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風の季節ほか

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「紫陽花の季節」スピンオフです。 「風の季節」「hollyhock」「白梅の薫る頃」「紫陽花の季節、君はいない」完結しました。 「夢見るそれいゆ」「紫陽花の花言葉」連載中です。
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2020年10月の記事一覧

夢見るそれいゆ 80

夢見るそれいゆ 80

部屋の電気も着けずに、私はひとり反省していた。

何てことしてしまったんだろう。
夏越クンに無理矢理キスしてしまったなんて。
夏越クンには、ゆかりちゃんがいるのに。

夏越クンには「ゆかりちゃんを見ていない」って言ったクセに、私こそ夏越クンの心を無視した。

もう夏越クンやゆかりちゃんに合わせる顔がないよ──。

しばらくすると、パパが「夏越を連れて、飲みに行ってくる。」と言って、夏越クンと二人家

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夢見るそれいゆ 79

夢見るそれいゆ 79

「ちゃんと見てるから、怖いんだよ。
彼女はこれからもっと綺麗で魅力的になっていく。これから俺は歳をとるだけだ。
年齢をカバー出来る魅力なんて、俺にはない。」
自嘲する夏越クン。

「そんなことないよ…。」
私は声を絞り出した。

「ひなたは俺を買い被りすぎなんだよ。
魅力的な男っていうのは、柊司みたいに明るくて何でも出来るヤツなんだよ。
ひなただって、付き合うならそういう男にしろよ。」
その言葉に

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夢見るそれいゆ 78

夢見るそれいゆ 78

夏越クンはもじもじしながら、
「俺、自信が無いんだよ。年齢のこともそうだけど、性格も明るくないしさ。シルシがあった方が安心するかなって。」
と苦笑いしている。

「朝も言ったけど、ゆかりちゃんは夏越クンが好きで生まれ変わったんだよ?
それに、夏越クンの不安は『モノ』で解決するとは思えない。」
あ…言い過ぎた。このパターンはちなっちゃんと絶交した時と似ている。
でも、一旦放ってしまった言葉はどうにも

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夢見るそれいゆ 76

夢見るそれいゆ 76

「夏越は言ったわ。
『紫陽が消えてしまってから、俺はしばらく死んだようになっていた。
柊司やあおいさんにも心配かけた。理由を言うわけにはいかなかったから、なおさらな…。
でも、あおいさんがひなたを身籠った時、紫陽も何処かで生まれ変わろうとしてるんだって思えるようになったんだ。』
私は聞いたわ。ひなたは貴方にとって紫陽の代わりだったのかって。」

それは、私も何度も思ったことがある。
夏越クンが優し

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夢見るそれいゆ 75

夢見るそれいゆ 75

あれ?
夏越クンにとっての私は、パパの子ども。良くて家族のようなもの。
考えるまでもない──はずだった。

「ねぇクレハ。何で夏越クンは考え込んでしまったの?」
私は夏越クンの意外な反応が引っ掛かった。

「あの男、家族や故郷の人間との縁が薄かったみたいなのよね。
『ずっと、俺の本音なんて、誰にも興味を持たれなかった。表面を繕っていれば、上手くいってた。』って、昔言ってたくらいだからね。
他人への

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夢見るそれいゆ 74

夢見るそれいゆ 74

よくよく考えてみれば、夏越クンと紫陽(ゆかりちゃん)が再会した時にカミングアウトしてしまえば良かったのだ。
私が八幡宮の精霊たちと友達だということを。

言えなかったのは、やはり私に後ろめたい気持ちがあったわけで…。

「話を続けるわね。
私は夏越に言ったわ。
『ひなたは、貴方の秘密を覗き見してしまった気がして言えなかったんだって。
ひなたを怒らないでよ?』って。
そこで、さっきのセリフに繋がるの

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夢見るそれいゆ 73

夢見るそれいゆ 73

「『──でも、15年かかったけどさ…紫陽、今はゆかりに再会出来て良かったよ。前世の記憶もちゃんと残ってたし。』
夏越は、吹っ切るような笑顔を浮かべたわ。そうよね、人間の15年は長いもの。」

