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予算1万円。古書店巡りの旅~中央線編~

自分の趣味というか習慣の一つに、”古本屋覗き”というものがある。宝探し的要素とジャケ買いの面白さは、新刊の書店よりも勝ると思っている。
それと、同じ本でも、店舗によって全く金額が異なるところも面白い。
いわゆる「神保町価格」というヤツを念頭に置きながら、他の地域でだいぶ安く売られているのを発見した時の嬉しさよ。

今回は、長らく住んでいた中央線沿線をブラブラ徘徊する事にする。

スタートは国分寺。そこから自宅へ向かって東へ移動する。
予算は1万円。写真集などの大型本を買ってしまったらアッという間に無くなってしまうから、注意が必要だね。

なるべく数を多く買いたい為、丈夫なトートバックを。

【1軒目】国分寺『七七舎』

国分寺市本町3丁目11-16

初来店。というか、実は国分寺駅に降り立つのも初めてだ。
かつてお隣の国立(くにたち)市との合併話が出た際に、プライドの高い国立市民より、「” 国分寺市民なんか ” になりたくない」と言わしめた市である。
その為、どれだけDQNな市なのかと思っていたら、あれまぁごく普通の駅前だ。パチンコ店なども見当たらないし、むしろキレイじゃないか。

駅から歩いて5分で店に到着。お馴染みの入り口100円本コーナーが充実しており、品揃えに期待が持てる。
書棚のジャンル分けもしっかりされており、文庫本コーナーは、私の中の「好きな本屋」のポイントである、中公文庫と講談社文芸文庫の品揃えが充実している。店内の奥へ行くと、アート本等の大型本コーナーがあり、建築系と写真系の書籍が多し。(しかし今回は予算の都合上、大型本は控えなければならない…)

・『かくれ里』白洲正子著 新潮社 500円
 →ハードカバー版は初めて見たので買う事にする。

・『じゃがたら紀行』徳川義親著 中公文庫(1980年5月初版)350円
 →最後の殿様。かなり破天荒な人物だったらしく、気になる。

・『クッキングパパの優雅なゆとり暮らしレシピ1年分』うえやまとち著   
  講談社 400円
 →本当に365日分のレシピが付いていたよ。

合計:1,250円(残8,750円)


【2軒目】武蔵境『おへそ書房』

武蔵野市境2丁目3-20

初来店。以前住んでいた頃は、まだこのお店は無かった。確か、昔はパン屋だった気がするのだな。住んでいた頃に店があったら、毎日通っただろうに。

外の書棚と入り口の書棚は、子供向けの絵本が沢山ある。一見、”可愛らしい乙女系”の店かと思いきや、写真関係の大型本とサブカル系が多く、一気に欲しくなる。しかし何度も言うが、今回は予算の関係が…。
…と、予算を気にしていた癖に、ここで思わぬミスをしてしまう。

・『船キチの航跡』柳原良平著 海事プレス社 1,200円
 →キチ○イは、今言ったらイカンよね。

・『気が付けば港町ばっかり』柳原良平著 山と渓谷社(1979年4月初版)
  2,700円
 →厚みのない本だった為、後ろに鉛筆書きされている値段を”700円”と読み
  間違えてしまった事にレジで気付く。

そう。ここで、頭の中の計算と2,000円誤差が生じてしまったのだ。まさか、
2,700円とはね!
でも、よくよく見ると初版本であるし、そして何より、大好きな柳原良平氏のお船の本なので、結果的には良い買い物。(お店の人にも、「柳原良平関係を収集されているんですか?」と訊ねられちゃった)

合計:3,900円(残4,850円)

わずか2駅で、予算の半分を使い果たすという体たらく…。


【3軒目】三鷹『水中書店』

武蔵野市中町1丁目23-14

ここは何度も通っているお店。欲しいモノが見つからない日もあれば、あれもこれも欲しいと思わせる日もあり、つまり、店内の商品の新陳代謝が良い証拠。
それまで興味の無かった作品(串田孫一や上林暁の著作)に出合わせてくれたのも、ここのお店がキッカケだ。
店内は、純文学と詩集が多し。あとは奥の方にちょこっと風俗ルポ関係のコーナーがあり、品揃えはオールジャンル。

・『てくてく青空登山』安西水丸著 ミューレン編集部 600円
 →前の駅で柳原良平作品を購入したので、今度は安西水丸作品を。

・『自殺』末井昭著 朝日出版社 500円
 →これは新刊の時から気になっていた。(だったら新書で買えよ)

合計:1,100円(残3,750円)

