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万画一探偵シリーズ

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迷探偵 万画一道寸が活躍するコメディミステリー作品
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2022年1月の記事一覧

白猫ホームスと探偵 全文 (16475文字)

白猫ホームスと探偵 全文 (16475文字)

 探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 
 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。
 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆とでもい

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白猫ホームスと探偵 3/3

白猫ホームスと探偵 3/3

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 3

 次の日は朝から忙しく都内を東奔西走した。
 公生の手帳メモから拾い出した五件の消費者金融らしき事務所に実際に出向いて見ることにしたのだ。
 メモには住所がないので、電話をして相談したい事がありましてと、客を装いアポイントメントを取って、所在地を聞き出した。
 五件の内訳は次の通り、名前の横の数字はおそらく借りた金額と思われる。

 中島 300 花沢 

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白猫ホームスと探偵 2/3

白猫ホームスと探偵 2/3

前のお話

 2

 その日、万画一は加奈子にいくつか質問をした。
 夫・公生の失踪前の様子、失踪に至る心当たりはないか、趣味や交友関係など、細かく質問した。
 結果として、加奈子の夫・公生は無趣味で友人も少なく、仕事一筋の超真面目な男性であると、そう思わざるを得ない印象に落ち着いた。
 それにしても、二千万円もするダイヤを持って失踪だなんて、普通ではあり得ない。何かの事件に巻き込まれたという可能

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白猫ホームスと探偵 1/3

白猫ホームスと探偵 1/3

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 探偵・万画一道寸が離れを借りて居候しているのは、大森の山の手にある『潮月』という割烹旅館である。 
 探偵の仕事もそうそう毎日ある訳でも無く、万画一は大抵部屋でゴロゴロしながら書物文献を漁り、文机に置いた原稿用紙に向かって筆を走らせているのだ。
 何も世間に轟かせるような論文を発表しようと目論んでいるのでは無い、詰まらぬ日々の徒然をたらたらと認めているだけである。さしづめ日記、または随筆

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