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紫陽花の季節、君はいない

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「紫陽花の季節」主人公の夏越の物語です。 「紫陽花の季節」か「夢見るそれいゆ」と一緒に読んでいただけると、もっと楽しめます。
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2021年12月の記事一覧

紫陽花の季節、君はいない 59

紫陽花の季節、君はいない 59

「夏越、裏道にあるケーキ屋行ったのか。あそこのケーキ、旨いんだよな~。あっ、俺レアチーズケーキな。」
柊司はとっくにケーキ屋があることを知っていたのか。
俺は残りのチョコレートケーキになった。

「夏越くん、早速プレゼントしてくれたバレッタ着けてみたわ。」
バレッタはあおいさんの髪の毛を華やかにまとめていた。
「おっ、似合うじゃないか!」
「柊司くん…。」
夫婦同士で見つめ合いが始まってしまった。

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紫陽花の季節、君はいない 58

紫陽花の季節、君はいない 58

俺はアパートの自分の部屋に帰った。
「…た、ただいま。」
何か違和感を感じると思ったら、俺はあまり「ただいま」を言ったことがない。

「おう、お帰り。」
「お帰りなさい、夏越くん。」
柊司とあおいさんが玄関まで出迎えてくれた。

キッチンのテーブルには、美味しそうな料理がズラリと並んでいた。
「お前んち材料少ないから、ウチの方から食材持ってきて作ったぞ。」
何故かふんぞり返る柊司。
確かに俺の家の

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紫陽花の季節、君はいない 57

紫陽花の季節、君はいない 57

「いらっしゃいませ。」
俺と同じ年頃の女性が元気に挨拶してくれた。
半分以上顔が隠れていても分かるぐらいの、明るい笑顔である。
俺は不思議と緊張せずにケーキを注文することが出来た。

ケーキを箱に入れてもらっている間、かつて紫陽の誕生日を祝った記憶がないことに気づいた。
精霊である彼女は、俺がはじめて八幡宮に参拝した日に生まれた。
御朱印も拝受しているので、生まれた日も分かっている。

あの頃は誕

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紫陽花の季節、君はいない 56

紫陽花の季節、君はいない 56

「──そうだ!あおいも夏越んちに来たことだし、一日遅れの誕生日パーティーでもしようぜ!!夏越、今日は日曜だから用事は無いよな?」
柊司は俺に泣き顔を見せないように冷蔵庫にさっと行った。
キッチンペーパーで目を拭き、昨日詩季さんからもらってきたコンポートとジュースをテーブルに出した。

「柊司、俺スーツをクリーニング出してくるついでにコンビニでケーキ買ってくるよ。」
俺は就活で着たスーツの入った紙袋

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紫陽花の季節、君はいない 55

紫陽花の季節、君はいない 55

柊司がおかしくなってしまったと心配していると、なんとあおいさんも嬉しそうにしているではないか。

「良かったね、柊司くん。私も3…いえ4人で一緒にいられるのが嬉しいわ。」
あおいさんは大きなお腹を撫でた。

「あんなに懐かない猫みたいだった夏越から、一緒にいたいって言ってもらえて…本当夢みたいだ!」
柊司はそう言うと俺をぎゅうとハグした。

「ムギャー!抱きつくな~!」
俺はいきなり抱きつかれて驚

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紫陽花の季節、君はいない 54

紫陽花の季節、君はいない 54

「柊司!あおいさん!
俺、お前たちとずっと一緒にいたいんだ!
離れようとしていたくせに勝手だって思うかもしれない。
だけど…本当の願いは、これだったんだっ!!」

勇気をふりしぼって、俺はようやく本音を伝えることができた。
しかし柊司もあおいさんもポカーンとしている。
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたい。

しばらくして口を開いたのは、柊司だった。
「…夏越。俺の頬を思いっきりつねれ。」
「はあ?

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紫陽花の季節、君はいない 53

紫陽花の季節、君はいない 53

「俺は情けなさに耐えきれずに、夏至の日の早朝にふらふらと家を出たんだ。
そこで知り合いに会って、話を聞いてもらったんだ。
『お前は目の前にいる人間を見ていない。不安と罪悪感から遠ざけようとしてるだけだ。』ってかなり厳しい口調で言われたんだ。」
「…夏越にしては、かなり辛辣な知り合いだな。」
柊司がドン引きしている。実はその知り合いは精霊なんだって言ったら、俺はおかしくなってしまったと思われるに違い

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