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【小説】愚。#1
(あらすじ)
事情感情環境状況世代立場等一切合切無頓着でコレと言った考えもなく、思いついたままを口にし思いついたままに動いて決して後を振り返ることはせず無責任に放置する。
愚行は謎、愚行はミステリー。
具田
整理整頓清掃清潔躾習慣
SeiriSeitonSeiketsuSeisouSitsukeSyukan
仕事をする場合にはあくまでもこれが基本であって、これをアルファベットで表記される場合の各単語の最初の1文字をまとめる形で"6S"と称している。
「この最低限のことができてもいない職場に良い品物が製造できるはずがない!」
そんな建前ばかりを100年以上も変わらず社訓的に言い続けながら靴下を作り続けている企業。
ぶっちゃけ、ンなこたぁないわな。
そら100年も前の靴下工場では人力に頼ることも多かっただろうから整理整頓も重要だっただろうけれどもこの現代においては製造に関わるその殆どの工程はマシーンが担っているのだからそのマシーンの担当する作業範囲においては整理整頓どころか照明もいらんだろうにそのマシーンが支配するライン内の不要な蛍光灯を真っ昼間から煌々と点けるという大いなる無駄は不問に付しておいてなにが省エネだ俺が未使用のコピー用紙をメモ書きに使うと目くじらを立てるくせに明らかに不要な蛍光灯の点灯に充てられる電気代はもったいなくないのか不条理千万だおい庶務のババアちょっこっち来い。
腹いせに犯してやる。
てな具合に日々積乗する不満を破廉恥な妄想で昇華しながらこの30年近く、贋蔵はその企業で労働し、得た銭でメシを喰っていた。
「新入社員いるじゃん」
庶務のババアをギタギタに凌辱している画を脳内に描き悪魔的な薄笑いが顔に出ようとするその瞬間にそう声をかけられて贋蔵が振り向くとそこには具田の顔。でっかい目玉がぎょろぎょろしている。
「犯したのか」と思わず声にする贋蔵、「え?」と具田、「いやいや、で?」と贋蔵、「おまえ、ちんこ何センチ?って訊いてみたわけさ」と具田、「新入社員にか?」と贋蔵、「そう」と具田、「で?」と贋蔵、「無反応」と具田、そして贋蔵は大きく息を吸った。
「具田、それセクハラ」
きぃーヒヒヒという具田の甲高い笑い声がコンクリに反響し、まるで亜熱帯の怪鳥が構内を飛び回っているような音響を構築している。
愚。
これぞまさに昭和から引き継がれる感性。
(つづく)つもり
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