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紫陽花の季節、君はいない 54

「柊司!あおいさん!
俺、お前たちとずっと一緒にいたいんだ!
離れようとしていたくせに勝手だって思うかもしれない。
だけど…本当の願いは、これだったんだっ!!」

勇気をふりしぼって、俺はようやく本音を伝えることができた。
しかし柊司もあおいさんもポカーンとしている。
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたい。

しばらくして口を開いたのは、柊司だった。
「…夏越。俺の頬を思いっきりつねれ。」
「はあ?」
「いいから、ほら」
柊司が真顔で自分の頬を俺に近づけてくる。
俺は仕方なく柊司の頬をつねった。

「イテテテ!」
「ごめん、柊司!他人の顔なんてつねったことないから、力加減が分からなかった!」
意外にも柔らかかった頬は、つねったところが赤くなってしまった。

「ゆ…夢じゃないっ!」
頬を押さえながら、柊司はなぜか嬉しそうな笑顔を浮かべた。

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