当時22歳(ほぼ23歳)だった夏越クンも38歳である。仕方ないけど、ゆかりちゃんとの年の差も、親子ほど離れてしまった。

「夏越は、急に話題を変えてきたわ。
『ところで、クレハ。今着ているその服、ひなたが作っ

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夢見るそれいゆ 72

夢見るそれいゆ 72

「ちょうど紫陽が朔と境内を散策するのに、あの男…夏越と離れたから、私は以前の辛辣な態度を詫びたわ。
『紅葉、別に謝らなくてもいいのに。
あの時は紫陽の件で必死だったんだろう?』
夏越から愛する人が還ってきた余裕を感じたわ。
『あの時は、紫陽の残された時間が少なくて焦っていたの。貴方が知らないとはいえ、紫陽にいつもの時間に会いに来なかったのが、腹立たしかったのよ。』
今まで徹底して避けてた人間と、こ

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夢見るそれいゆ 71

夢見るそれいゆ 71

「あら、ひなた固まったわね。」
クレハが私の頬を指でツンツンした。
「ひなたが八幡宮に来てること…あの男に秘密にしてたのは知ってるから、私からは言わなかったけど、服のことはすっかり配慮を忘れてたわ…。ごめんなさい。」

「──クレハ…夏越クン、どんな様子だった?
内緒にしてたこと、怒ってた?」
どうしよう…。夏越クンに嫌われてしまったら、絶対に立ち直れない。
私はすがるようにクレハの両腕を掴んだ。

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夢見るそれいゆ 70

夢見るそれいゆ 70

「──うん。この感情を認めるのが、とても怖かった。」
クレハに気持ちを受け入れてもらえて、私は心底ほっとした。紫陽の親友でもあるクレハに、嫌われてしまう可能性もゼロではなかったから。

「ひなた、辛くなったら私いつでも話を聞くからね!
私が紫陽の親友だからって、遠慮しないでよ?
私はひなたの親友でもあるんだから!!」
「うん…うん。」
私はクレハの気持ちが嬉しくて、あんなに学校でも泣いたのに涙が流

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夢見るそれいゆ 69

夢見るそれいゆ 69

「ねぇ、クレハ。私…今まで想像の中の紫陽に嫉妬してたじゃない?」
私の言葉にクレハが頷く。
「でも実際彼女と知り合って、彼女なら夏越クンが好きになったのも必然だって思えた。
だって、あんなに綺麗な心の持ち主だもの。
矛盾しているかもしれないけど…私も彼女を好きだと思えたの。」
私は咲き誇る紫陽花をやさしく撫でた。

「ひなた、貴女あの男のこと…。」
「うん、クレハや御葉様の言うとおり夏越クンを男の

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夢見るそれいゆ 68

夢見るそれいゆ 68

学校帰りに八幡宮に寄った。
今日は天気も良く、7月初めだから夕方でも明るい。

私はクレハに会う前に拝殿にお参りをした。
「どうか私が良い方に変わっていけますよう、見守っていて下さい。」
涼しい風が私をやさしく撫でていった。

紫陽花の森に行くと、いつもより花が生き生きと咲いていた。
今日は、散策を楽しんでいる人も多い。

「ひなた~、褒めて~!!」
クレハがご機嫌にハグしてきた。
「クレハ、夏越

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夢見るそれいゆ 67

夢見るそれいゆ 67

「…『変わる』って、そんなに悪いことなのかなぁ。」
更紗先輩が、腕を組んで適切な言葉を探している。

「だって、不変だったら悪いことも悪いままだよ?ひな。これから起きる奇跡的な良いことだって、無いことになる。
それに、ひなが『変わらない』選択をしても、周りはどんどん変わっていってしまうよ。」

あぁ、そうだ。私が変わらなくても、夏越クンは紫陽と再会してしまった。もう、寂しそうな夏越クンではない。

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夢見るそれいゆ 66

夢見るそれいゆ 66

「でも私は自分の意識していないうちに、ある人を異性として見始めていたんです。
それは、学校の外で出来た親友に指摘されて気付きました。
しかし、私はそれを認めたくはありませんでした。
彼にとっての私は親友の子どもで家族のような関係で、彼には長年行方不明の恋人がいる…。
女でなく子どものままでいればずっと一緒にいられると思ってました。」
更紗先輩の眉が少し動いた。
私は更に話を続けた。

「子どものま

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