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砂原良徳『LOVEBEAT』から20年後の地平。

主宰はもうすっかりおじさんですのでついつい昔話ばかりしてしまいます。2001年。20世紀末、21世紀の幕開けというのはことダンスミュージック界隈においても相当度の過渡期でありました。UnderworldからDarren Emersonが脱退、Massive AttackからDaddy Gが離れていたのもこの時期です。これからお話しする砂原良徳氏の電気グルーヴ脱退も、当時かなりの衝撃度でした。

砂原氏脱退後の2000年、電気グルーヴは2枚のアルバムをリリースします。一つは『VOXXX』主宰目線、電気グルーヴの最高傑作であると考えてます。度が過ぎた音遊びとは裏腹に終始陰鬱な空気感が場を支配している。後にも先にもこんなアルバムは聞いたことがない。当時、主宰は小4でこの作品と出会いました。喜劇を観てるのかホラーを観てるのか。シュールな感覚に。

そして『イルボン2000』はツアーツアーの録音をジャスト60分間のミックスに再編集した意欲作。これも、JPOP史に残るライブアルバムだと感じます。現実と虚構が入り混じる、ありそうでなかったコンセプト。当時主宰は卓球氏に感化されじわじわとテクノ音楽にのめり込み始めていた時期。ミックスCDも沢山買いましたよ。Thomas Schumacherの虜になってました。

そもそも固定メンバーで音楽をやり続けられることそれ自体が奇跡に近い。芸能ゴシップやゲスの感繰りがお好きな方とは相いれない世界のお話です。翌年リリースされた『LOVEBEAT』を聞いて疑念が確信へと変わった。勿論一時的な仲違いや金銭トラブルなんてものがあったのかもしれない、しかし現在まで3人の交友関係が続いていることも十分過ぎる裏付けに。

このアルバムを聞き「音楽性の相違」以外の感想が果たして思い浮かぶか。現在、坂道グループを中心にミキシングを行っているエンジニア・松本靖雄氏の仕事っぷりも冴えまくっています。ミニマルでありながらハイファイ、質素でありながらエレガント。当時はEDMなんてワード存在しませんでしたし、CDショップのコーナー展開だって無茶苦茶こじんまりとしていた。

主宰最寄りのCDショップに限って言えばダンスミュージック棚の規模はこの20年で数倍、下手すると数十倍になりました。言い換えればジャズコーナーが半分になり、ダンスミュージックコーナーが倍増した。ジャズ界隈とて、斜陽業界なんて揶揄され始めていた時代でしたから、子ども心にインパクトの高い出来事であったことは間違いない。そのお店も近年、あえなく閉店。

同じジャンル同じレコード棚に、この2つの音楽が並列されていた時代。

ジャズにもいろいろあるように、ダンス音楽だっていろいろです。ジャンル分けが難しいとみるや一目散にワールドミュージックコーナー行きが内定、そんな状況がありました。時代は変わるものです。かつての戦友が別々の場に拠点を移しリリースした最初のアルバムがここまで対照的な仕上がりに。あれから20年、ダンス音楽界隈に新たな過渡期が到来か。

Daft Punk解散。本当の本当に、思ってもみない角度からのニュース。

『Random Access Memories』で全て出し切った。つい一面化しがちな世の論調に、主宰は敢えて異論を呈したい。きっとそんなに単純な話じゃない。もちろん10年代が新たなフェーズの到来を予感させたことも、先のコロナ禍だって大いに関係していることでしょう。音楽に、確定演出は存在しない。ヒットを宿命づけられることで委縮されるクリエイティビティがある。

最寄りのCDショップに彼らの姿がなかった時代を知っていますし、POP展開はおろか音楽専門チャンネルで細々とMVが流れていた時代も主宰は確実に目にしている。時代の耳が追い付き始めたのなんてせいぜいここ10年くらいの話です。それだけ加速度的に、ダンス音楽がお茶の間に浸透しつつある。ポストEDMの世界に思いを馳せつつ、稿を閉じます。

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