよな、と思い起こさせてくれる。

なんかもうイントロから猛烈に目頭が熱くなりましてですね、これは問答無用で銘盤確定。主宰はエヴァンスに魅了されてジャズの世界に流れ込んできたものですから、当然この曲で思い浮かべるのは彼のソロピアノなのです。正直、あの時の感動に近いかもわかりません。未発表音源リリースラッシュ、そのどれもが一級品という圧倒的事実。

決して再販モノではこざいません。令和3年、米ルイジアナ発のソウルグループが世に放つれっきとした新曲。2012年結成、Japanese BreakfastやMitskiらを輩出する名門Dead Oceansからのリリースというのも実に興味深い点ではないでしょうか。コテコテのインディロックレーベルですよ。本当に今、名実共に目が離せない存在の一つ。

好事家にはお馴染み、イタリアのジャズヴォーカルといえばGaetanoおじさんです。丁度こちらのナンバーが表題曲となったアルバムリリースから、今年で10年の節目。当時は多管編成で演奏されていましたが、よりミニマルなアンサンブルで聞いてみるとなるほど発見が多いのも魅力的です。Gaetanoおじさんのキザでプレイボーイな一面がより色濃くなったような印象。

さらに悲報、6月後期盤を盛大に積み残す。

ハナっから終わらせる気ないんじゃん。ってかもうここまで来るとわざとじゃん。いえいえお客様、決してそんなことはございませぬ。だって豊作なんだもの、そんなの誰の目にも明らかでしょうよ。というまさかの逆ギレで夏の陣リターンズに幕引き。銘盤・秋の陣は、まさかの6月後期リリース盤からの再開という未曾有の事態に。

とはいえ「数字は語る」というのもまた事実で。週刊ダイヤモンド風。もといこちらの連載、主宰の歴代最多となる20スキを頂戴しまして。これもひとえに読者様のおかげでこざいます。正直、目ん玉飛び出ました。ずーっと独白してたはずのアカウントが、気づけば月間アクセス3千オーバーとか言われたらもうガクブル以外の感情がなく。

これからも週イチペースでひっそりゆったりやって参ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?