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ドラムスティック遍歴のコーナー!!(1)

ありそうでなかった連載企画、始動。

世の中にはいろんな遍歴があると思います。仮に主宰がやるとして真っ先に思い浮かぶのはヘッドホン、これはもう盛大にかましてます。次にタバコ、これも禁煙成功によって頓挫してます。青くさい痒い逸話が沢山ありますが仲間内までに留めておくとして、次なる一手。ドラムスティック遍歴なんてどうでしょうか、というご提案です。

主宰は元来音楽の神様に見放され、歌に挫折し、ピアノに挫折してドラムに流れ着きました。純粋に楽しかった。叩けばすぐに音が鳴るって親切設計。入口が広い分、出口の見えないトンネルが続いた時期もありましたが、概ね満足いってます。挫折したとはいえ、若干の音感を身に付けたことも割合に役立っている。そう悪くない人生だなんて思える瞬間も多々あり。

案の定、前置きが長い。話を進めます。

進学先の公立中学に、どうやらビッグバンド部があるらしい。迷わずドラム教室の門を叩きます。体験レッスン初日。いきなりスタジオの外に出され、なんだぶん殴られるのかなんて思っていると、おもむろに木の棒が詰まった四角い棚の前に案内され、手渡された木の棒にはPearl 103Hと書いてある。記念すべき1本目。初心者に超オススメ、言わずと知れた名作の登場です。

現在はロゴの刷新された新しいモデルが流通していますが、当時は確か縦長のゴシックで「HANDMADE 103H」と黒く印字された非常にシンプルなものでした。第一印象は、軽い、握りやすい。初めてなのにめちゃ手に馴染む。おにぎりに、塩を一つまみ。といったような実に素朴で温かい木の棒2本。すべての物語はここから始まったのでした。

意外に筋が良く、3年かかる教則本が3か月で終わってしまった。叩いている時間と喋っている時間が1:1になる。先生からイチオシのVHSを借りる。パケには「Buddy Rich Memorial Scholarship Concert」と書いてある。せっかくなので先生に内緒で、シグネイチャーモデルなるものに手を出してみることにした。当然VHSで叩いていたドラマーのものだ。

姿形は103Hと非常によく似ている。重さも同じくらい。ただ、木の棒の先端部分のデザインが若干違う。球体というよりはドンキーコングの樽みたい。勝手にスティックを変えた僕を見ても先生はぶん殴ったりせず、優しく説明してくれた。どうやら均一な音を出しやすいチップらしく、こちらを最初に薦めるケースもあるくらいなのだそう。後の、ビッグバンド部時代の主力。

せっかくなので、出演ドラマーのモデルをもう1つ買ってみた。あんこ色。想像以上に柄が長く重量感がある。当時ウニの軍艦みたいな髪型をしていたDave Wecklという鼻筋の通ったおじきは、先生に教わったグリップポイントからかなり外れた、エッジもエッジという部分を持って叩いていた。叩き方が音になる、と先生は教えてくれた。また一つ、音楽の奥深さを知った。

木の棒によって、シンバルの鳴りが全然違う。せっかくなので先生に内緒で使い分けることにした。完全なる我流。基準はあるようでないようなもの。この頃念願のステージデビューが決まる。ビッグバンド部なのにルパン三世を叩くハメになった。黒い木の棒で行くのかあんこ色の木の棒で行くのか。結局、どっちで叩いたか全然思い出せない。

最後にビッグバンド部時代購入して一番苦労した木の棒を紹介して〆ます。オーク材。ビッグバンド部がTAMA製のセットだったので、木の棒もTAMAにして音の相性を見てみることにしました。非常に硬質な素材だったせいか、ハードヒッターだったせいか。頭でイメージしている音が、全く出せない。音が痛いとか、もっとやわらかくとか言われてもアジャストする術がない。

この頃にはもう下巻の教則本も終わりが見え始めていました。トントン拍子で来ていたはずだから、自分はそれなりに叩けている方なんだろう。もっと自分の考えであれこれ動いてみよう、の精神でもって試行錯誤を重ね続けた時期でした。正攻法ではなくあくまで我流。ビッグバンド部顧問がドラマーだったことも非常に心強かった。よき理解者に囲まれた中学時代でした。

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