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#18.プラナタリネスの空は広い。

宇宙列車に乗って、アンドロメダ銀河に行こう。
永いながい旅路の途中、
迷ってしまわぬように、切符を無くさぬように。

窓にうつる景色を追って、ガラスの草原を走り抜けよう。
雲の海に潜って、虹の橋を渡り、星の川を通る。


オーロラのトンネルを抜けたらそこは、銀河だった。
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宇宙列車アンドロメダ銀河行き特急、通称はこぶねは、レトロな装いの寝台特急である。
一等級なんて高級室には泊まれない庶民なので、三等級に担当と仲良く2人で相部屋だ。

二段ベッドの上は少し勇気がいるのと窓の外が見えないので快く同室者に譲った。
列車には寝台のほかに食堂やバー、談話室のようなところもあって、基本的に自由に使える。
永い旅路だ、他の旅行客と交友をはかったり狭い室内で閉じこもって構想を練ったり、色々と楽しみ方がある。
宇宙列車アンドロメダ銀河行き特急、通称はこぶねは、その名の通りアンドロメダ銀河へと一直線の宇宙の旅だ。
ロケットやゲートと違い、時間もかかるし場合によっては高くつくこともあるのだれど、なんてったって取材旅行、経費で落ちるのだ。スイートで豪遊するわけでもなし、それ以外はカツカツの節約旅行なので、せっかくだから寝台列車を選ばせてもらった。
なるべくなら出来ない経験がしたいのだ。

終点のアンドロメダ銀河は、大きな大きな星の海と大小様々な惑星たちをひとかたまりごと、アンドロメダ銀河と呼ぶ。

こちらの星の住人からすると、もっともポピュラーな観光地だ。
今回の目的地は、アンドロメダ銀河の南に位置する、プラナタリネスにあるメロウ海岸だ。

メロウ海岸は、銀色の砂浜とパールラベンダーの穏やかな波が揺蕩う、なんともメタリックしい海岸だ。
昼間は眩しいからサングラスが必須だが、夜になると砂浜や波の色が月明かりを跳ね返して、キラキラと輝き幻想的な風景を映し出す。

常時荒れることを知らない海原は、ただ穏やかに、波間を揺らしている。

美しく幻想的なこの海に、生き物はいない。
パールラベンダーの海の水は、酸性が強すぎて生きて行くには些か厳しすぎる環境なのだ。
我々人間も、足はおろか船でさえ触れることはできないという。
ただただ、美しい海を遠目に眺めることしかできないのだが、そのあまりの美しさに、必要以上に近づく気すら起きないと言われている。

近年、メロウ海岸の海域調査のため、特殊ポッドの開発が進んできたそうで、自分が生きている間にはいつか入れるかもしれないそうだ。

プラナタリネスの空は広い。上を向いて歩いていると、吸い込まれそうになる。
実際、頭上に気を取られるうちに、海に入り込んでしまいそのまま帰って来れなくなった人たちがたくさんいるので笑い事ではないのだが、あまりに広い空に思わず上を見上げながら歩きたくなるのである。

観光地化され、いくつかの商業施設や宿泊施設があるものの、プラナタリネスの実態はそのほとんどが解明されていない。

いくつかの研究では、プラナタリネスは死んだ星とも呼ばれている。
生命体が存在せず、死の海がただ凪いでいるだけだから、終焉を待つ終わりの星だと言うのだ。

一方、プラナタリネスは生まれたばかりの星だと言う研究者も多い。
進化の過程、というよりは前提の段階で、これからこの星に適する生命体、あるいは生命体に適する星になっていくという見立てがある。

自分にはそのどちらかである断定は出来ないし、現に観光地として栄えているのなら、それはそれでいいのじゃないかな、とも思う。
ただ自分が遊びに行きたいだけと言われると何も返せないのではあるのだけれど。

プラナタリネスに到着したらすぐにホテルにチェックインだ。荷物を預けて周囲の散策をする予定である。
早く終着駅までつかないかなというワクワク感と、旅路をまだ楽しんでいたい感情に揺られながら布団を被った。

窓の外にはシャボン玉の流れ星が、煌めきながら通り過ぎていった。

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