まったく読めない"無濾過生原酒“には「無濾過」「生」「原酒」の意味が込められていた!
「日本酒を、もっと身近に」という理念をかかげながら活動している日本酒メディア・コミュニティ『酒小町』。今回は「"無濾過生原酒“の謎を紐解いていこう!」です。
ゆるゆる日本酒教室、今回は【“無濾過生原酒“の謎を紐解く】です。
まずはこちらの写真からご覧ください!
「無濾過生原酒」(むろかなまげんしゅ)
日本酒を飲んでいる方は一度は見たことありませんか?
声に出してみると不思議とクセになる日本酒用語の一つです。
さて、この言葉、意味わかりますか?
日本語に日本語の通訳が必要になりがちな日本酒用語。
先日の第93回【酸・サン・さん】で触れた、“酸”と同じように、日本酒ライトユーザー・ビギナーがハードルに感じる要素の一つかもしれません。
“無濾過生原酒“という表記があるのとないとで、何が違うのでしょうか?
実際に飲んだ時の味わいはどう変わるのでしょうか?今回はこちらをみていきましょう!
無濾過生原酒には、3つの意味がある!
区切るポイントは、
この文字それぞれに意味が込められています。日本酒の製造にてかかせない工程。それは、発酵させてできたお酒をしぼる(上槽)ことです。
日本酒はその製造過程で、もろみ(※)から搾って液体と固体に分けることになります。いわゆる「しぼり」という工程です。
①・②・③すべてに関して、お酒の発酵が終わった後・出来上がった後のしぼる(上槽)という工程の後の話です。
紛らわしいですが、「純米吟醸」とか、「精米歩合」、とかは、お酒を造っている途中、しぼる前・出来上がる前までのお話ですからね。
それをふまえてそれぞれ一つ一つ見ていきましょう。
①無濾過
濾過をしないお酒、ということです。雨水が川や海に流れ着くまでに、森や大地に染み込んで徐々に綺麗になっていく、という話は聞いたことありませんか?
雨水の例えほどそこまで壮大な話でなくても、水道水を浄水器を通してから使ったり、コーヒーフィルターを使ってコーヒーを淹れる方もいるのではないでしょうか?
実は、日本酒で行っている濾過とは原理としてはそれらと同じです。お酒を搾った後は、まだ細かい米粒や麹、酵母などの固形物が残っています。
濾過をすることで、それらを取り除き、より澄んだお酒になります。
同時に、お酒に含まれている香り・味・色の成分も一緒に濾過されてます。
商品名の中に、「無濾過」の表記がない場合は、基本的には濾過されていると考えてよいでしょう。
②生
こちらは火入れのお話です。日本酒は麹・酵母・その他の酵素などの微生物の働きによる発酵の成果です。
たとえ濾過をしてもそれらが完全に除去されるわけではありません。中には、お酒そのものを傷ませてしまう菌もあります。
そこで、それらの菌を、加熱して活動を停止させます。それによって、味の変化や腐敗・痛むのを防ぐのです。「加熱」と言っても、ぐつぐつと酒そのものを煮立たせるわけではありません。
お酒が通るパイプを温めたり、瓶に詰めた状態のお酒を間接的に温める方法がとられることが一般的です。使われるお湯の温度は60−65℃くらいです。
この方法は低温加熱殺菌方法と呼ばれ、牛乳で行われる方法と同じです!
なお、火入れは通常2回行われます。
1回目は日本酒ができてすぐのタイミング、2回目は日本酒を出荷するときのタイミングです。
何回火入れをするか、どのタイミングでするかによって、「生酒(なまざけ)」「生詰酒(なまづめしゅ)」「生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)」と名称が変わります。
こちらは、添付の表をご覧ください!
ちょっとした覚え方、見分け方もおつけします。
日本酒は、完成してすぐに出荷されているわけではありません。
製造後、大きなタンクにそのままor瓶につめた状態でストックしてあることがほとんどです。
その間に当初想定していた味から変わってしまっては元も子もありませんよね。裏を返せば、生酒は味の変化が伴いやすいということ、
生酒の保管の基本は要冷蔵です。食品の生鮮食品と同じく、お酒も生モノと考えれば、ピンときますね。
③原酒
日本酒は、できてばかりの状態だとかなり高いアルコール度数になり、ときには20°前後近くになります。
アルコール度数は飲んだ時の味わい・刺激感として直接的に飲んだ時の印象に関わります。
そのため、狙った味わいに整えるため、水を加えてアルコール度数を調整するのです。この作業のことを加水(かすい)、入れるお水のことを割水(わりみず)といいます。
原酒はこの加水をしていない、そのままのお酒ということです。決して、水を入れてお酒の量をかさ増しをしているわけではなく、あくまでもアルコール度数や飲み口の調整のためですよ。
また、アルコール度数が高いことを使って、ロックで飲んだり、セルフで加水をしてみたりと、飲み方のバリエーションができるのも魅力です。
まとめ
たくさん深掘りをしてきましたが、まとめると
という3つが組み合わさったのが、無濾過生原酒という表記です。一言でまとめてしまえば、より「できたままの状態に近い」日本酒ということですね。
それを例えて、すっぴんのお酒、と表す人もいます。それぞれの作業工程のあるなしによる意味わけのため、単品ずつでも、部分的に組み合わせても意味は成立します。
そのため、同じ銘柄の同じ“純米酒“でも、濾過、火入れ、加水のありなしによって、
無濾過生原酒
無濾過酒
生酒
原酒
無濾過原酒
無濾過生酒
生原酒
(表記なし)
のように、様々なパターンがありえます。
これがさらに「使うお米の種類が変わったら?」「精米歩合(お米を削った割合)が変わったら?」などを考え出すと、その組み合わせはかなりの数に。
だからこそ、味を比べて飲むことに意味があり、楽しさが生まれます。ちなみに、無濾過生原酒とセットにでてくることもある、「直汲み」という言葉。
これは、お酒を搾った際に、直接瓶に詰め(汲んで)、そのまま出荷されるお酒のことです。
結果として、濾過も、火入れも、割水もするタイミングがないことが多いため、無濾過生原酒と同じ意味合いになることがほとんどですよ。
それでは今回はここまで!
参考:ゆるゆる日本酒教室【スパークリング日本酒のあれこれ】
日本酒コラム『ゆるゆる日本酒教室』
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今回コラムを書いてくれた社会福祉士と日本酒学講師の資格をあわせもつ西嶋大悟さんのnoteはここから読めます。日本酒以外の話題も含め、優しくてわかりやすい文章が特徴です。
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執筆:西嶋大悟(note)
ディレクション:関谷サイコ(X/note)
企画:卯月りん(X/Instagram/note)
編集:makio(X/note)
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