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夢見るそれいゆ 76

「夏越は言ったわ。
『紫陽が消えてしまってから、俺はしばらく死んだようになっていた。
柊司やあおいさんにも心配かけた。理由を言うわけにはいかなかったから、なおさらな…。
でも、あおいさんがひなたを身籠った時、紫陽も何処かで生まれ変わろうとしてるんだって思えるようになったんだ。』
私は聞いたわ。ひなたは貴方にとって紫陽の代わりだったのかって。」

それは、私も何度も思ったことがある。
夏越クンが優しいのは、私を通して紫陽を見てるからなのではないかって。

「『クレハ、俺はひなたを紫陽の代わりだと思ったことはないよ。
ひなたが生まれてきた時、紫陽じゃなくて一瞬失望したのは認める。
でも、ひなたがはじめて笑った時、ようやく俺にとってのあの日の【日食】が終わったんだ──。』
私には、あの男の言葉の真意は理解出来なかったけど、ひなたを特別に思っていることだけは分かったわ。」

クレハは、ふーっと息を吐いた。
「話が長くなったわね。まぁ、あの男はひなたを怒ってないから安心してよね!」

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