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つむぎ

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詩人・佐藤咲生。
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2023年4月の記事一覧

詩 「私ではない」

詩 「私ではない」

慣れ親しいんだものは捨てなくていい
だけどときどき忘れたい
私ではない人の言葉がつまった本を
一冊鞄にいれて喫茶店を訪ねる

手書きのメニュー
コーヒー400円、ココア450円
サンドイッチ400円、フレンチトースト450円

頼んだフレンチトーストには
予想外にもネーブルと苺がついていて
なんだか得した気分
カップのソーサーにパラソルの絵が描かれていて
それがなんだか可愛かった

私はべつに

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詩 愛よりも透明な

詩 愛よりも透明な

恋をする、色彩が足りないことに気づき、
世界が全くもって足りなくなる、
世界が雪で濡れる、熱くなる、
次のたましいに生まれ変わるまで、
愛してる、まぶたに触れる雪、
沈黙する、わたしの体温、雪が溶ける、
溶けることも溶かすことも、痛くはない、
痛みさえ足りない、
どうしてこんなに足りないのだろう、
足りないから、せめて。

わすれたくないのだ、でもそれは孤独で、
わすれたくないのは、わすれないでほ

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詩 今日しかない私を

詩 今日しかない私を

旅先の街で聞く
朝が降りてくるときの
しずかな気配。
閉じたカーテンの向こう
広がる光と
ホテルの真っ白なふとんから抜け出した
私のたましい。
ほんとうは毎日
目が覚めると生まれ変わる。
しゃらしゃらと音を立て
冷たさとあたたかさに分類され
昨日が形になる。
その半ばで毎朝の私は
ぬるい生身のからだを起こす。
いつか死んでゆく人である不思議よ。
今日も私であることの軽妙さよ。
ホテルの朝食はなんだ

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詩「眠れない夜」

詩「眠れない夜」

暗闇の中で影がきれい。
眠れない夜ほど感覚が冴える。
壁の奥や床のすきまに
流れる気配がゆるやかに泡立つ。
深海のような孤独にも、
耐えうるべくして生れた体。
寄り添うように闇が這う。
ここがここでなくなる過程で、
やっとわたしはわたしに見つかる。
どんなに絶望していても、
鮮やかに自分を嗅ぎ分ける力。
暗さの中にも濃淡が、
孤独の中にも静けさと賑やかさとがある。
だれにも分かってもらえないことは

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