正午に家を出たというのに、そろそろ暗くなって来た。昼食を除くと、1店舗に1時間は居る計算になる。

【4軒目】吉祥寺『百年』

武蔵野市吉祥寺本町2丁目2-10

今度こそ、姉妹店の『一日』のほうへも行ってみよう、と思っているのだが、毎回こちらの『百年』のほうへ来てしまう。まさに百年の呪い。
ここはアート関係の本が充実し過ぎており、なかなかのデンジャラスゾーンである。
新書も置いてあるのだが、その品揃えも心憎い。
そしてやはり今回も、アート本コーナーで北井一夫の写真集を見つけてしまい、一瞬、物欲が鎌首をもたげたが、自分を律して、コソコソと文庫本コーナーへ移動する。

・『猫町』萩原朔太郎作 金井田英津子画 パルロ舎 800円
 →小説も持っているが、中身の絵(版画)が素晴らしいので購入。

・『夏の葬列』山川方夫著 新潮文庫 100円
 →帯の松岡修造と目が合ってしまったので購入。1991年の初版本だった。

・『武士の娘』杉本鉞子著 大岩美代訳 ちくま文庫 200円
 →この本は、どこかの古書店へ行く度に出会ってしまうので、これは私に
  買えという啓示なのだろうか。

合計:1,100円(残2,650円)


【5軒目】西荻窪『盛林堂書房』

杉並区西荻南2丁目23-12

来てしまった。地雷原・西荻窪へ。
あの店もこの店も行きたい!と考えてしまいがちだが、幸い、今日はもう日が暮れているので、1店舗に絞る事にする。

こちらの盛林堂書房は、大正昭和初期の『新青年』系の作品、ミステリーもの、あとは文庫本で絶版になった作品も置いてあり、非常に重宝している。

以前、まぁせいぜい500~600円くらいだろうと、大して値段も確認せずにレジへ持って行った平山三郎著『実歴阿房列車先生』(旺文社文庫)が、絶版且つ初版本で3,000円だった事がある。
一瞬、ウッとなったが、「私の目利きも大したものよ…」と、僅かなプライドに支えられ、何事も無かったようにレジでお金を支払った。(『実歴阿房列車先生』はその後、中公文庫で再版されたので、今ではそこまで高額な値段は付いていないはず)

・『狭山事件』亀井トム著 辺境社 550円
 →狭山事件関係本は、見つける度に欲しくなってしまう。永山則夫同様、
  無学文盲だった人物が、獄中生活の中でどんどん知的になってゆく所に
  惹かれるのだなぁ。

・『清張地獄八景』みうらじゅん著 文春文庫 600円
 →清張先生は、作品そのものより、面構えと鉄道ヲタクな部分が良い。

・『ジュニアチャンピオンコース科学捜査あの犯人を追え』 学研研究社
  1,250円
 →これはジャケ買いです。見るからに刑事には見えないこの男。学研の
  社員だろうか…?

1972年発行。その時小学校高学年だったと思われる竹内英之君。君は刑事になれたのかい?(現在推定61~62歳)

合計:2,400円(残250円)

あともう1店舗行きたいが、残250円では、100円本コーナーを漁るしか無いよなぁ…。


【6軒目】阿佐ヶ谷『コンコ堂』

杉並区阿佐谷北2丁目38-22

閉店時間30前に到着。もうあれこれ選んでいる暇は無い。
コンコ堂も、数え切れないくらい何度も訪れている店舗。オールジャンル、バランスよく取り揃えられており、中でも山岳関係本が充実しているように思う。私は、山登りはしないが、山岳関係の本が好きなのだ。あと料理本も、…。(以下同じ)

書籍の品揃えも良いし、所々に飾られている雑貨類も、雰囲気が良い。
こんな素敵なお店で、僅か250円の予算で何かを買おうとしている自分が恥かしい…。

・『アジア旅人』金子光晴作 横山良一写真 情報センター出版社 550円
 →昔読んだ、金子光晴の『マレー蘭印紀行』を、現代のルートで訪れると
  いう、何とも素敵な作品集。

合計:550円(-300円)

実質300円の予算オーバーだが、合計14冊どれも気に入ったものを購入出来、大満足である。そして、手が千切れるほど痛い。(おそらく10㎏弱)

ただ単に買い物をするのではなく、予算という制約の中で、ゲーム感覚で古書店巡りをするのも、なかなか楽しかったです!

戦利品を片手に一杯飲みに行きたいところですが、本日の気温33℃。早く風呂に入りたいので、帰ります!

FUJI PRO400H / FUJI KLASSE S