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『青い青い遠い春』
![](https://assets.st-note.com/img/1683731118718-haNrW9FUwB.jpg?width=800)
頬に触れた、少しかかさついた手のひら。
その手の指が、そっと髪を耳にかけてくれた。
自分とは違う体温を感じる。少し怖い。
様子を伺うように覗き込む瞳は、私の気持ちを見透かしているようで、こちらの呼吸に合わせるように、優しく、ゆっくりと瞬きをした。
「怖い?」
その問いかけに、温もりを感じて安心する。
でも、私の身体は反射的に強張っている。自分でもそれはわかっていた。
なんとか口元に笑みを浮かべながら、私は答えた。
「怖くないよ。」
あなたは少し視線を下に向けて、寂しそうに、
「嘘付かなくていいの。」
と、普段ふざけ合う時と同じように、両の手で私の顔を挟んで、ゆっくり左右に揺らした。
「これも怖い?」
「ううん、大丈夫。君だから。もう大丈夫。」
自然と力が抜けた私は、今度はきちんと揺れる瞳を見返すことができた。
「そっか。なら良かった。」
あなたはふぅっと息を漏らす。
「ちょっとずつでいいから。怖い時は言ってね。」
「うん、ありがと。ごめん。」
「謝るのは無し。ね。」
「うん。」
おでこをコツンと合わせて、私達は目を閉じた。
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