成宮櫻子

短歌などがすきです / 早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系2年 / 東京大学Q短…

成宮櫻子

短歌などがすきです / 早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系2年 / 東京大学Q短歌会 / 早稲田短歌会

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自選短歌十五首

プラトンもアリストテレスも教えてはくれない進路も君の気持ちも 立春はぜんぜんさむい十八で大人になんてなれるわけない ライバルと呼べばライバルひさかたの駿台模試の宣戦布告 ハチPと同一人物だと知った米津みたいに前より好きだ ネモフィラと空と海とが出会う場所青の三重点に立っている サンダルの紐なおしながら進む午後 ︎︎防波堤まで愛してあげる 音声は一度だけしか読まれません。よく聞け好きだこの馬鹿野郎 星雲で生まれ星雲へと還る死ぬときだって光っていたい 眩しさは痛み

    • 真夜中の外で

       きみの身体を流れる血液が孤独の色をしていないことに、ひどく疎外感を覚える夜がある。自分の手首と比べて透かしてわからないとしても。心臓がこんなにからっぽなんだから、血管を流れているのは悲しみに違いない、と考える真夜中がきみにないことを、わたしはとっくに知っている。  だからこれはもし、の話でしかないけれど、もし、きみの脈拍がさみしさの鼓動で刻まれていたとして、きっとわたしはそれにため息をつくほど安堵してしまう。その仮定がわたしをまたひとりぼっちにする。きみの心臓をとりはずし

      • 太陽のない国_短歌条例

         「太陽が沈んだあとの空が好き。」さみしくないの、ときみに聞かれた日のことを、コマ送りすらできそうなくらい隅まで記憶している。永遠は過去の別名だと知って大人になった気がした。けれど、「気がしてるだけだ」と鏡のなかに住む猫がこっそり教えてくれたから、今日は生鮮食品コーナーで一番高い魚を買った。  眠るのも泣くのも下手になっている。わからなくなって諦めていた。絡まった茨の棘に後ろから最高機密を抜き取られても、なくなったものがなにかを考えているうちに朝が来てしまうんだ。  「十

        • 光源のありか

           生まれた場所が帰る場所ではないことから吹いてくる冷えきった風に、どんな名前をつければいいんだろうか。捨てられないものだけを抱えて逃げてきたこの街で、失えないものがまた増えていくことが怖くてしかたがない。ひとりで泣くことには慣れていたはずで、けれどいつかすべてなくしてしまったときに呼吸の仕方を思いだせるんだろうか。  東京という街が一等うつくしいのは、どこにも帰りたくない夜に意味もなくどこまでも歩いていくときに違いなかった。失ったものを色褪せないままにしておくのに、これ以上

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        自選短歌十五首

          椎骨の数をおしえて

           どうしてひとはだれかを愛すると、ふたりで一匹の動物みたいになってしまうんだろう。ひとりとひとりのまま、肩は触れるくらいの近さで、しずかに歩いていけたらいいのに。  その先に未来があると思えなくなる。いま、一匹だな、と思うとき、途端に永遠を手放してしまったような気がして心細くなる。もともとそんなもの持ってなんていないのに。心細さは弱音に変わって、そうしてたいてい悲しい顔をさせてしまう。  その手に触れられないのは、いつだってただ怖いからだった。私が孤独でなくなってしまった

          椎骨の数をおしえて

          ゆめみがち

           もっていないもののことばかり考えている。なくしたもの。二度と戻らないもの。きっと一生手に入らないもの。そんなもののことばかり。この手のなかにあるものがどうでもいいわけではない、とは思う。ただ、私にとって生きることが待つことで、祈ることだというだけで。  ゆめみがち、ということばを久しぶりに聴いた。ずっと、夢をみているんだろうか。ゆめみがち、と口にしたひともそれを聴く私もどこかの曲がり角が違えばここにはいなくて、かわりにずっとずっと焦がれている憧れと笑いあっていたのかもしれ

          ゆめみがち