さばのしっぽ
小さい頃、よく家でさばを焼いてくれていた。
さばは部分によって食べやすさが変わる。身の部分の方が端に骨があったりして食べにくい。
私のお皿にはいつもさばのしっぽが置かれていた。
さばのしっぽは一番食べやすい。しかも、いつもテーブルの上には焼いたさばが何個かある中でしっぽはひとつだ。
つまり、食べやすいさばのしっぽを毎回私に置いてくれていたのだ。優しい。そんなさばのしっぽが優しくて、おいしくて私は好きだった。
一人暮らしになってグリルもない今、残念ながら焼いたさばを食べることはほとんどない。時折さばに出会うと、あの食卓を囲むさばのしっぽを思い出す。