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紫陽花の季節、君はいない 56

「──そうだ!あおいも夏越んちに来たことだし、一日遅れの誕生日パーティーでもしようぜ!!夏越、今日は日曜だから用事は無いよな?」
柊司は俺に泣き顔を見せないように冷蔵庫にさっと行った。
キッチンペーパーで目を拭き、昨日詩季さんからもらってきたコンポートとジュースをテーブルに出した。

「柊司、俺スーツをクリーニング出してくるついでにコンビニでケーキ買ってくるよ。」
俺は就活で着たスーツの入った紙袋を手に、アパートの部屋を出た。

外に出た途端、焼けるような日差しが俺に照りつけた。
日焼け止めを塗るのを忘れてしまったので、頬がジリジリする。
しかし、日差しより俺の心の方が熱くなっていた。
紫陽…俺、ちゃんと柊司とあおいさんに本音を伝えられたよ。

近所のクリーニング店にスーツを出した後、コンビニに向かっている途中、歩道の横にケーキ屋の案内看板が置いてあった。
裏道にケーキ屋なんてあること、今まで気付かなかった。
俺はコンビニに行くのをやめて、ケーキ屋に行くことにした。

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