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佐藤咲生
2023年4月23日 15:27
慣れ親しいんだものは捨てなくていいだけどときどき忘れたい私ではない人の言葉がつまった本を一冊鞄にいれて喫茶店を訪ねる手書きのメニューコーヒー400円、ココア450円サンドイッチ400円、フレンチトースト450円頼んだフレンチトーストには予想外にもネーブルと苺がついていてなんだか得した気分カップのソーサーにパラソルの絵が描かれていてそれがなんだか可愛かった私はべつに私
2023年4月13日 16:52
恋をする、色彩が足りないことに気づき、世界が全くもって足りなくなる、世界が雪で濡れる、熱くなる、次のたましいに生まれ変わるまで、愛してる、まぶたに触れる雪、沈黙する、わたしの体温、雪が溶ける、溶けることも溶かすことも、痛くはない、痛みさえ足りない、どうしてこんなに足りないのだろう、足りないから、せめて。わすれたくないのだ、でもそれは孤独で、わすれたくないのは、わすれないでほ
2023年4月13日 15:10
旅先の街で聞く朝が降りてくるときのしずかな気配。閉じたカーテンの向こう広がる光とホテルの真っ白なふとんから抜け出した私のたましい。ほんとうは毎日目が覚めると生まれ変わる。しゃらしゃらと音を立て冷たさとあたたかさに分類され昨日が形になる。その半ばで毎朝の私はぬるい生身のからだを起こす。いつか死んでゆく人である不思議よ。今日も私であることの軽妙さよ。ホテルの朝食はなんだ
2023年4月7日 12:51
暗闇の中で影がきれい。眠れない夜ほど感覚が冴える。壁の奥や床のすきまに流れる気配がゆるやかに泡立つ。深海のような孤独にも、耐えうるべくして生れた体。寄り添うように闇が這う。ここがここでなくなる過程で、やっとわたしはわたしに見つかる。どんなに絶望していても、鮮やかに自分を嗅ぎ分ける力。暗さの中にも濃淡が、孤独の中にも静けさと賑やかさとがある。だれにも分かってもらえないことは