夢見るそれいゆ 75
あれ?
夏越クンにとっての私は、パパの子ども。良くて家族のようなもの。
考えるまでもない──はずだった。
「ねぇクレハ。何で夏越クンは考え込んでしまったの?」
私は夏越クンの意外な反応が引っ掛かった。
「あの男、家族や故郷の人間との縁が薄かったみたいなのよね。
『ずっと、俺の本音なんて、誰にも興味を持たれなかった。表面を繕っていれば、上手くいってた。』って、昔言ってたくらいだからね。
他人への思いに名前を付ける習慣がなかったそうよ。」
確かに旅の多かった夏越クンから、実家に帰った話題は一度も聞いたことがなかった。
私は夏越クンの家族構成すら知らない。
「だけど、結局『ひなたへの思いは、名前が付けられない』って答えが返ってきたわ。」
「え?」
どういうことだろう。
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