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上野 紗妃
2023年2月13日 16:19
丘の中腹にある小さな駅、そこから坂道を登って行くと白い校舎がある。あたりを広大な森に囲まれた城壁の中に三つの棟があり、一番高い棟の西端に鐘楼がある。校舎の南側に沿ってそれぞれテニスコートやグラウンド、体育館などが併設されている。『私立白樺女子学園』その高等部に丘 絵里は勤務している。 縁あって母校に就職出来て三年目を迎えた。現在は新米の国語教師だ。それまでは図書館で司書の仕事をしていた。 在
2023年2月12日 20:42
理事長室を出た絵里が、廊下の角でぶつかった相手は、園子にそっくりな少女、鈴木沙耶香だった。「すみません。あっ」謝った沙耶香は右肩を押さえて顔を顰めた。「肩を打ったのね、何を急いでいたの?」「いえ、部活の練習に行こうとしてて……」「そう、とりあえず、一緒に保健室に行って診てもらいましょう。部活の方は後でわたしからちゃんと説明するわ。これでも演劇部のOBなのよ」 沙耶香は頷いて立ち上
2023年2月11日 20:43
2022年9月17日 10:31
山の中腹にある校舎、そこから森の小径を通った高台にその館はある。私立白樺女子学園の理事長・源財芳子の邸宅である。 絵里はその邸宅に向けて歩を進めた。訪ねるのは理事長ではなくその孫娘の華子。絵里とは学園在学中からの親友である。 二人とも演劇部に籍を置き、輝かしいとまでは言えないものの楽しくも有意義な日々を共に過ごした。ある一点を除いては。 扉を叩くと華子の母未来が出迎えてくれた。華子の部屋へ
2022年9月7日 15:47
夏の終わり、小高い丘の中腹にある小さな駅舎。近くにお嬢様学校と言われる学園があり、朝晩のホームはそこの女子生徒達で溢れかえる。しかし今は夏休み中であり人影もまばらだ。そして時刻は午後の八時を回り、辺りは森々とした闇に包まれていた。ホームの先にポツンと佇む小さな灯火の中を小さな虫たちが円を描いている。まもなく急行電車がこの駅を通過して行く、それを見送ってから園子が乗るべき各駅停車が到着する。園子